日本製鉄によるUSスチール買収について
今日もブルームバーグで記事になってます。
この話が出たのは随分前のことだと思いますが、最初聞いたときから、これは難しいなと思いました。
理由は簡単、感情的な話になるからです。”日本”製鉄が、”US”スチールを買収するから。皮肉なことに国名が両社についている。日本がUSを買収することになるわけで、これ米国民としては面白くない。
当事者では合意ができているんですが、政治的に「まった」がかかっている。
こういう場合、アメリカって阻止すると思うんですよね、どういう手段を使ってでも。民間の取引だから口は出しません、などという国柄ではない。
逆にアメリカが日本の企業を買収するのは彼ら的にOKだと思います。これに日本が反対などすれば、不公正だと言うでしょうね、そういう国です。
そんなわけでこの買収は最終的にうまくいかないと私は見ているので、日本製鉄としては、USスチールには潰れてもらって、その後タダ同然で施設などを手に入れるという戦略に切り替えた方がいいのではないかと思います。
アメリカの製鉄会社というのはなかなか話題豊富で、昔、ベツレヘムスチールというダメダメ企業があり(大昔は儲かっていました)、潰れてしまって跡地はカジノになったりしてますね。一部はミッタル(インド人が社長の世界最大のメーカー)になっていると思います。
これは推測ですが、ミッタルが世界中の製鉄会社を買収しまくって世界一になったので、このやり方に日本製鉄が影響を受けたのかもしれません。
アメリカにはベツレヘムスチールのような企業があった一方、ニューコアのような優良企業もあります。ニューコアは昔(1990年代頃)、全米では3位とか4位とかそのくらいの規模だったのですが、今は亡きケン・アイバーソン社長のおかげでぐんぐん業績を伸ばし、今や全米一の企業になっています。ニューコアは素晴らしい会社です。この本は経営者必読です。題名は「真実が人を動かす」となってますけど、元々は「Plain Talk」なのでちょっと違う感じ。
ちなみに、ニューコアは日本の大和工業(上場企業)と合弁で会社を作っています。Nucor-Yamato Steel Company という会社で、大和工業が49%出資しています。800人ぐらいの規模なので、なかなかです。大和工業は海外展開が上手ですね。姫路の会社ですが、8割ぐらいは海外で稼いでいます。
話を日本製鉄に戻しますと、仮にこの買収が成立したとしても、火種が残り続けるような気もするので、戦略転換した方がいいのではないかと思います。具体的には買収するのではなく、取引先として(こっそり)果実だけを得る方が賢いのではないでしょうか?