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20. 高槻市の学童指導員の地位の低さ

これまで、高槻市の公立学童の「国の基準が大幅に守られていない現状」について、

「子ども達が住む地域によって、健全な生活が送れるか送れないか」が決まる、

そして、
「高槻市に住む子どもたちが健全に成長するための生活の場は、住んでいる場所によって格差が出る」ことを、高槻市が認めている

という、

子どもにとって、なんとも不公平な現実を、調査データ現場の生の声を元に紹介してきました。


この記事では、今度は、「学童の指導員の待遇」についてお話します。


Vol. 17  高槻市の公立学童「現場の苦悩」でお話したように、現場の指導員たちは苦悩しています。

いくら現場の指導員に良心があったとしても、高槻市の公立学童のような劣悪な環境で、個人の出来ることは限られているからです。



そして、学童を増やそうとしたところで「新しい学童の指導員のなり手がいない」という問題は、高槻市の慢性的な問題です。



毎月、高槻市が発行する冊子に「学童指導員の募集」が掲載されていますが、十分な応募がありません。

ただでさえ人不足の学童。環境も設備も人員も十分に頂けない学童。


なぜ、所得税納税の貢献度の高い働く親の子ども達は、これほどまでに行政から存在を無視されなければいけないのか、筆者は理解しかねます。



さて、この「指導員の待遇問題」については、令和6年3月25日の「高槻市議会」で、出町ゆかり議員が、熱心に、丁寧に、市議会で質問をしてくださっています。

出町ゆかり議員 1:

 子どもたちが放課後や休みの日に生活の場として、安全に安心して過ごせる学童保育の充実は、働く保護者の切実な願いです。コロナ禍でも学童保育は働く保護者を支えるため、開所し続けました。学童保育は社会的に必要不可欠な施設であり、その果たしている社会的役割は重要です。

 しかし、指導員の処遇は大変低いです。
職員の雇用形態や賃金水準をどのように定めるかは、運営主体である各市町村の判断となるので、自治体で大きな違いが出ています。



 そこで、数点お聞きします。



 1点目です。

 高槻市の学童保育指導員は、
〇 月額制で働いている人94人
〇 時間額制は191人、

〇学童保育室は62か所、利用している児童は2,804人です。

そして、全国でも同じ状況ですが、高槻市でも学童保育指導員の数は足りていません。


 現在、高槻市の学童保育指導員は月額制の職員で、目安として122人必要なところ94人で、28人不足をしています。

 この原因として、責任に比べて給与の安さ不安定な雇用関係があると思いますが、市の考えをお聞きします。



 指導員の雇用状況は、月額制では全員が会計年度任用職員であり、女性です。雇用期間は5年で更新することになっています。

 給与は月額制で、
〇 1年目が16万6,191円、
〇 5年目で17万322円、


 5年間で4,131円しか上がりません。
 しかも、5年目以降はずっと同じ金額です。

 時間額制に至っては、5年間で20円しか上がりません。



 高槻市の学童保育指導員で、16年以上継続して勤めている人は43人います。給料は上がらず、退職金もありません

 仕事にやりがいを感じて、1か月17万円という給与で子どもの放課後の生活を保障しているのです。



 学童保育も女性だけでなく、男性の職員も必要だと思いますが、これではモチベーションも上がらないし、生活の安定も図れません。市の考えをお聞きします。


 

https://www.kensakusystem.jp/takatsuki/cgi-bin3/ResultFrame.exe

※上記URLで議員名を検索すると、令和6年3月25日の議事録を閲覧できます。


子ども未来部長 答弁1:

学童保育指導員に関する数点のご質問にご答弁申し上げます。

 市立学童保育室の運営に当たっては、その業務内容などを踏まえ、実施手法等を決定しており、現在、条例に基づき会計年度任用職員である学童保育指導員を任用し、配置しているところでございます。

https://www.kensakusystem.jp/takatsuki/cgi-bin3/ResultFrame.exe

※上記URLで議員名を検索すると、令和6年3月25日の議事録を閲覧できます。

これまで、質問されてきた、どんな議員さんに対しても高槻市の答弁は、一貫しています。
何の調査も、根拠も示さずに「現在のままで問題ない」と言い切る


調査データを示しながら、問題点を指摘する出町議員に対して、なんてお粗末な答弁なのでしょうか?


これは、女性議員に対して「女性だから」という蔑視する心の態度の表れなのでしょうか?
(こんな憶測さえ、したくなってしまう・・・けれども、これは、単なる個人的な憶測でしかありません。)


因みに、子どもと関わり、成長を見守ることにやりがいを感じる心ある善良な人材を利用して、その人々がしている仕事の価値を正当に評価せず、少ない報酬(給与)しか払わず、利益を搾取することを「やりがい搾取」といいます。

※「やりがい搾取」は、東京大学大学院教育学研究科教授・社会学者である本田由紀氏が2007年前後に定義した労働搾取構造を意味します。



出町ゆかり議員 2:

 2点目に、学童保育の指導員には、国の3つの処遇改善事業があります。

〇 1つは、放課後児童支援員キャリアアップ処遇改善事業です。
A. 放課後児童支援員に対して、年額13万1,000円、月額約1万円、
B. 勤続年数5年以上の放課後児童支援員には、年額26万3,000円、月額約2万円、
C. 事務所長的立場にあり、専門性の高い研修を受けた勤続年数10年以上の放課後児童支援員には、年額39万4,000円、月額約3万円の加算があります。 
 
〇 2つ目に、2022年に始まった月額9,000円の処遇改善策があります。それ以外にも、放課後児童支援員等処遇改善等事業もあります。
 国会で日本共産党の宮本徹議員は、昨年3月22日の衆議院厚生労働委員会で、学童保育指導員処遇改善を求めました。

 その質問に対して、国はこう答えています。少し長いですが、引用させていただきます。

「まず、この処遇改善に取り組む市町村の具体例をお示ししながら、積極的な検討をまだ実施していない市町村に対してお願いしてきたところでありますけれど、さらにそうした働きかけをしっかりさせていただきたいと思っております。

 なお、補助率でありますが、例えば処遇改善で言えば3分の1となっていますけれど、しかし他方、残った部分、地方負担については地方交付税等での担保等も行っているところでございますので、そうした点も含めてしっかりとこの制度の内容を周知し、より活用していただけるように、そして職員の処遇改善が進むように自治体に促していきたいと考えています」と言っています。

 国も学童保育の在り方の大切さを認めての給付金事業であり、進むようにと言っているわけです。高槻市ではこれらを利用していますか。利用していないのなら、なぜ利用しないのか、お答えください。 

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※上記URLで議員名を検索すると、令和6年3月25日の議事録を閲覧できます。


子ども未来部長 答弁2:

 お尋ねの国の放課後児童健全育成事業に係る3つの処遇改善事業について、放課後児童支援員等処遇改善事業(月額9,000円相当賃金改善)の活用実績はありますが、
 放課後児童支援員等処遇改善等事業及び放課後児童支援員キャリアアップ処遇改善事業につきましては、事業の実施方法に定める国の要件が本市の条件に合致しないため、活用できません。 

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※上記URLで議員名を検索すると、令和6年3月25日の議事録を閲覧できます。


2点目の質問も、出町議員の質問は、とても分かりやすいものです。

国は、学童指導員を補助する予算を作っている。それを高槻市は使っているのか?使わないなら、使わない理由は何なのか?


ちなみに、国が行っている「放課後児童支援キャリア・アップ処遇改善事業」とは、次のようなものです。

※画像を拡大してご覧くださいね☆


高槻市は、「事業の実施方法に定める国の要件が本市の条件に合致しないため、活用できません」と言っています。

そこで、またもや筆者は、高槻市役所に電話で確認してみました。


「国のどんな要件が、高槻市の条件に合致していないのですか?」と。


そこで、出てきたのが、Cの「事務所長的立場というのが、どういった立場なのか国に確認しないと分からない」という答えでした。

「なら、AやBは、どの条件がダメなのですか?」


と、訊いても「事務所長的立場が、どういった立場か分からない」という答えを繰り返すばかり。


筆者のつぶやき:
高槻市で、この制度が使えるのかどうか、国が行っている「放課後児童支援キャリア・アップ処遇改善事業」について理解するために、国に確認もしていない、ってこと!?


これが本当なら、「事業の実施方法に定める国の要件が本市の条件に合致しない」かどうか、調べもせずに、「合致していないから活用できない」と答弁している、ということになります。



出町ゆかり議員 3:

 3点目です。
 私は今回この質問をするに当たって、学童保育指導員の方・保護者の方から話をお伺いしました。時間額制の指導員を除くと、一人で保育をしているところもある、会計年度任用職員という立場なので5年で更新となる、将来にとても不安があるということでした。

 保護者の方は、学童の先生は時間外におやつを買いに行ったりしている、市の対応をきちんとしてほしいということでした。

  学童保育は、子どもたちの放課後を豊かに過ごすことができるように、生活の場を保障しています。そして、夏休みや土曜日などは1日保育が続きます。学童保育指導員の仕事の責任は重いです。

 今、ケア労働者や保育士、学童保育指導員の不足が言われています。どの職種も賃金は一般職種より平均で7万円低いと言われています。高槻市の学童保育指導員不足の実態・労働条件について、市の認識をお聞きします。

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※上記URLで議員名を検索すると、令和6年3月25日の議事録を閲覧できます。


子ども未来部長 答弁3:

 人員不足については全国と同じ状況であると認識していますが、労働条件については人材確保が困難になっている等の状況から、安定した人材確保に資するために、近隣市の賃金水準を勘案し、令和4年に時間額制職員の報酬額の引上げを行うなど、必要に応じて取組を進めているところでございます。 以上でございます。

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※上記URLで議員名を検索すると、令和6年3月25日の議事録を閲覧できます。


 「会計年度任用職員」とは、毎年、評価され、次年度の継続かどうかが決められる身分です。

 学童の先生方とお話をしていると、本当に、市からどう見られているかで「いつ雇用を切られるかもしれない」という不安があることを実感します。

 因みに、私もそういう身分で仕事をしたことがあるので、そういう不安はすごく良く分かります。「いつ職を失ってもおかしくない」という、生活の底辺が支えられていない不安。


 出町議員が訴えているように、学童の指導員は、責任の大きな仕事なのに、それに見合う報酬も身分も与えられていない学童の指導員。

 「子どもが軽んじられてるんだなぁ」とひしひし感じてしまう筆者です。



出町ゆかり議員 4:

 高槻市は子育て支援日本一にと頑張っています。
 しかし、子育て支援に携わる人たちの賃金が低く身分が不安定で、非正規が当たり前ということは、本当の意味での子育て支援を頑張っているとは言えません。 




 答弁で、学童保育の指導員は会計年度任用職員と条例で決まっていると言われました。学童保育の指導員を会計年度任用職員とした理由をお聞きします。 

 5年更新ではなく、安定雇用にしていく必要があると考えますが、市の認識をお聞きします。


 会計年度任用職員でありながら、放課後の子どもの生活を支え、そして安全に過ごさせていく、その責任を担わせているということは、あまりにも大きな負担です。
 例えば、子どもに事故が起きたとき、1人が付添いで行けば、1人で残りの子どもたちを見なくてはいけません。子どもの安全に責任を持てるとお思いですか、お答えください


 1問目で紹介した放課後児童支援等処遇改善等事業の実施自治体は僅か23%、9,000円の処遇改善策の申請自治体は345自治体で、42%です。


 今回、人勧の関係で、会計年度任用職員に対して勤勉手当が出ることになりましたが、まだまだ低い状態です。

 学童保育の仕事は専門職であり、子育て支援にとっては必要な職種です。処遇改善事業は、勤務時間数が少ないということや常勤ではないなど、利用しにくい制度です。国の放課後児童支援員キャリアアップ処遇改善事業を実施していない理由別の自治体調査では、事業の利用要件が厳しい、予算確保が難しいなどが挙げられています。 
 しかし、学童保育指導員の処遇などの現実を見れば、市はこれらの学童保育指導員の処遇改善事業、全てを実施すべきだと思います。
 答弁を求めます。 以上、2問目です。

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子ども未来部部長 答弁4:

 児童福祉法に規定する放課後児童健全育成事業である学童保育事業は、小学校に就学している児童であって、その保護者が労働等により昼間家庭にいない者に、授業の終了後に適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図る事業である点などを踏まえ、会計年度任用職員を任用し、配置しているところでございます。

 なお、本事業に限らず、業務の実施に当たっては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を上げるという地方自治法の趣旨に基づき、「みらいのための経営革新」に向けた改革方針や市を取り巻く状況等を踏まえ、その時々において精査した上で、事業の実施方法などを決定していく必要がございます。


 また、国の処遇改善事業については、事業の実施方法について、国の定める要件が本市の状況に合致しないことから、現時点において全ての活用は難しいと考えておりますが、本事業に限らず国の補助制度につきましては、今後も本市の状況や方向性等を照らし合わせながら、必要に応じて適宜活用などの対応を行ってまいります。

 以上でございます。

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出町ゆかり議員 5:

今言われた最少の経費で最大の効果を上げる、こういうことが子育て支援に対して本当に合ってるのかどうか、大きな疑問を持ちます。



 意見、要望です。

 放課後児童支援員等処遇改善等事業等の実施はまだまだ少ないですが、それでも9,000円の処遇改善策は42%の自治体が実施をしています。ぜひ高槻市でも3つの支援策を研究し、実施に向けて取り組んでいくよう要望します。


 福祉職場も人手不足で大変だという声をよく聴きます。
 しかし、その福祉職場でも処遇改善手当は実施をしているし、5年で更新なんてあり得ません。
 退職金もあります。


 5年目以上給料が上がらない会計年度任用職員ではなく、少なくとも2人以上は常勤職員を置くべきだし、短時間の公務員という位置づけをするべき
だということを申し上げて、1項目めの質問は終わります。

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※上記URLで議員名を検索すると、令和6年3月25日の議事録を閲覧できます。


筆者のつぶやき:

「今言われた最少の経費で最大の効果を上げる、こういうことが子育て支援に対して本当に合ってるのかどうか、大きな疑問を持ちます。」


「もう、コレに尽きる! よく言ってくれた」って感じです。


 出町議員「市民の本音を言ってくれてる~」と嬉しくなる半面、市役所の答弁は、「子ども達も学童の指導員も、人間としてみられていないんだわ」と愕然とせざるを得ませんでした。


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