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19. 高槻市 今後の学童ニーズ推定人数

さて、前回の記事でお伝えした通り、高槻市が令和7年に新しく募集する民間学童は5校だけです。(民家・アパートを改造して学童として使いやすくするため、リノベーションや修繕工事ののための補助金出すから、新設してくれる民間学童事業者さん手挙げて~、って募集しているのが5校)


現在、2クラスを開設している民間学童は1施設だけで、ほとんどの施設の店員が40名、もしくは50名です。

令和6年 高槻市の民間学童:


高槻市が募集している地域で学童が5施設、増えたとしても、「5×40=200人程度」の受け皿増加にしか繋がりません。


そんな「のんびりペースの計画」で、本当に大丈夫なんでしょうか???

高槻市政策で子ども達の放課後は守れるのか?

「どういう根拠を元に、現状の政策のみで学童問題が解決できる、と言っているのか?」

知りたかったので、市役所の職員の方にお伺いしてみました。


市役所の職員さんが仰るには「高槻市で、国が決めている「児童一人当たり1.65平方メートルの基準」が守れていないことは問題で、公立学童の面積基準を「児童一人当たり1.65平方メートルの基準」が守れるようにすることは課題だ」とは認識してはいるらしい・・・。

ということでしたので、質問してみました。


筆者:
「現在の状態から、国の基準が守れる状態になるために、どのような道のりを辿ればいいと考えていますか?」

市役所職員:
「ですから、民間学童が増えることで待機児童が減り、云云かんぬん・・・」
(最後の方は何を言っているか理解できず、、、悪しからず。

とりあえず分かったのは、「民間学童が増えると、公立学童に通う子ども達が民間学童に流れて、公立学童の児童数が減り、公立学童の児童一人当たりの専有面積が増える」というヴィジョンをお持ちのようでした。


筆者:
「民間学童の数が、あと何個増えれば、高槻市の公立学童の環境は国の基準を守った市の条例が出せるようになると考えますか?また、その数の民間学童を新設するための市の計画は、どのようなものですか?」

市役所職員:
「民間学童が、どれくらいの数必要か?ということは「子ども未来課」ではなく、審議会の方で出される方針ですので、このお電話ではお答えしかねます」


筆者:
「その審議会は、市の職員で構成されているんですか?それとも、市会議員さんで構成されているんですか?どんなメンバーなんでしょうか?」

市役所職員:
「有識者や一般市民の方などもメンバーになっています」

筆者:
「その審議会は、年間何回開かれ、方針が決められるのですか?」

市役所職員:
「1、2回です」


※ここで、そんな回数で何が決定できるのか、と思い、「1、2回!?」と、驚きの声をあげてしまった私に対して、「2、3回」と言い直した市の職員さん。(あんまり詳しく把握していないんでしょうね(笑))

電話の後に市役所のHPで調べてみると、高槻市の審議会の中に「子ども子育て会議」というものがあり、令和4年度5年度と、9月、2月の2回開催されていました。


令和6年度は7月に1回開催されていましたので、議事録を読んでみました。


委員の意見:

今年から高槻市PTA協議会会長になり、学童保育についてのお話を聞くことがあります。

学童保育の量を見ると、今までなかった4年生以降の数がこの数年間で随分で増えてきたという印象です。市内でも民間の学童保育が増えてきたなという印象です。

活発に動きたい、もしくは勉強したいと思っている子どもたちが、学校の中の学童保育から民間に行くのかなあと思います。

今後、2号認定の子どもが増えていくと、新1年生のニーズも多くなるので、6年生で本当にこれだけなのかなと感じます。

最近のニュースで遊んでいて川でおぼれた話などを聞くと、どなたかに見ていただきたいというニーズがもう少しあるのかなと思いました。

https://www.city.takatsuki.osaka.jp/site/shingikai/123107.html

委員会会長:

民間学童等について何かありますか。

https://www.city.takatsuki.osaka.jp/site/shingikai/123107.html

事務局:

先ほどの説明のとおり、放課後児童健全育成事業についても、今回の量の見込みの案としては過去の実績による傾向を踏まえた補正をさせていただきたいと考えています。資料3の5ページ、6ページのアンケート調査結果を踏まえた量の見込みを見ると、令和7年の見込み値は令和6年の実績と相当の開きがあります

。この令和6年度の数値は委員仰せの通り、令和4年に「学童保育のあり方等に関する基本方針」を示して以降、民間学童保育室を活用した結果であり、令和3年の実績と比較して、約860人増えたという状況です。

なお、当初は公立施設に入室していたけれども、退出されて、民間施設の方に行くというケースも確認をしていますので、民間の学童保育室も認知されてきていて、利用したいというご意向が増えてきているのかなと感じています。

同じように高学年児童の需要も益々出てくるかと考え、今後も民間学童保育室の活用を考えておりますが、例えば小学4年生の利用実績を見ていただくと、令和4年と令和6年の差は約100人となっており、徐々にニーズは出てきているものの、実際は、小学校3年生でも、習い事が増えたので途中で公立の学童保育室を退室する方もいらっしゃいます。

もうしばらく、基本方針に沿った民間の学童保育室を増やしていく取組を継続する中で、今後の動向を見ていきたいと考えています。

https://www.city.takatsuki.osaka.jp/site/shingikai/123107.html


「なぜ、小学校3年生の途中で公立学童を退室するのか?」
その理由について、なんと高槻市は「小学校3年生の間に習い事が増えたから」だと考えているのです!


実際には、小学校4年生から学童がなくなる、公立学童への行き渋りが激しいなどの理由から、学童以外の選択肢を模索せざるを得なくなり、いくら子どもが「学童より家で一人の方が良い」と言ったとしても「家で一人ぼっちで過ごさせるのは不安」だから、「週5日、習い事で埋める」という苦肉の策を取ることになるか、お母さんが仕事を辞める、働き方を変える、のいずれかの選択を迫られています。

余談ですが、学童代わりに塾に行かせることになり(違う習い事を週に何回も行くよりも、塾に週〇日の方が、コスパが良かったりして、そうしているうちに子どもが、中学受験に興味を持つケースも(笑))


また、「子ども子育て会議」の委員さんの発言を読むと分かるとおり、この方は学童を必要としている家庭層の方ではありません。


なぜ、学童を利用している家庭、或いは、学童を必要としながら利用できない憂き目に遭っている当事者抜きの話し合いで「公立学童の環境改善や、拡充は必要ない」という結論が一方的に出され、それが市の公式見解となるのでしょうか?


そもそも、この会議の中で、何も建設的な決断がなされていないので、「会議を開くことが目的の会議」となってない? って思っちゃう筆者でした。



学童ニーズと受け皿の差の大きさ!

市役所が、「今後、どのくらいの学童の枠が必要なのか、現実に即したヴィジョンを持たない」そもそも、そのヴィジョンを持つための調査も真剣に行わないまま「なんとなく民間学童が増えたら公立学童の運営も楽になるんじゃね?」という姿勢であると知り、怒りに震え、絶望的な気持ちに陥った筆者です。


ということで、筆者なりに算出してみました。  ⇓⇓⇓⇓⇓


高槻市の市政概要の「子ども」資料によると、保育所や認定こども園に通っていた保育園児の人数は過去の3年間で下記の通りでした。(令和6年度の数値は、もう少し後に出されるらしく、データがありませんでした。


高槻市の保育所などの利用児童数

このうちで、3歳、4歳、5歳の、3年間の合計人数は次の通りでした。

令和3年 3781人
令和4年 3798人
令和5年 3914人


保育所を必要とする子ども達は年々増えていて、今や、4000人に達する勢いなわけです。

これに対して、令和6年の8月1日に、公立学童に通っていた子どもの数が3021人です。



ということは、保育園のときに保育園に通っていた1年~3年生の子ども達のうち、1000人ほどが公立学童に入れなくなる計算になります。



高槻市の公立学童は、1年生が優先なので、1年生は「希望すれば、ほぼ入れる」と言われています

そして、1年生の希望が多い年は、親が長時間労働をしている子どもでも、2、3年生は公立学童にあぶれる事例が後を絶ちません

(「看護師さん、教師などの職についている親御さんのお子さんが受け入れてもらえなかった」という悲痛な声を毎年、耳にします。



また、まだ議事録が上がっていませんが、令和6年9月議会の五十嵐秀城議員の一般質問によると、小学校4~6年生のうちの23.5%が学童を希望しているそうです。

令和6年の5月1日時点で、高槻市の小学校4~6年生の人数は、8450人なので、1985人以上が学童を必要としている、ということになります。

因みに、竹中健議員の令和3年の一般質問によると、令和2年度に出された小4~6年生のニーズ見込みは、1296人と試算していたそうですから、4年間で、700人ほどニーズが膨れ上がっているわけですね。


結局のところ、小学生全体で、5900人以上のニーズがある、ということです。


もし、高槻市に現在ある公立学童が、法律を遵守した学童の運用をした場合、どれだけの枠が確保できるでしょうか?

それは2575人です。

そして、現在ある民間学童の合計定員は1482人。

合わせると4037人。

5900人のニーズに対して、現在の施設で受け入れられるのは4037人。

この記事の冒頭でお伝えしたように、民間学童の定員は、ほとんどが40名。

働く親を持つ小学生の子ども達が、何年生であっても、安全な居場所があり、親が安心して働ける、子どもが不安やストレスを溜めずに過ごせるためには、46施設以上の学童の新設が必要になる、ということです。


高槻市の職員は、「民間学童が増えれば、公立学童の環境が改善され、国の基準を守った運営ができるようになる」と言いますが、この現状を直視する限り、そんな日は永遠に来ないことが分かります。

子ども達が、「子ども・子育て支援法」という法律で定められているような「児童の身体的・精神的及び社会的な発達のために、必要な水準を確保する」放課後の生活の場を高槻市が保障するには、民間学童を増やすだけでなく、公立学童の拡充が必須だということが、ハッキリ分かります。


年々、悪化していく公立学童の環境

前の記事で、学童の狭さワースト10位以内の学童では、子ども一人の専有面積が、令和5年度より令和6年度の方が狭くなっている、というお話をしました。

令和5年度 狭い学童は?:

1位 阿武野A 学童 子ども一人あたり1.00平方メートル
2位 安岡寺  学童 
子ども一人あたり1.02平方メートル
2位 奥坂A   学童 
子ども一人あたり1.02平方メートル
4位 奥坂B  学童 
子ども一人あたり1.04平方メートル
5位 寿栄   学童 
子ども一人あたり1.07平方メートル

5位 北大冠  学童 子ども一人あたり1.07平方メートル
5位 阿武野B  学童 子ども一人あたり1.07平方メートル
8位 日吉台B  学童 子ども一人あたり1.08平方メートル
8位 北清水   学童 
子ども一人あたり1.08平方メートル
10位 北大冠A 学童 
子ども一人あたり1.09平方メートル


令和6年度 狭い学童は?:

1位 阿武野A 学童 子ども一人あたり1.00平方メートル
1位 奥坂A   学童 子ども一人あたり1.00平方メートル
1位 奥坂B   学童 子ども一人あたり1.00平方メートル
4位 安岡寺  学童 子ども一人あたり1.02平方メートル
5位 阿武野B  学童 
子ども一人あたり1.03平方メートル

6位 磐手A   学童 子ども一人あたり1.05平方メートル
7位 芝生    学童 
子ども一人あたり1.03平方メートル
8位 日吉台A  学童 
子ども一人あたり1.07平方メートル
9位 日吉台B  学童 
子ども一人あたり1.07平方メートル
10位 北清水  学童 
子ども一人あたり1.07平方メートル


高槻市最低基準である「子ども一人1㎡」の学童は1施設から3施設へ増え、10番目に狭い学童の面積は、1.09㎡から1.07㎡に悪化しています。


この悪化傾向は、実は、ワースト10位以内の学童だけでなく、高槻市の公立学童全体の傾向となっているんです。


令和5年度のデータ: 総学童数62のうち

国の面積基準を守っていない学童数:     39 施設    
国の1クラスの児童数を守っていない学童数: 45 施設

逆に、両方とも国の基準を守れている学童数は、13施設。


令和6年度のデータ: 総学童数60のうち

国の面積基準を守っていない学童数:      43 施設    
国の1クラスの児童数を守っていない学童数:  52 施設

逆に、両方とも国の基準を守れている学童数は、たったの8施設。



市役所は、「民間学童の数を増やすことで、公立学童の環境も改善されると考えている」と言っていますが、国の基準を守れていない公立学童が、去年よりも増えているだけでなく、高槻市の最低基準の環境に追いやられている公立学童も増えており、なおかつ、それらの学童環境が改善される見込みは、いまのところありません。


放課後、ストレスを溜め込めずに健全に過ごせる環境を求めて「学童に行きたくない」と声をあげる子ども達の状況が、これだけ長い間、放置され、今後も市役所が動く気がない、と確信できてしまう現状が、とても辛く感じました。



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