17. 高槻市の公立学童「現場の苦悩」
夏休みに入る前、7月に筆者の子どもが通う公立学童の「保護者懇談会」がありました。
筆者の子どもが通う小学校には、2室の学童があり、約120名の子どもが在籍。うち、保護者の参加者は20名程度でした。子ども達が帰宅した後の時間帯の保護者懇談会。
当然のことながら、家では、夕食、お風呂、就寝の支度、明日の準備、と大忙しの時間帯。
誰か、親族が協力してくれる状況でなければ、参加できないわけです。
学童の「保護者懇談会」とは?
「懇談」を辞書で引くと、『打ち解けて話し合うコト』とあります。
ですから、学童の指導員の先生からお話はあるにしても、保護者からの意見・要望・質問なども聞かれる、双方向のコミュニケーションがある形式を予想していた筆者。
しかし、実際には、学童指導員の先生から一方的に「現在の学童の状況を説明される」という形式だったのでした。
『コミュニケーションは必要なし』という姿勢。これが、高槻市役所の姿勢だよね・・・、と改めて思ってしまった筆者・・・。
普通、「お給料払っている側(お客様とか、上司とか)の意見って聞かない?」と思うのですが、税金という市役所職員のお給料って、天から降ってくるイメージなんでしょうか???
それは、さておき、指導員の先生の話を聞いていると、なぜ「子ども達が学童への行き渋りをするのか?」が分かってきました。
『具体的に、学童で、どんなことが起こっているのか?』現場の話を聞くことで、理解できることは沢山ありましたので、抜粋してご紹介します。
国の基準を守らない高槻市学童の問題点
「学童での子どもたちの生活を、どのように創り上げているか?」
学童指導員の先生のお話を聞いていると、その大変さのすべてが、『学童の狭さ』と『子どもの人数の多さ』から来ていることが分かりました。
因みに、このブログでは何度も繰り返していることではありますが、今一度、学童の状況をおさらいします。
60平方メートルの空間に、子どもが約60人(全員・皆勤賞というわけではないので常に60人満杯ではないが、平均的に50人以上の児童が出席しています)と大人が約3人。
そして、子ども達は小学1年生~小学3年生までが同じ空間で過ごす「異年齢保育」です。
指導員の先生たちの思いを聞きました
指導員の数が足りないから「人間関係トラブル」をよく見れない
保護者懇談会での指導員の先生の話では、学童で子ども達同士の人間関係がうまく行かない場合に、
「いざこざなっている子ども達に話を聞きに行くけれども、どうしても手が足りないので、その話が解決しない間に別の場所で起こった子ども同士のトラブルを見に行かなければならなくなる。こうして、トラブルが起こっても、問題が解決するまで見てあげることができない」
とのこと。
筆者のつぶやき:
これは、子ども達からも「先生を呼びたいときに、先生の手が空いていないから、先生、と呼ぶことができない。もっと先生の数が増えて欲しい」と聞いていたので、一致した情報だな、と感じました。
また、指導員としてはトラブルが起こったときもですが、何もトラブルがなかったとしても「一人ひとりの子どもが大人に聴いてもらいたい話について、ゆっくり話を聞いてあげたいけれども、ゆっくり聴いてあげることができない」という苦悩もお伺いしました。
筆者のつぶやき:
これは、「なるほど」と思いました。
何故かというと、学童友だちが筆者の子どもと一緒に遊ぶとき、筆者としては「子ども同士で遊びたいハズ」という理解なのですが、「むしろ、筆者と関わろうとしてくる」と感じることが多いからです。
これって、恐らく、「大人に話を聞いてもらいたい」んだろうなぁ、と。家でも親が忙しくて話を聞いてもらえなかったり、そもそも、親に会える時間が少ない場合、本来なら、日常的に関わっている大人(学校の先生や学童の指導員)が話の聞き役になってほしいところですが。
そういったことが十分ではない場合、話を聞いてくれそうな大人に「いろいろ、聞いてもらいたいことがある」のではないか?と。
ルールが多くなり、指導員が厳しい声掛けになる
狭い部屋で、多人数の子どもがひしめき合っているので(出席児童が多いときには、机に4人の子どもが並ぶなど)、子ども同士がぶつかったり、机などに足をぶつけたり、といったことがある。
なので、子ども達が怪我をしないように監視し、移動のときは絶対に「歩くように」と絶えず注意することが多い。
また、子どもたちの声がうるさくて電話の音が聞こえないので、子ども達には伸び伸び過ごしてほしいけれども、どうしても「静かに」過ごしてもらわなければならなくなっている。
好きな遊びができない
1クラスの人数が多いので、「遊びたいおもちゃがあっても、自分の順番が回ってこない」ため、ズルをして、そのおもちゃで遊ぶ子どもなどもいる。
そういったときは「ルールの確認」などをしている。
1年生が多いクラスは「遊び時間」が少なくなる
異年齢保育とはいえ、その学童の中で、どのくらいの割合で1年生がいるのか、というのは、クラスによって違います。
当たり前のことですが、1年生の割合が多いと、学童のスケジュールをこなすのに、もたもたしてしまいます。全児童がやるべきことが終わってから「遊びの時間」となるので、結果的に「学童での遊び時間」が少なくなる、とのこと。
筆者の子どもが通うクラスでは、半数以上が1年生で、指導員の手が回らず「2年生、3年生が、1年生の面倒をみて、よく頑張ってくれている」というお話もありました。
その中で、「1年生が自分の言う事を聞いてくれない」という苦情を指導員に訴える2年生、3年生の児童がいる、とのこと。
筆者のつぶやき:
子ども達が緊張感をもってルールを守らなければ子どもたちの安全確保ができない環境の中で、2年生、3年生は、指導員の代わりになろうと、1年生に注意する。
けれども、小学校2年生、3年生が、どんなに指導員の見よう見真似で頑張っても、指導員と同じだけの人間的な包容力や、適切な言い方、誘導の仕方ができるわけではありません。
誰に言っても解決できない「行き場のないモヤモヤ」、自分でどうにかしようとしても「どうにもならないモヤモヤ」を子どもも指導員も感じながら、なんとか生活しようとしているんだな、と感じました。
学童指導員の苦悩
指導員の先生方は、教員免許や保育資格などの資格を持たれている先生と、持たれていない補助員の先生と両方いらっしゃいますが、懇談会にいらっしゃった指導員の先生方は、資格持ちの方のみ。
学童の指導員になる前には、実際に小学校で教鞭をとったり、保育所で仕事をしていたりした経験のある方もいらっしゃいます。
なので、「どのくらいの人数の集団の子どもたちをみると、どうなるか?」ご経験があるんですね。
そこで、「保護者懇談会」の最後の方で、次のようなお話がありました。
少ない人数の集団であれば、子ども達は、自分を出すことができる。
自分を発揮できやすい。
でも、この学童では人数が多いため「自分を出すとトラブルになる」。だから、それぞれの子どもたちのいい面を出しにくい。
そういう中でも、子ども達にとって学童が「行きたい場所」になるように、
子ども達にとって「安心・安全で、楽しく充実した時間を過ごせる場所」になるように、と思っています。
子ども目線から見た公立学童:
こんな状況について、筆者の子どもの言葉では、次のように表現されました。
「○○小学校の学童は、子どもはロボットで、先生はロボットを動かす人」
言わんとしたいことは
「自分を出せない。押し殺さなければならない」
「先生の注意やルールを守るだけの存在でいなければならない」
「どうすべきか、決めるのは先生」
そういうことが、この一言に表れていると思いました。
筆者のつぶやき:
子どもに「学童に行きたくない」と言われつづけ、どう改善したら良いのか模索してきた一年以上の年月。
周りの子どもたちからも同じような声を多く聞き、お母さんたちの悩みも耳にしてきました。
けれども、この最後に紹介した指導員の先生の言葉、「自分らしくいようとするとトラブルになるから、自分を押さえつけて過ごさなければならない」。
これが、よく新聞などで見かける「公立学童の先生方が自分の仕事に無力さを感じる要因」になっているのでしょうし、子どもが「学童行き渋り」をする理由の根源なのだと感じました。
周りとトラブルを起こさないように自分を押し殺して緊張しながら過ごす、なんて、大人のストレスと同じじゃないか、と思う筆者です。
大人が受けるストレスを、小学校に入学したときから受け続ける現代の子ども達。
これは、現在、大人の間で増えている「燃え尽き症候群」とか「鬱」とか「パニック障害」とか、そういった心身の不調が、将来、低年齢化していくこと間違いなし・・・、と思わずにいられない「学童・保護者懇談会」でした。
絶望しかない高槻市 濱田市長の方針
高槻市民である小学生の中に、日々、このような毎日を強いられている子ども達が大勢います。
それに対して、高槻市の濱田市長は、公立学童に課題があるとは認識していません。
Vol11. 「嘘or本当? 高槻市の議員は子供が大事と思ってる?」の記事で、無所属議員の平田裕也さんが「学童保育の充実に努め、待機児童対策など課題解決を図ります」という公約を掲げて当選していることを紹介しましたが、平田さんVS高槻市長の答弁をご紹介しましょう。
「平田裕也議員 VS 濱田市長」の答弁
平田裕也議員の質問:
濱田市長の回答:
これ、読んだら分かると思うんですけれども、濱田市長は「待機児童がいる」ことが問題であって、「現場が困窮している公立学童」が問題とは思っていないんです。
単純に、民間学童が足りない期間、「臨時室」を開設すればいいだけの話なのに。
質の確保について、「民間学童保育室の立ち入り調査」と高槻市長は言っていますが、民間学童は、国の基準を守った運営をしています。
なぜ、「公立学童の立ち入り調査」をして実態を見ないのでしょうか?
(※ 市役所の職員に、「子どもが過ごしている公立学童の現場を見たことがあるか?」と、聞いたところ、「見たことはありません」と仰っておりました(笑)。。。
(笑)と書きましたが、本当は笑えない・・・)
「久保隆議員 VS 濱田市長」の答弁
久保隆議員の質問:
濱田市長の回答:
高槻市の職員が「市としては、民間学童を設置促進に取り組んでいる」と何度も電話口で繰り返して言ってきたのは、「高槻市が民間学童に補助金を出している」ということを言っていたことが分かります。
ただし、この補助金制度は、平成28年度に始まっていて、既に9年が経過。
9年前に学童に入所した小学一年生が、中学3年生となる9年の間に、学童の問題は改善されたでしょうか?
確実に言えることは、現在の公立学童が未だに劣悪な環境であって、入れない児童もいれば、登録したとしても「行き渋りによって、子どもの居場所が失われる状態」が常態化している、という事実です。
この9年前に出した政策が上手く機能したのか調査したのでしょうか?
この9年間、濱田市長は学童保育事業の課題に対して何をしてきたのでしょうか?
そして、この答弁。「民間学童に丸投げして、市役所は知らんぷり、というのは、不十分なんじゃないの?」と、やんわり突っ込む議員に対して、濱田市長は、補助金の話しかせず、課題の本質については回答していません。
確実にいえることは、高槻市の学童の1クラスに60人も子どもが詰め込まれることによって、子どもたちの犠牲の上で、濱田市長は「待機児童を減らした」政治家という良いイメージをつくることができる、ということなのです。