18. 公立学童と民間学童の不公平を生み出す高槻市の政策指針
vol17. 「高槻市の公立学童「現場の苦悩」」の記事の中で、複数議員と濱田市長の答弁をご紹介しました。
高槻市議会を見ていると、濱田市長の考えが、次の2点に集約されていることが分かります。
高槻市 濱田市長の学童保育事業方針
濱田市長が問題視している課題
待機児童の解消
高学年児童の受け入れ
濱田市長が打ち出している解決策
民間学童保育室の設置・促進
民間学童保育室に在籍する子どもがいる低所得者世帯への金銭的支援
さて、この1番目の解決策が、どのような形で行われているかというと、2つの補助金が用意されています。
補助金1. 民間学童の施設を新しく設置するときに、民家・アパートを改造して学童として使いやすくするため、リノベーションや修繕工事が必要になります。その整備のための費用に補助金(上限1200万円)を市が負担する、というもの。
補助金2. 民間学童を運営していくための費用に対しての補助金。年額528万円から655万2千円予定(支援員数(常勤・非常勤)・入室児童数による)。
他に、学童のの賃借料助成等もありますが、学童に入室している子どもが20人以上の場合が対象(10人以上20人未満の場合は減額して助成。経過措置あり。)。
ところが、補助金1に関して、令和7年の民間学童を募集しているのは下記の5カ所のみ。
柳川中学校区のうち、西町、川添1丁目、川添2丁目
磐手小学校区及び奥坂小学校区のうち、安満北の町、安満中の町、安満西の町、安満新町、別所新町、別所中の町、別所本町、古曽部2丁目、古曽部3丁目、古曽部4丁目
大冠小学校区のうち、大冠小学校校門から概ね半径500mに所在する地域
真上小学校区及び清水小学校区のうち、大蔵司1丁目、西真上1丁目、西真上2丁目、名神町、緑が丘3丁目、浦堂1丁目、浦堂2丁目、浦堂3丁目1から8番、浦堂本町24から27番、大蔵司2丁目、大蔵司3丁目、宮之川原4丁目、宮之川原5丁目、宮之川原元町1から6・8から10番
芥川小学校区及び川西小学校区、ただし南芥川町15から23番、川西2丁目、朝日町3・4番を除く
※対象となる区域に設置し、高槻市内に住所を有する児童を対象とすること。
※同区域からは原則1ヶ所とする。
⇓⇓⇓⇓⇓ 詳細は、このページからご覧ください。 ⇓⇓⇓⇓⇓
Vol 2. 「高槻市学童の実態 子どもが行きたがらないのも納得」の記事の中でお伝えした「高槻市の学童、児童一人あたりの面積が狭い ワースト10位」のうちで、新しい民間学童の設置を高槻市が募集しているのは、「奥坂小学校地域」のみ、その他の6校区について、民間学童の設置を促していないのです。
★高槻市の学童、児童一人あたりの面積が狭い ワースト10位★
※vol 2. 高槻市学童の実態 子どもが行きたがらないのも納得」の中でご紹介した令和5年度のワースト10位と、令和6年度のワースト10位を合わせてご紹介します。
令和5年度 狭い学童は?:
1位 阿武野A 学童 子ども一人あたり1.00平方メートル
2位 安岡寺 学童 子ども一人あたり1.02平方メートル
2位 奥坂A 学童 子ども一人あたり1.02平方メートル
4位 奥坂B 学童 子ども一人あたり1.04平方メートル
5位 寿栄 学童 子ども一人あたり1.07平方メートル
5位 北大冠 学童 子ども一人あたり1.07平方メートル
5位 阿武野B 学童 子ども一人あたり1.07平方メートル
8位 日吉台B 学童 子ども一人あたり1.08平方メートル
8位 北清水 学童 子ども一人あたり1.08平方メートル
10位 北大冠A 学童 子ども一人あたり1.09平方メートル
令和6年度 狭い学童は?:
1位 阿武野A 学童 子ども一人あたり1.00平方メートル
1位 奥坂A 学童 子ども一人あたり1.00平方メートル
1位 奥坂B 学童 子ども一人あたり1.00平方メートル
4位 安岡寺 学童 子ども一人あたり1.02平方メートル
5位 阿武野B 学童 子ども一人あたり1.03平方メートル
6位 磐手A 学童 子ども一人あたり1.05平方メートル
7位 芝生 学童 子ども一人あたり1.03平方メートル
8位 日吉台A 学童 子ども一人あたり1.07平方メートル
9位 日吉台B 学童 子ども一人あたり1.07平方メートル
10位 北清水 学童 子ども一人あたり1.07平方メートル
阿武野A学童は、2年連続、不動のワースト1位です。
同じ小学校の阿武野B学童は、同じ5位ですが、子ども一人あたりの専有面積は、1.07から、1.03平方メートルと狭くなっています。
奥坂A、B学童と安岡学童は、2、3、4位で入れ替わっていますが、慢性的なスシ詰め学童状態なのが伝わってきます。
そのうち、奥坂小学校区では、新しい民間学童が募集されている様子。
ワースト10位の全体を見ると、10位の学童の子ども一人当たりの専有面積は1.09平方メートルから1.07平方メートルへと、学童の環境は悪化していることが分かります。
悪化していく高槻市の公立学童の中で、最も狭い阿武野小学校区や安岡寺小学校区の環境は、高槻市には見過ごされているようです。
学童保育事業 高槻市長の方針の謎
上記にご紹介している高槻市HPの民間学童事業者向けページの記載には、謎があります。
それは、募集している民間学童の規模について、下記のように書かれていること。
謎1
1つ目の謎は、国は、学童1クラス、おおむね40人以下になるように定められているのに高槻市は、40名以上になることを募集条件としている。
もちろん、2クラス以上用意できる学童を対象としているなら問題ありませんが、現実問題として、民家を改修してつくられるスペースで2クラス以上作るのは、かなり難しい。
「大型の学童じゃないと助成金を出さない」う~ん。。。
とりあえず、1クラスで40人以上となると、国の基準を破ることになるんですけどね・・・。
ちなみに、ネットで確認できるHP情報においては、高槻市にある民間学童の中で、AとBの2クラスあるのは「Kids Lab.高槻大手町校」だけでした。
謎2
2つめの謎は、「公立学童の定員は60人、児童一人につき1平方メートル」としているのに、民間学童の募集要項では、国の基準を守った「児童一人につき1.65平方メートル以上」という基準にしてあること。
もしかしたら、民間学童事業所さんで、広い敷地を見つけて「児童一人につき1.65平方メートル以上のクラスがたくさんある学童を作ってね」ということなんだろうか・・・?
いや、物件があるなら、なぜ、そこに公立学童をつくらない???(笑)
市役所の方と電話で話していると、「市は民間学童のために助成金を出しています。だから、公立学童の環境が悪いことを放っているわけではありません。民間学童に不満がある場合は、民間学童と市役所は別団体ですから、民間学童さんと相談してください」と、本来、行政の仕事を、うまく民間の責任に移し替えられているように聞こえてきます。
だから、民間学童を増やそうとしているのは、学童問題を解決するためじゃなく、学童問題を「私達の責任じゃありません」って公言できるようにするための道のりなのではないでしょうか?
それはそうと、この2つ目の謎の、一番大きな問題点は、納税者に対して公平性を保つ努力義務がある市が自ら「公立学童に通う子ども達と、民間学童に通う子ども達の間に、不公平を生み出している」ところ。
高槻市小学生 学童の不公平問題
高槻市の現実の学童利用者の生活には、多くの不公平がうまれています。
高槻市のHPに載っているすべての民間学童HPを見ながら、不公平な点について、まとめてみました。
不公平1 小学校から学童まで、学童から自宅までの安全確保
高槻市のほとんどの民間学童では送迎を行っておらず、行っているとしても小学校への迎えのみ。
民間学童から自宅へは、親のお迎えか、子ども達が一人で下校しなければなりません。
自宅まで、車で送ってくれる学童は2校しかありませんでした。
ということは、自宅から学童が近い、小学校の校区内にある学童以外は選択できないのです。
さて、この民間学童の送迎問題は、市議会でも質問されましたが、市長の回答の中ではスルーされました。
久保隆議員の質問:
濱田市長の答弁:
「なぜ、民間学童が送迎をしてくれないのか?」というと、学年によって授業が終わる時間帯(何時間授業なのか)が違う上、授業が終わった後にやらなければならない係の仕事がある児童もいたり、そんなバラバラに待ち合わせ場所にやってくる子ども達の個々の事情に対応しながら、順番に、複数の小学校を回って、子どもたちをピックアップし、小学校のお迎えに行っている間に、近くの小学校区の子ども達が徒歩で学童へ登園してくる。
というカオスな状況を毎日、問題を起こさずに回すのが難しいからです。
公立学童なら、利用者は、全員同じ小学校なので、行事などによる時間割イレギュラー(これが年間かなりの日数あります)も、確実に把握できますし、学童と校舎が近いので、子ども達の安全が保たれています。
不公平2 学童にかかる費用
高槻市は、民間学童に対して助成することで、保育料については、公立学童と同じ金額にしやすくなるようにしています。
そこで、保育料は公立学童と同じ民間学童が多いのですが、おやつ代が1万円以上だったり、諸費など、保育料とは別の名目で、様々な基礎費用がかかり、実際には、合計すると、月々何万円かの費用が必須でかかる学童が主流。
なおかつ、謎なのは、「保育料以外に別途料金がかかります。詳しくはお問い合わせください」と、実質かかる料金が明確にHPで開示されていない民間学童がほとんどであること。
⇑⇑⇑ なぜ!?
不公平3 民間学童の中で子どもが実感するかもしれない経済格差
結局、学童を利用するための基本料金が公立学童と比べると高いので、4年生以降も学童を切望されるシングルマザーや所得が低い家庭にとって、民間学童は選択肢になりにくいかもしれません。
しかし、それでも子どものことを心配して民間学童に入れたとしても、民間学童の中で、子どもが家庭の経済格差を感じる可能性があります。
民間学童は営利団体なので、子どもたちを集めようと様々な習い事を提案しているところが多いのですが、その料金がとても高いのですね。
なので「学童の中にある習い事をやりたい」と子どもが思っても「金銭的な理由で親がOKと言わない」ケースはあるだろうことは簡単に想像します。例え、そういったケースでも、その子どもは「同じ学童の友だちが、自分が習えない習い事をしている」という光景を間近で見させられる生活になります。
そうした状況は、当然ながら、学童内の子ども達の人間関係の不和として出てきやすくなるのではないでしょうか?
高槻市が市民のニーズに合わせて「公立学童を整備しない」と決めたことによって、子ども達の日常の中に、不公平な放課後が固定化されつつあるのです。
元々、「どうやったら、高槻市の学童問題を解決していけるのか?」を探ろうとして始めたはずのブログなんですけど。
調査すればするほど、解決の糸口が見つかるどころか、高槻市の学童問題の闇の深さに、どんどん吸い込まれて行っている気がする筆者なのでした・・・(笑)。
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