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【VFK】VSロアッソ熊本(H)8.13

 前節,5-2というスコアながら,薄氷の勝利で乗り切った甲府。今節は、後半戦4勝1敗の強さを誇る熊本をホームに迎える。大木監督率いる熊本を相手に、5年間継続してきた甲府のサッカーがどれだけ通用するのかを測る試合であり,プレーオフ圏内に肉薄するための重要な一戦でもある。

◆スタメン◆
     リラ
  長谷川  宮崎
荒木 山田 石川 関口
  須貝 野澤 浦上
     岡西
◆ベンチ◆
小泉 フォゲッチ 松本 鳥海 中山 飯島 三平

 小林の長期離脱を受けて、荒木が左WB,関口が右WBに入る。ベンチメンバーにはフォゲッチが選ばれた。
 キーパー河田は前日に脚の痛みを訴え欠場。岡西が入る。
 野澤陸は,センターバック中央の後継者として期待された入団から1年半。左CBで経験を積みながら急成長を遂げ,リーグ戦の先発としてCB中央に入る。連携面での不安は大きくなるが,チームが一段上に行くための大切な投資となる。

◆圧倒された前半◆
 キックオフとともにゲームを制圧したのは、やはり熊本だった。ポジショナルスタイルで戦う両チームだが,攻守両面で熊本の質が甲府を圧倒的に上回っている。熊本のターンが続き,甲府はそれに耐え続けるのみ。打開策も見出せないまま,いつ失点してもおかしくない試合展開が続いていく。

◆岡西のPKストップ◆
 前半8分,河原からの一発のパスから高橋に裏を取られ,岡西と1対1に。岡西は両手を伸ばしてボールを確保しようとするが,高橋のトラップも転び方もうまく,判定はPK。だが,これを岡西がビッグセーブ。仮に決まっていたら,試合の形成は決まっていた。岡西が劣勢のチームに希望と勇気を与えてくれた。

◆先制◆
 前半終了間際,状況を打開したのは長谷川元希。荒木からのパスを受けた瞬間にドリブルで推進し,宮崎へスルーパス。宮崎が粘ってリターンするも長谷川がつぶされてしまう。クリアボールを拾ったのは浦上。そこから山田陸の鋭い縦パスを受けた長谷川と宮崎がワンツー。長谷川が抜け出すも,またもエリア内でつぶされてしまう。
 今度はリラが拾って再び長谷川へ。長谷川はDFを背負いながら,ペナルティエリア内に攻め上がる須貝英大にボールを落とす。須貝は落ち着いてコースに流し込む。ゴール。
1-0。圧倒的な劣勢の中,甲府リードで前半を折り返す。

◆宮崎純真と鳥海芳樹◆
 相手の守備陣を破壊する宮崎純真と、ゲームのリズムを生み出す鳥海芳樹。前節救世主的活躍を見せた鳥海を押しのけ、スタメンを勝ち取った宮崎。彼に求められることは、相手の最終ラインを打ち破り,得点を奪うことである。どれだけ熊本に握られようと,宮崎で決める。琉球戦もだが,ボールを握るという理想を捨て,結果を掴むために。そんな監督の姿勢が見られる采配だった。
 宮崎純真の力があってこそ数少ない決定機は生まれた。だが,宮崎は決められなかった。前半は佐藤優也の背中セーブに遭い,後半は,絶好機を枠に飛ばすこともできなかった。

先制点を奪った今,いつまでも熊本に握られるわけにはいかない。宮崎は痛めた脚の影響もあって,後半8分の絶好機を逃した直後に,よりゲームを作れる鳥海と交代となる。

◆同点・逆点◆
 鳥海を投入して攻撃のリズムを好転させた甲府だったが,立て続けに失点を喫してしまう。後半14分,河原からの浮き球を高橋がダイレクトボレーでゴール右隅に叩き込んでまず同点。

 甲府は後半17分にリラ→三平,山田→松本。三平は30分以上のプレイは怪我の可能性が高まるし,山田は連戦を見据えての交代か。松本には闘志あふれるプレーとセットプレーのキッカーとしての期待がかかる。

 後半20分,熊本左サイドからのフリーキック。キッカーは河原。低い弾道のクロスに対し,飛び出したキーパー岡西が触れず竹本に決められてしまう。岡西にとっては非常に残念な失点となった。それにしても河原のキック精度の素晴らしさ。熊本のセットプレーは,狙いも含めて常に甲府の脅威であり続けた。

◆同点ゴール◆
 選手交代を経て徐々にリズムを取り戻す甲府。後半31分。須貝の抜群の持ち出しから,荒木。荒木のボールが長くなり,DFに引っかかるも,須貝がすかさず回収。これを受けた鳥海がドリブルでつっかけて倒されるがノーファール。クリアボールを須貝が頭で落とし,松本が拾う。長谷川は縦パスを受けてすかさず鳥海へスルーパス。ややずれたボールを鳥海がかかとでフリック。三平は,鳥海より後方から走り込み,冷静にゴールへ流し込んだ。

2-2。

 俄然勢いを増す甲府は,そのキックオフから決定機を生み出す。相手のトラップの乱れを野澤陸が見逃さずにカット。長谷川,荒木,三平,長谷川,三平,長谷川。熊本のお株を奪うような流れるようなワンタッチプレーで一気にゴール前に侵攻すると,荒木のクロスから三平!浮き上がるボールを左足で上から抑えられなかったが,惜しいシュートだった。

◆フォゲッチ・飯島投入◆
後半34分 荒木→フォゲッチ,長谷川→飯島。フォゲッチは甲府デビュー戦でまさかの左サイド起用となる。

そのフォゲッチに早速見せ場が訪れる。
浦上の精確なフィードから松本が右サイド最前線に抜け出してグラウンダーのクロスを上げる。鳥海とはタイミングが合わずに抜けてしまったが,その先で待っていたのがフォゲッチだった。得意の右足でよく抑えられたシュートを枠に飛ばす。DFにブロックされてゴールはならなかったが、上々のファーストプレーとなった。

そのコーナーキックの流れからターレスのスピードに乗った恐ろしいドリブルが発動したが,関口が難なくストップ。チームに流れを引き寄せる。

 後半40分に交代枠がないところで岡西が痛める場面があり,ひやり。大事に至らなかったが,大変危険なプレーだった。

 後半41分コーナーキックのこぼれを松本がライン際ぎりぎりでキープ。須貝のテクニカルな浮き球パスを松本がダイレクトボレーでゴール前に流し込む。DFに当たってこぼれたところを飯島陸がシュート!だが,厚く当たりすぎたシュートはゴールはるか上空へ軌道を描く。

 飯島は,途中出場からの決定機を安定して作れるようになってきており,最終盤でのゴール量産に期待できる状況になってきている。

◆アディショナルタイム◆
 同点ゴールから主導権を握る甲府は,最後までリズムを失わず攻め続けた。関口が,野澤陸が相手の攻撃の芽を摘み,フォゲッチが,松本が冷静にボールを裁く。石川も惜しみない運動量と技術でチームを支え続けた。あれだけの劣勢をはね返し,終了間際まで熊本を押し込み続ける甲府。勝利への気迫が,熊本を凌駕していく。

 そして,ラストプレー。フォゲッチが須貝に預けてランニングを仕掛け,マークを引き付ける。クロスのコースを確保した須貝が右足クロスを上げると,そこには三平。三平を腕で掴んでいたDFと鳥海がもつれる。DFは三平を掴んだまま倒れる。三平も倒れる。
 ドミノ倒しの起点が鳥海だったから,意図して倒したわけではないが,三平を掴んだまま倒れたことに変わりはない。
 PKの千載一遇のチャンスではあったが,主審の笛は鳴らず。残念ながら2-2のドロー決着を見ることになった。

◆格上相手の意地の引き分け◆
 試合内容でいうと,大木監督が積み上げてきたものと,甲府が吉田ー伊藤ー吉田と5年かけてきたものは,明らかに熊本の方が優れている。攻撃時,守備時に選手が迷いなく連動し,走り切る力は前回対戦時から比べても大きく伸びている。さすが,J2昇格初年度にJ1昇格戦線に躍り出るチーム。同じポジショナルを志向するチーム同士だが,熊本が圧倒的に格上だった。

 甲府のサッカーもかなり積み上がってきているし,個人も伸びてきているが,まだ攻撃にも守備にも選択肢を探し,迷う姿が見られている。だが,この格上の難敵に対し,試合の中で課題を解決し,最後は勢いを奪ってみせた甲府の選手たちの試合中の成長や,勝利への熱い気持ちは本当に素晴らしいものがあった。VF甲府の意地を見せることができた。

 大木監督,ロアッソ熊本に比べ,吉田監督もヴァンオーレ甲府も発展途上にある。試合開始時点でチーム戦術の成熟度の差が大きかったにもかかわらず,引き分けで終えられたこと。後半に巻き返して勝利目前まで熊本を負い込めたことは,今後の自信になる。

 熊本には及ばないものの,着実に地力を伸ばしている甲府。今,甲府の選手たちも現状のサッカーに満足せず,問題意識をもって戦い方の修正をかけている。このタイミングで熊本と戦えたことで,改めて学べたことは多いのではないだろうか。

 勢いを増そうかという場面で万全のメンバーで臨めない不運にも見舞われているが,それをはね返せるだけのチーム力がついてきているのも事実。甲府の目指す方向は,熊本が体現してくれた。熊本は強い。だが,その熊本相手に後半盛り返した甲府も強い。チーム戦術においてまだまだ改善の余地がある。新加入選手もいる。

 フォゲッチが個人戦術をしっかりともっており,落ち着いたプレーでチームを底上げしてくれたことは大きなプラス材料だろう。
 他の選手たちもどれだけチームにフィットしてくれるかは未知数。フィジカルコンディションがいつ整うかすら不透明である。

 彼らの力を得るには,現有戦力で戦い方を研ぎ澄まし,勝利を重ね,できる限り試合数を増やす必要がある。天皇杯,プレーオフ,そして入れ替え戦。一つひとつ勝利を積み重ね,勝ち取っていこう。

 仙台戦で得た反骨の精神を基に,秋田戦を原点とし,秋田〇水戸△群馬△琉球〇熊本△5戦負けなし。水戸・群馬戦をスクランブルで乗り切り,熊本に引き分けは,決して悪い状況ではない。

 間違いなく,チームは上向いている。真夏の連戦は始まったばかり。千葉戦・東京戦。難敵続きだが,なんとか撃破し,秋のラストスパートに繋げよう。

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