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なぜ二階堂は僕を惹きつけるのか
ニカイドゥ〜
相変わらずドン詰まったおっさん描くのが上手い福本センセ
大抵スポーツ漫画は部室や教室といった青春を象徴する場所や、カクテル光線が照らす華々しいグラウンドの一場面から始まる。
しかしこの二階堂地獄ゴルフはおっさんが公園でため息をつく真夜中の公園で始まる。
エキストラは主人公の同級生でも観衆でもなく、吊り橋効果に酔ったカップルだ。
週刊モーニングならではの始まり方ではある…か?
いやいや、ジャイキリ、バトルスタディーズはもちろん、当初は色物扱いされてたグラゼニだってもっとちゃんと?したスタート切ってたぞ!
せっかくなので比較してみよう。
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イーストハム市民に担がれご登場の達海猛。
こいつが日本のサッカーを面白くするぞ!
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凡田夏之介、顔に似合わず?職業はプロ野球選手♨️
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この子、狩野笑太郎が今から甲子園目指します!
エエツラ構えや!
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そして二階堂進・35歳
うーん、暗いッ!
なんだこの悲壮感は…モーニングどころかミッドナイト…ッ!
他のファン達も指摘しているが、この冴えなさは黒沢を彷彿とさせる。
なんなら、実行に移さなかったとはいえ、無性に人を殴りたいというセリフからは高級車に嫌がらせをしていた頃のカイジのエッセンスをも感じる。
ククク…カカカ…キキキ…クゥクゥクゥ…ッ!
相変わらず福本センセは人生にどん詰まった男の描写が上手い…っ!
しかし彼のような主人公は何故か応援したくなる。
僕が日本人で、ロベルト・バッジョや真田幸村が人気となる我が国の国民性故だろうか?
二階堂は決してクズじゃない
二階堂は(今の所)怠惰な人生を送っているわけじゃない。
確かに、ルーキー時代は調子に乗っていたようであるが、落ち続けるにつれて謙虚になっていってるし、トレーニングも続けている様子である。
しかし彼は失敗体験が心にこびりついてしまっていて我々読者に共感性羞恥に近い重い感情を想起させてしまう。
絶対、悪いやつじゃない。むしろ我慢強さなら黒沢を凌ぐかもしれないとすら思う。
黒沢では露骨に嫌味な後輩が登場しなかったので比較は難しいが、彼が同じような状況ならもっと直接的に言い返してしまうだろう。
下手をすればヒートアップして手を出してしまうかもしれない。
二階堂は自分の置かれている立場をよく理解している。
自分の弱さや犯した失点まで含めて、飲み込んでいる。
全ては彼の目標のため。
我執あればこそ
カントリー倶楽部の坊ちゃんは目標に執念を燃やす二階堂に対して
「それは我執だ!」と言って突き放そうとする。
しかし、その我執こそが二階堂の正気を保たせているのだ。
キクラゲのような小人が見えるようになってしまってはいるが、現実に耐えるための力の源になっていることは確かなのだ。
年甲斐もなく戯けてまでチャンスを掴もうとする姿にもういい、休めっと言いたくなる。
しかし、彼にとって休む、我執を捨てるということは心臓の鼓動を止めてしまうことに等しいんじゃないだろうか?
よく高校の部活動で、監督が敗れた選手達に
「今日の負けは必ずのちの人生で役に立つ」
と言った趣旨のアドバイスをする。
彼らは体の1番動く時期の三年、正確には2年と四ヶ月〜十ヶ月程度を各々のスポーツに懸ける。
それから大学に行くなり、就職するなりして大人としての人生を積み始めることができる。
しかし、二階堂は人生の三分の一近くをゴルフに費やしてしまった。ここで辞めてしまって、何が残るだろうか?
桐島のおこぼれに預かって、親父達にゴルフのコーチをするのも一つの道かもしれない。
だが、それは彼の心を真綿で締め付けるようなものだろう。決して彼の魂は救われないだろう。
頑張れ、二階堂、死ぬな、二階堂!
と気がつけばエールを送ってしまう。
選んだ地獄は良い地獄
最後に、僕に毎週モーニングを買う新しい楽しみを与えてくれた福本先生や関係者の皆様にお礼を言わせていただきたい。
本当にありがとうございます。
二階堂地獄ゴルフがどんな展開を見せるのかまだまだわからない。
鷲巣のように本当に地獄に堕ちて、ルンバから逃げ回りつつ、藤村甲子園のダンチョネ節よろしく地獄の鬼を集めてゴルフをやるのかもしれない。
プロゴルフ浪人生として、現世の地獄を生き延びるのかもしれない。
どっちにしろ、僕は毎週木曜日を楽しみにして、彼を応援したい。
頑張れ二階堂!選んだ地獄はいい地獄だ。
いつか君の天国になるはずだ。