早稲田大学ビジネススクールの「ケースメソッド教授法」に参加
ケース教材とは
僕は経営学の先生(早稲田ビジネススクールのMBAコース)なのだけど、ちゃんと経営学を学んだことはない。
経営学でよくあるやりかたで、企業や企業人の意思決定を、背景含めて完結かつ過不足なく記述した「ケース教材」というものをつかって、経営の追体験や、「この意思決定どうよ」みたいなものを討議したりする。
ケース教材は工学系の論文みたいなもので、査読入れてちゃんと書かねばならず、これが書けるのも経営の研究者のウデの一つだ。
僕の授業では、僕自身がビジネスの当事者で、ゲスト講師に来てもらうのも自分でビジネスをしているので、ケース教材をつかったことはない。「できなくてやったことがない」だけで、こういうケース教材を書けて、ケース教材で教えることもできて、損はない。牧先生に誘っていただいたので参加することにした。
20人ぐらいの社会人学生さんたちといっしょに受講する。基本的にはWBS(早稲田ビジネススクール)の学生なので、一部上場企業の30歳ぐらいの人たちが多い。
ケース:小田尚子1-会社を辞めたい真の要因一
ケースの内容や、どういう話し合いをしたかは、今後の授業のネタバレなどがあるので、細かい説明ができない。だいたいこういう内容だ。
なので、本筋は話せないけど、どういう授業なのかの狙いとかを書くことにする。時間割はこんな感じだ。
ケースを使う勉強とはなにか
ケースは事例なのだけど、一方的なレクチャーのためのものではない。教科書やドリルと違う。
・ケース上にあるビジネス上の意思決定についていろいろ思いつく
・分析したり、整理したりする
・意思決定とその根拠についていろいろ議論する
つまり、問を設定する、議論が誘発されるように授業する、などがケースを使う学びを設計する上でのキモになる。
良いディスカッションができて、経営における意思決定をやれることが大事で、それはファシリテーションが大事だ。建前しか出ないのもダメだし、感情的なやりとりになっても学びにならない。また、悪い意味で評論家的な、当事者視点が抜けたり実現不可能的な選択肢を出すのは、あまり学びにならないだろう。
経営や経営企画の仕事では、そういう意見の引き出しや、「殻を破る」ことも大事だ。
ケーススタディとケースメソッド
似た言葉だが、ケーススタディは成功失敗の分析にフォーカスが当たる。基本的には一つの正解に集約するものだ。
ケースメソッドは、同じケースから多くの正解(あり得る選択肢)を出すことや、それを整理することに意味がある。
また、潰れそうな会社の経営を体験するときに、実際に会社を潰れそうにするのは大変だ。運転免許でもやるように、運転や事故のシュミレーションやるのは大事だ。実務家の問題点は、自分の会社のこと、今やってる仕事以外のことは、よくわからないことだ。まったく同じ業態でも、「100人のときの会社が、300人に成長したらうまく行かなくなった」みたいな事例はいくらでも転がっている。
また、グループでやることで、それぞれがアイデアを出して、他人のアイデアに突っ込むことがあり、それがケースメソッドそのものと言える。他人に考えをアップデートしてもらえるとか、正反対の人間にやり込められるときに、人間はちゃんと学ぶ。それを自分のビジネスに持ち込んで、同僚と議論できるようになれば、会社の能力はつくだろう。
自分だけの答えを掴んで、磨くのがケースメソッド
教科書に載ってるフレームワークを暗記してうまく適用する、みたいなのは、もちろん今も大事なんだけどそれだけでは不十分で、自分だけの答えをちゃんと出して、それを周りとのエコシステムとの中で磨き上げるみたいなことが必要になっていると思う。
ケースメソッドは、その意味で新しい業務をやる上のシュミレーションとしてそれなりに意味がありそうだ。新しい業務をやる機会は、昔より今のほうが増えている。いきなりオウンドメディアを立ち上げるとか、コミュニティやってみるとか、逆に非専門家がコンピュータシステム作らなきゃならないとか、そういうことだ。そして、その手の新規事業は、本を読んだり型通りのレクチャーを受けるだけでは、たいてい合格点(事業として成立するところ)に達しない。自社だけの勝ちパターンを編みだすまで頑張る必要がある。
そういう新規事業や、予測できないことに対する考え方みたいなので、今日のケースメソッド授業はかなり面白かった。
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