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ラストはあなたと打ち合いたい〜卓球室の2人のモテ男

さて、爽やか系へと目を転じれば、この卓球室にはモテ男が2人いる。杉さまと松さまである。2人は県内の教育大学附属中学校の同級生で、共に卓球部に所属。当時から球を打ち合った仲間であり、ライバルでもあったらしい。
それから時が経つこと60年、今も2人はこの卓球室のエースとして対決中、彼らの試合は見る人を惹きつける。

特に、杉さまは学生時代からずっとモテ男だったらしい。
私こと貴少納言のwatchingによれば、それは今も健在。見た目的にも、時折り繰り出されるユーモアの効いた発言によっても納得できる。
また、モテ男のそばにはモテ女あり。学校やクラスに必ず一人はいるようなマドンナがこの卓球室にも存在していることに私は気づいていた。彼女の名はゆり子さん。キリッとした美女。杉さまは日々の卓球の締めくくりに決まってこのマドンナとプレイする。私には、それがまるでラストダンスを踊るふたりに見えてしまう。
たとえ私の眼が右方向を向いていようとも、左眼の左端は杉さま&マドンナにロックオンなのだった。

ところが、である。マドンナといえどやはりシルバー世代、ゆり子さんはある時から股関節の不具合とかで卓球室にやってくる回数がだんだんと減ってきた。そして来るとしても早めに来て、早めに帰るようになった。ゆり子さんの姿が卓球室から消えるやいなや、待ってました!とばかりに二番手、三番手、四番手の女子が杉さまを狙って近づいていく。この私もたった1度だけ杉さまを独り占めしたことがある。それは地区対抗卓球試合に出たときだ。同じ地区だったため、杉さまは私にかかりきりで、励まし、勝つためのヒントを与え続けてくれた。やったー❣️……と、何気なく2階の応援席を見上げたら、三番手の女子がその一部始終をじーーーっと見つめていた。

卓球女子人気を二分するもう一人、松さま。彼はふっくらしていて(特にお腹が)、性格もふっくら穏やか。性別も年齢も幅広い層に人気がある。頼まれたら、どんな初心者にも相手になってあげるし、みんなへの挨拶や気配りも忘れない。それゆえに「みんなにいい顔をする男」と見る人もいたが、それは松さまに相手をして欲しくて何かと貢ぐ女子の発言だったから、嫉妬混じりの非難に思えなくもなかった。

松さまは、私の友のよし子さんと幼なじみである。その関係からか、よし子さんと私は、なんと松さまから「NHKカラオケ」なるものに誘われたことがあった。なに?NHKのカラオケ?そんな正式な立派そうなカラオケってあったのか?と思っていたら、「日本一ヒマな会」をDAIGO読みした「NHK」であった。
このカラオケ会は、月1回、卓球の休みの日に7名の男子が街のカラオケ店で飲み放題・歌い放題をやっているという、文字通りの「NHK」だった。そしてたまに卓球女子にも声をかけていたようだ。
それとは別に、私たちも私たちで、卓球女子4人のグループで半年に1度くらいはカラオケに行っていた。そこでよし子さんと相談して、NHKカラオケにも参加しようという話になった。参加するにあたり、よし子さんの発案で、私たちは「TBS」(卓球して・ボケないように・しましょう)とグループ名を決めた。私たちTBSメンバーはみんな卓球より歌の方が上手いと思っており、自信満々だった。そこらへんのおじさんやお爺ちゃんには負けない。そう思っていた。

松さまから誘われて参加したNHKカラオケ。NHKメンバーの平均年齢は、私たちTBSのそれよりかなり若い。みんな声がよく出ていた。「月の沙漠」「武田節」「高校三年生」「石原裕次郎メロディー」などすてきな歌ばかりを歌い上げ、これが紅白歌合戦なら白組の完全勝利であった。

ちなみにメンバーの誰かが教えてくれたのだが、卓球つながりのカラオケの会がもうひとつ存在しているという。その名も「杉さま会」。モテ男・杉さまの名を冠したこの会のメンバーは、女子が多数を占めているようである。もちろん、マドンナゆり子さんも杉さま会メンバーのひとり。卓球室のモテ男2人は、カラオケでも対決しているのである!

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