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演技レッスン【Netflixドラマ『賢い医師生活』】

こんにちは。
演技講師、アクティングコーチのスギウチです。
この記事では演技力アップに役立つ内容を不定期に書いています。

今回のテーマは【Netflixドラマ『賢い医師生活』】です。Netflixで大人気の韓国ドラマですが、いくつか気づいたことがあったのでシェアしたいと思います。

簡単なぼくの自己紹介ですが
ボクは元々20代前半から俳優として活動していて、今から約7年前に俳優から演技講師、アクティングコーチに転向しました。現在も講師として活動中です。今までたくさんのプロの俳優、女優さんのコーチングやオーディション、撮影本番の準備のお手伝いをしてきました。

俳優時代は全く演技のセンスがなく、事務所の先輩から満面の笑顔で「タカシは本当に芝居が下手だなぁー」と爽やかに言われるほどでした。その為、たくさんの演技レッスンやワークショップに通って色々なメソッドを学んできて今に至ります。

では本題に入っていきましょう。

Netflixドラマ『賢い医師生活』

『賢い医師生活』とっても、面白いドラマでした。シーズン2まであるんですが、一気に観てしまいました!!

内容としては医学部同期の5人が、40代になり、あるキッカケで同じ病院に勤務することになり、そこでの日々の中で起きるドラマを描いているのですが、いわゆる医療ドラマにありがちな権力闘争や、「患者の命と、自分の出世と、どちらを取るか?」みたいなシーンはほとんどありません。

医療ドラマなので、「命」に関わるシーンはたくさん出てくるのですが、5人のメインキャストの恋愛だったり家庭の問題だったりと劇的にドラマチックというよりは、日々の生活を丁寧に描いています。

ドラマの内容については、実際に観てもらったり、他の記事を参考にしてもらいたいのですが、このドラマの中での「演技」について掘り下げてみたいと思います。

各キャラクターの「全体の目的」

メインキャスト5人それぞれが、とても魅力的なキャラクターなのですが、いわゆる演技メソッドで良く出てくる「全体の目的」(作品全体を通して達成したい目的)が「無い」ように感じます。

絶対に「〇〇を勝ち取りたい」というものや「〇〇を達成したい!!」という一貫した目的というのが、どのキャラクターにもあまり感じられません。

緊急の手術のシーンなどでは、「患者の命を救う」という医師としての強い目的があるのですが、他のシーンでは仲間同士でふざけ合っていたり、バンド活動をしていたりと一貫した目的というのが感じられません。あえて一貫した目的を導き出すのなら「より良い生活をする」「自分らしく生きる」というような言葉になってしまいそうな感じです。

しかし、そうすることでキャラクターとしての魅力が無くなってしまうかと言うと、そんなことは全然なく、むしろそれぞれのキャラクターはとても人間ぽくて魅力的です。

医師としては超難しい手術も難なくこなすスーパー医師で、研修医から尊敬や時には恐れられていても、恋人にはデレデレだったり、仲間といるときはおバカキャラだったりとキャラクターの一貫性もありません。

ただ、一見その一貫性のないキャラクターが「あー、居るよねー、こういう人」「わかる、わかる」と観ている人が共感する要素がたくさんあり、結果として5人みんなが魅力的なキャラクターとして映っています。

まずこの点において、出てくるキャラクターに非常に親近感が持てるようになっているように感じます。

キャラクターの「それぞれの顔」

上記でも少し書きましたが、それぞれ5人のキャラクターが、「医師としての顔」、「友人としての顔」、「恋人としての顔」、「親としての顔」、「子供としての顔」といったように、対場所、対相手によってまるで違う表情を見せます。

よくよく考えてみるとボクらの生活もまさにそうで、会社で、自宅で、友人と居るときなどそれぞれ違った態度、振る舞いをしていることがほとんどです。

ところが俳優がキャラクターを演じるとなると、一貫性を持たせようとしてどの場面でも同じ「顔」になってしまいがちです。

それをこの『賢い医師生活』のメインキャスト5人は、キャラクターとしての様々な「顔」を見事に演じています。

イ・イクジュン役「チョ・ジョンソク」

その中でも一際輝いているのが、イ・イクジュン役を演じているチョ・ジョンソクさんです。この人の演技が凄い。

何が凄いって、外科医として、患者さんに対する医師として、仲間内でのお笑い担当キャラ、子煩悩のパパとして、ソンファに対する男としての顔など、ひとりのキャラクターとしての振り幅がめちゃくちゃ広いです。もちろん違和感なく演じています。

また、マニアックな話になってしまうんですが、お笑い担当のシーンなど(特に息子のウジュとのシーンや仲間の部屋でのシーン)は、結構即興的に演じているんだろうなーというシーンが多く、相手役の良いリアクションを引き出しているように思います。

ネタバレになってしまうんですが、シーズン2の最初でソンファがイクジュンの思いを断りに部屋に行くシーンでの演技も素晴らしかったです。

ソンファの態度や雰囲気で、イクジュンがソンファが答えを言う前に察するカットがあるんですが、ここでの気づき方など絶品です。長年の付き合いだからこそ「わかる」という2人の関係性も見えるし、イクジュンの「相手の気持ちを察することが出来る、優れた人間性」という部分も見えます。

こういうシーンを演じるときに、ついつい言葉で言われるまで「わからない人」を演じてしまいがちなんですが(空気の読めないキャラクターならまだしも)イクジュンみたいな頭の良い人がそれをしてしまうと違和感が出てしまうと思うんです。ところがチョ・ジョンソクさんはそんなヤボな芝居はしません。

またまた、もっとマニアックなんですけどソンファの部屋に入っていくときにソンファがいつもよく居るソファーやデスクに居ないときは部屋に入って、ソファーやデスクの方を一回探して、手前に居るソンファを見つけます。「当たり前じゃん」と思うかもしれませんが、本番前のテストを繰り返しているうちに、ついつい俳優は「知ってる人」になってしまうんです。そういう細かい点まで丁寧に演じているチョ・ジョンソクさんは本当に素晴らしい俳優さんです。

今回の『賢い医師生活』を観てファンになった人も多いのではないでしょうか。

さいごに

今回はNetflixドラマ『賢い医師生活』について書いてみました。

一貫性がないように見えるキャラクターの役作りをどのようにしているのかとても興味があります。キャラクターの描き方もそうですが、ストーリーの作り方もいわゆる「お決まりの医療系ドラマ」ではないのが魅力的な作品です。

是非、おすすめです!!

では
スギウチ タカシ

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