演技レッスン【役を演じる?役を生きる?違いとは】
こんにちは。
演技講師、アクティングコーチのスギウチです。
今回は「役を演じるのと、役を生きることの違い」について書いてみようと思います。
・役を演じるのと、役を生きるのって何が違うの?
・どっちの演技法がいいの?
・外向的な演技をするには?
このような疑問にお答えしていこうと思います。「役(キャラクター)の人生を生きたい」「役を生きるような演技がしたい」と思っている方におすすめの内容になっています。
簡単なぼくの自己紹介ですが
ボクは元々20代前半から俳優として活動していて、今から約7年前に俳優から演技講師、アクティングコーチに転向しました。現在も講師として活動中です。今までたくさんのプロの俳優、女優さんのコーチングやオーディション、撮影本番の準備のお手伝いをしてきました。
俳優時代は全く演技のセンスがなく、事務所の先輩から満面の笑顔で「タカシは本当に芝居が下手だなぁー」と爽やかに言われるほどでした。何とかしようと、たくさんの演技レッスンやワークショップに通って色々なメソッドを学んできて今に至ります。
役を演じるのと役を生きるのって何が違うの?
◼️役を演じるとは
「役を演じる」とか「役を生きる」とかいう言葉を聞いたことある人もいるかもしれません。「同じことじゃないの?」と思う人もいるかもしれませんが、演じるアプローチは180度違います。役を演じる演じ方の特徴として
・役を表現したり、説明的に演じている
・客観的な立場から演じている
このような特徴があると思います。詳しく見ていきましょう。
①役を表現したり、説明的に演じている
この役は「こういう人物だから、こういう動き、喋り方をしよう」だったり「ここで、この人物は悲しい気持ちだからこういう表情をしよう」といったアプローチで演じます。
②客観的な立場から演じている
①のような演じ方をする人の特徴として役を客観的に外側から捉えています。「イケメン風に〜」とか「爽やかな感じで〜」とかいうやつです。第三者的立場から役を分析して演じるので、特徴としては演技が内向的になりやすい傾向があります。
では役を生きるとは?
◼️役を生きるとは
役を生きる演技法の特徴としては
①その役の人生の一部を再体験している
②主観的、役の視点で物事を見ている
①その役の人生の一部を再体験している
役が台本の中で「行き場のない怒り」を感じているシーンならば、そのシーンを演じている俳優もそのときに同じような「行き場のない怒り」を感じています。
②主観的、役の視点で物事を見ている
役と同じ経験をその場で再体験しているということは、役に対して主観的に演じているということです。俳優にとっては目の前の相手役はただの共演者だけど、役の視点に立つことで「心の底から憎たらしい相手」に見えます。この演技法の特徴は外向的な演技になりやすいです。
まとめると
・役を演じる演技法は客観的視点、演技が内向しやすい
・役を生きる演技法は主観的視点、演技が外向しやすい
このような特徴があります。
じゃあどちらの演技法が良いのでしょうか?
どっちの演技法がいいの?
じゃあ、どっちの演技法が良いのでしょうか?メソッド系の演技法を習ってきた人は「役を生きる演技法の方が、いいにきまってるじゃないか!!」と言う人が多いかもしれません。その考えに異論はありません。ただ、ここで問題になってくるのが、演技が内向的か外向的かという点についてです。先ほど「役を演じる演技法」では内向的になりやすく、「役を生きる演技法」では外向的になりやすいと書きました。だけど、「役を演じる演技法」でも外向的に演じる人もいれば「役を生きる演技法」でも内向的な演技をする人がいます。内向的、外向的演技の違いとは?
◼️内向的演技
演じているときに、ちゃんと役として振る舞えているか(「役を演じる演技法」)、自分が今感じている感情は本物か(「役を生きる演技法」)という風に自分をチェックしているので意識が自分に向いている。
◼️外向的演技
演じているときに、役として相手に対してちゃんと振る舞えているか(「役を演じる演技法」)チェックしたり、相手を共演者ではなく登場人物として見ている(「役を生きる演技法」)ので意識が外に向いている。
難しくなってきましたね。
整理してみましょう。
①役を演じる演技(内向的)
自分がその役として見えるか、正しく動けているかチェックしながら演じているので、内向的になる。(「イケメン風に演じられているか?」)
②役を演じる演技法(外向的)
役が相手に対してどう見えているのかチェックしながら演じるので外向的になる。(「カッコいいと思われてるか?ダサいと思われてないか?」)
③役を生きる演技法(内向的)
自分が感じている感情は本物の感情なのか、とチェックしながら演じるので意識が内向的になる。(「この怒りの感情は本物だろうか?)」
④役を生きる演技法(外向的)
目の前の相手を共演者ではなく、登場人物として見ているので、自然と感情が生まれる(「なんて憎たらしいヤツだ」)
ここまで書いてくると、①と③が役を演じているように、②と④が役を生きているように思えてきました。
②と④は普段の生活でもよくやることだったり、感じることだったりしますよね?①と③は明らかに不自然です。恋人とケンカしながら「この怒りの感情は本物だろうか?」ってやってる人いないですよね?
「客観的」=演じる
「主観的」=生きる
よりも
「客観的」=外面からのアプローチ
「主観的」=内面からのアプローチ
とした方が良さそうです。
その上で大事なのは、意識を外向しているかどうかっぽいですね。
外向的な演技をするには?
主観的(内面)からであっても、客観的(外面)からのアプローチであっても大事なのは意識が外を向いているか、どうかです。じゃあ意識を外向させるには?
◼️役の視点に立つ
どちらからのアプローチであろうと意識を外向させるには、外の世界、相手役を役の視点から見れることが大事になってきます。
◼️徹底的なリサーチ
役の視点を理解するためには、台本に書かれていることはもちろん、書かれていないことも(台本に基づく内容であること)徹底的にリサーチすることが重要になってきます。
◼️他人事を自分事にしていく
ここで、外面からのアプローチをしていくのか、内面的アプローチをしていくのかは、その役、作品によって変わってくると思います。その俳優の得意なアプローチもあると思います。それぞれのアプローチ法はたくさんあるので調べてみると良いと思います。どのアプローチ法であっても、最終的に役として意識が外に向くことで役として生きる=役の視点に立つことが出来ると思います。
まとめると
外面的(客観的)、内面的(主観的)、どちらからアプローチしても最終的に役の視点に立つことが大事。役の視点に立てれば意識が外向化する。
さいごに
かなりマニアックな内容になってしまいました。
ひとつ補足としては、場合によっては内向的な演技も求められる場面もあると思うので(役が内向的な人物であるとか)内向的=ダメではないとご理解ください。
では
スギウチ タカシ