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歌謡曲レコード その17 ラハイナストリート(83)/今陽子 センスの塊!ハイスタンダードJPOP

わたしがこのアルバムの存在を知ったのは、昨今のシティポップブームの最中、Youtubeのおすすめに上がってきたのがきっかけだった。

このジャケットを見る限り誰だかわからなかったが、詳細を見るとなんと「今陽子」とある。とにかくびっくりしたのを覚えている。

今陽子といえば、言わずと知れたピンキーとキラーズのピンキーとして歌謡界を代表する歌手。往年の歌手としての存在だけがわたしの引き出しの中にはあるだけで、正直ピンキラ以外の活動、主にソロ歌手としての実績を知らなかった。だがこのジャケットを見た瞬間、彼女に対して無知であったことを深く反省するくらい、このオシャレさと、絶対名盤に違いないという勝手な自信、そして何より見つけた感!このレコードとの出会いは近年稀にみる衝撃であった。

そんな出会いから数ヶ月後。なんとRSD(レコードストアデイ)で初のプレス販売がスタートするという。なんと神なタイミング。廃盤している現在の市場価値は数万円ということで、このよきタイミングを逃すなんてことはできず、発売日に買って以来、鬼リピしている現在であります。

もっともっとこのLPに関する情報が欲しいとネットサーフィンしていると、本人がAbemaブログで数年前にこの作品について触れているコメントを見つけた。内容によると、グループ活動を終えしばらくして単身渡米を果たしたのち、ハワイ・マウイ島にあるジョージベンソンのスタジオ!で録音されたものだという。本人曰く「かっこいいLPを作りました」だそう。

その言葉通り、このLPには60年代、70年代特有の歌謡曲臭というのは皆無で、リラックスした今陽子の軽い歌唱と、タイトなリズムセクション、ジャズ&フュージョンのような自由さがかっこいい。昭和歌謡を背負った重たさと土着感はひとまず置いておいて、解放感を味わったベテランシンガーの新境地とも呼べるべき作品である。

とはいえ作家人は日本を代表するベテラン陣。まず注目は「黄昏の都会」で作詞作曲を手がけた久石譲!84年に「風の谷のナウシカ」を手がけるまさに直前の時期。すっかり宮崎駿の専属とも言えるポジショニングとなってしまているが、久石譲初期の活動を知れるというオマケがついた。そういう意味でも貴重な曲と言えるのではないだろうか。

LP全編を通したトータルプロデュース(全編編曲を担当)は松田聖子で飛ぶ鳥を落とす勢いに乗っている大村雅朗氏。そしてもう一人あげておかなければいけないのが大野克夫。井上堯之バンドに所属し、数多くのジュリーのバックを支え、今では「名探偵コナン」シリーズの音楽担当者としてすっかりお馴染みとなっている名プレイヤーである。

発掘の楽しみは、ベテラン歌手の若き日の知られざるチャレンジを目の当たりにできることとや、同じく今では大物となっている人物の若き日の仕事を知ることができることにあると思う。こういうLPに出会うたびに、日本の音楽シーンはかつて自由だったし、才能ある大人がしっかり遊びながら、丁寧に作っていたのだなということ。

結果的に売れなかったようだけれども、下手な仕事さえしてなければ必ずこうやって陽の目を見る日が来るのである。これは毎日の自分に対しても反射できる。

「ラハイナストリート」は自分自身への活力にもなってくれるLPである。


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