娘の心の呪いの杖を、何度もモキッッと折ってみる
今年は結局クリスマスツリーを飾りませんでした。ここで暮らして初めてかも。なんだかんだ(元)妻がいた時は娘が年中行事好きだということで飾っていました。よく考えてみると(元)妻が年中行事好きだったんじゃないかという気もしないでもないです。昨年は頑張って飾りました。今年も飾るつもりはあったのですが、結局飾らずじまいとなってしまいました。娘には「ツリー飾らなくてごめんね」と言いました。全然気にしていませんでした。やっぱり年中行事は(元)妻が好きだったんじゃないだろうか。
いちおうチキンレッグは買ってきて温めました。チキンレッグが持ちにくいという問題、今年は飾りを取って温め直してからクッキングペーパーとアルミフォイルを重ねた持ち手を付けるという手順で完全解決でした。娘、ものすごい勢いで食べていました。ワイルドだ。
飲み物はシャンパンみたいなグレープジュースです。私も少しいただきました。ちょっと甘いけどシャンパンっぽいぽい。コルクがなかなか抜けないのはご愛嬌。ケーキはショートケーキ2個、オードブルセット(二人分?)、ローストポーク(大きめのパック)。私のやる気の無さが如実です。どれも娘が完食でした。食べ過ぎた娘は「お風呂はいらない」と言い出しました。
「食べ過ぎた?」
「食べ過ぎた。おなかいっぱい」
確かに苦しそうな顔をしています。しょうがないですね。しかし、風呂に入ってから薬のつもりだったので、時間が中途半端になってしまいました。どうしようかなあ。結局、そのあと少しして早めに薬を飲んでもらいました。
今朝は私も娘もかなり大幅に寝過ごしました。朝の薬も遅めでした。コーヒーを勧めます。飲むそうです。ドリップ。コーヒーを飲み終えた娘に、『ちいかわ』の一巻を見せます。見せても読まないので私が心をこめて朗読します。呪いの杖のくだりです。巨大化したウサギとハチワレに怯えるちいかわで娘はまた笑っていました。なんというか、ちいかわは加虐心をくすぐるのかもしれません。クライマックス、私は心を込めて杖を折ります。「モキッッ」。娘は笑っていました。
読み終えてから、娘にも心が沢山あるけど、パパが娘の心を呪った見えない杖をモキッッと折ったからと伝えます。
「モキッッ」
何度も何度も私は見えない杖を膝で折ります。娘はなんだか嬉しそうに笑っています。
「これで心が元に戻るかもよ」
気持ちの問題です。気持ちの問題でしかありません。わかってはいます。そのうえで、娘の心を呪っていた見えない杖はパパが目の前でモキッッと折ったからと、そう伝えたいのです。
「モキッッ」
今日はこのあとも何度も杖を折りました。見えない杖を折る度に、娘に語りかけています。
「呪いの杖は折ったから」
私が部屋に何かを取りに行って、何をしに行ったかも忘れて戻ってきたあと、私を呪った呪いの杖をモキッッと折ってと娘にも頼みました。
「モキッッ」
「これでもう大丈夫だよ、ありがとう」
気持ちの問題でしかないのは分かっています。
でも、もしかして、万が一、娘の心になにか変化が訪れたらいいなあ。
いいなあ。
◇ ◇ ◇
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