episode 02. 一生のお願い
前回までのあらすじ
藤原会長の高島音頭を未来に残したい理由。それを聞いた大西。
魂が震えたその時、高島音頭の歴史が動き出す。
このお話に登場する人
藤原 高島の盆踊り歌保存会会長。高島音頭への愛だけは誰にも負けない。
大西 保存会の会員。最年少の30代。藤原会長の思いに感化される。
帰り道
5月とはいえ、夜は少し肌寒い。
それとは対照的に大西の心は熱くなった。
「高島音頭を残すことはな、地元に残る者の使命やと思う」
デパートの買い物客が残していった無責任な言葉が響く。
「貴重なお仕事ねー、残さないとねー」
「やるしかないか」と呟くと、隣家の犬が吠えた。
一生のお願い
まずは仲間集めとお金集めだな。
やると決めたら、行動は早い。
資金調達は、クラウドファンディング(以下CF)しかないと思っていた。
まだ、今のようにそんなに世間に周知されていなかったCFという資金調達方法は、なにかでやってみたいなーとも思いつつ、(お金を)支援してください、とか自分のことのためにお願いできないよな、とも思っていたので、手を付けられていなかったのだ。
今まさにこのときじゃないか。と前向きにとらえる。
知り合いのCFプラットホームを運営するAに相談をすると、「それちょっと厳しいんじゃない?イベントの企画、それも地方の盆踊り大会でしょ?誰がそこに共感してくれるか、だよね」という至極全うなアドバイスを受けた。
少し凹む。もしかしてだめ?
いや、だめで元々、だめならだめで、何も成してない今の地点に返ってくるだけだ。と気持ちを奮い立たせる。
これは、一回やってみよか、みたいな半端な気持ちで向かったらだめだな、と意を決する。
「一生のお願い、ここで使わせてほしい」そう言って、友達という友達に自身と藤原の思いを真っすぐに伝えていった。このせいで失った友達もいるであろう。しかし心配はない。こちとら一生のお願いを使ってるのだ。そこそこいい大人になっての一生のお願いの価値は重いはずだ。それで失う友達に未練はない。
高島音頭の運命は、「一生のお願い」に託されることになるのであった。
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