episode 08. 江頭先生の音頭教室
前回までのあらすじ
盆踊ラー・江頭ゆかりのスカウトに成功した大西。スターの片鱗を見せる熟女盆踊ラーをより輝かせるために一手を打つ!
このお話に登場する人
オザキ 写真家。高島おどりに巻き込まれる。
江頭 のちに江頭先生となる盆踊りマニア。一児の母。
大西 保存会の会員。最年少の30代。高島の盆踊り大会のリブランディングに取り組む。
オザキマサキ、巻き込まれる
写真を生業とするオザキマサキは、20数年前に高島市朽木に越してきた移住者である。日本の原風景のような高島が好きで、大きな仕事がバンバン来るということはないが、自身の作品に向き合えるし、何よりも仲間たちが好きだった。
大西から「オザキさん、動画撮ろう」と誘われたのは、たしか初夏のことだった。
「動画ってどんな動画?」
「熟女のプロモーション動画」
「なにそれ」
また大西が変なことを始めた。どうやらそれに巻き込まれるようだ。
午前のうちに現場に行くと、ほぉ、と思う。熟女と聞いていたから、いわゆるおばちゃんを想像していたが、スラっとして浴衣の似合う人だ。被写体としては悪くない。軽く自己紹介を済ませて、車に乗り込んだ。
踊りの動画、教材となるようなものを撮るというのがミッションということがぼんやりわかってきた。それを編集してyoutubeにアップするらしい。
「オザキさん、サムネ用に写真も撮ってほしいんだけど」と言った大西は、その側から江頭先生に指示をする。
「めがね、用意してきてもらってますよね?それかけて、上目遣いでお願いします」
は?こいつ馬鹿でしょ。
で、めがね持ってきてって言われて、ちゃんとめがね持ってきてるし・・・
って、言われた通りやるんかい!!
指示どおりにポージングをきめた熟女をファインダー越しに見る。グラビアカメラマンになった気持ちだ。大西はさすがに脱がせることはなかったが、昭和の香りのプンプンさせる艶っぽいポーズや仕草を要求し続け、大笑いしている。そして、おれはシャッターを押し続ける。
江頭先生の音頭教室
果たして大西は「じゃ、素材いただいていきまーす」と軽く言って、帰っていった。それから数日して、動画が公開された。
ウケる。おもろい。
あいつ、どこにこれ作る時間あんねん・・・
本気だな、と思う。手元のスチール写真を見ながら、頬が緩む。
大西にプロデュースされた江頭先生は、youtubeの中で輝いていた。
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