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謎の変死体|10月8日の種

 東京の夢の島には日本中のゴミが捨てられている。小学生だった私はなぜかそう勘違いしていて、夢の島のようすを勝手に妄想していました。

 湾岸に並ぶ異臭の山。カラフルなテーマパークのような一角は大小のプラスチックごみ。針の山に見えるのは累々と積まれた一億人分の使用済み歯ブラシ。

 妄想が鮮烈すぎて、おとなになった今も毛先の広がった歯ブラシをゴミ箱に捨てるたび胸がチクッとします。

 もしもこの世に毛先の広がらない歯ブラシがあれば、極彩色の針の山はなくなるだろうに。

 と思ってたんですよ。数年前まで。

 広がらない歯ブラシと出会ったのは浅草寺近くの小さな刷子ブラシ店でした。

 バイオリンの弓と同じく馬のしっぽの毛でできた歯ブラシ。豚毛よりもやわらかく、毛先も広がらないと店員さんにすすめられ、半信半疑で購入。

 広がらない、つまり長く使えるってことだよな。
 どれくらいもつんだろう‥‥。

 半年もちました。
 すごいな馬毛。

 ナイロン毛の歯ブラシが2〜3本買える金額ですが、コスパを考えると安い。

 毛先はひらかないけれど摩耗します。半年使うとけっこう短い。毛先の減り方にむらがある時は、たまにハサミで切りそろえます。

 使い始めはやや硬め。すぐになじんでしなやかな磨き心地に。ブラシ圧強めの私も馬毛だと歯ぐきが傷つかない。ただし濡れたまま放置すると雑菌が繁殖しやすいので使用後は水気をよく落とします。

 つい熱く語ってしまうぜファン魂。
 プラごみを減らしたい皆さん、よかったらご検討ください。

 あさって10月8日(も含めて毎月8日)は #歯ブラシ交換デー
 どこかのメーカーがそう決めたそうです。

 毎月の交換を促すのもいいけど、毛先がひらかない歯ブラシを開発するのが先なんじゃないの。と全国放送で訴えたある著名人が変死体で発見されました。

 ‥‥なんていう筋書きをおとなになった今もつい妄想してしまう私です。



表紙画像はWikimedia Commonsより。ソビエト時代の歯みがき励行写真でしょうか。バケツに向かってくちゅくちゅぺっするクマたち。

Papers of Charles McMoran Wilson, Lord Moran