高度外国人材獲得に必要な制度(1) (NHKラジオ2022年12月22日放送)
みなさん、こんにちは。今回も、NHKラジオのレギュラー出演番組 「マイあさ!」の「マイ!Biz キャリア&ライフスタイル」コーナーで田中孝宜キャスターとお話した内容を、こぼれ話を含めてお伝えしたいと思います。
今回のテーマは「高度人材獲得に必要な制度」です。
(注:この放送後、2023年2月17日に政府は高度人材獲得に関する新たな受け入れ策を発表しました)
田中キャスター:2022年9月、日本政府は、海外からのデジタル人材など高度人材受け入れを促進するための制度改正の検討に入るという発表をしました。これはどのような背景があると九門さんはお考えですか。
九門: 世界的にデジタル化や脱炭素への動きなどを背景に、様々な関連技術を持つ人材の獲得競争が起こっています。アジアでもシンガポール、香港、タイ、インドネシアなどでこうしたハイレベルの人材を取り合う動きが活発化しています。
田中キャスター:政府は制度の見直しに入るということですが、高度人材の受け入れのために、既にどのような制度が現在あるのでしょうか。
九門:2012年に「高度外国人材ポイント制度」という制度が先行的に導入されています。これは、高度外国人材の受入れを促進するために、高度外国人材に対しポイント制を活用して出入国在留管理上の優遇措置を講ずる制度です。
高度外国人材の活動内容を「高度学術研究活動」「高度専門・技術活動」「高度経営・管理活動」という3つの分野に分類し、それぞれの特性に応じて「学歴」「職歴」「年収」などの項目ごとにポイントを設けています。ポイントの合計が一定点数に達した場合に、「高度専門職」の在留資格を得ることができ、出入国在留管理上の優遇措置を与えるものです。優遇措置とは、5年の在留許可が与えられること、配偶者の就労や、一定の条件のもとで家事使用人や父母の帯同が認められるといったものです。
田中キャスター:この、高度外国人材ポイント制度では、具体的に、どういう人材をターゲットにしているのでしょうか。
九門:多くの日本人がイメージする工場等で働く外国人労働者や技能実習生ではなく、かなり「ハイスペックな人材」です。例えば、世界レベルの先進的な研究を行っている研究者や技術者です。例えば、最近でいうと、半導体、電気自動車の部品設計、IT関連、AIなどの分野があげられます。また、高度な経営人材、IT企業やグローバル企業の幹部社員なども挙げられます。
田中キャスター:ハイスペックな高度外国人材の誘致ということですが、
この高度外国人材ポイント制度で効果があがっているのでしょうか。
九門:高度外国人材ポイント制度では、一定のポイントに達すると「高度専門職」の在留資格を得ることができるとお話ししました。出入国在留管理庁によると、2020年末の「高度専門職」の在留資格を持つ外国人の在留者総数は1万6,554人と2012年から増加を続けており、中国を筆頭にアジア諸国が中心となっています。しかし、「高度専門職」と同じ「専門的・技術的分野の在留資格」に該当する「技術・人文知識・国際業務」の2020年末の在留外国人数は28万3,380人となっており、比較すると「高度専門職」での在留外国人が少ないことがわかります。高度人材ポイント制度の利用が大きく拡大しているとは言えない状況です。
(次に続く)
※本ブログでの、NHKラジオ 「マイあさ!」の「マイ!Biz キャリア&ライフスタイル」コーナー出演番組でお話した内容については、同番組の許可を得て掲載しています。