地方中小企業の外国人採用(1) (NHKラジオ2022年10月27日放送)
みなさん、こんにちは。今年もよろしくお願いします。しばらく更新できていませんでしたが、今回も、NHKラジオのレギュラー出演番組 「マイあさ!」の「マイ!Biz キャリア&ライフスタイル」コーナーで田中孝宜キャスターとお話した内容を、こぼれ話を含めてお伝えしたいと思います。
今回のテーマは「地方中小企業の外国人採用」です。
田中キャスター:九門さんは外国人留学生の日本企業への就職支援も行っていますが、地方の中小企業への就職に関してはどのようにご覧になっていますか。
九門:あまり進んでいない状況です。日本人を含めて、地方では人手不足の状況が続いています。一方で、外国人留学生をはじめ、いわゆる高度人材と呼ばれる外国人は都市部に集中しています。「専門的・技術的分野の在留資格」を持つ外国人材は、厚生労働省の統計によると、2021年10月末時点で39万4509人となっていますが、うち、約75%は、都市部にいるのが現状です。
田中キャスター:人手不足の状況が続いているということですが、地方の中小企業は外国人の採用についてはどのように考えているのでしょうか。
九門:今地方で、ニーズが高い職種の1つは、IT人材を含めた理系技術者です。業種としては、建築や建設関連があげられます。施工管理、土木系は全国的に日本人学生が少ないですし、現場でマネジメントができて技術もわかる人材が不足しています。機械、電子関連などものづくり系のエンジニアニーズも高いです。しかし、ニーズはあっても、まだ外国人採用への心理的な壁があり、まず1人目を採用するところがハードルになっています。
田中キャスター:外国人採用がうまくいっていない理由について、企業側が外国人に高い日本語能力や日本的な振る舞いを求めることも一つの原因というお話は、これまでもうかがってきましたが、とくに地方の中小企業においてはどのような問題があるとお考えでしょうか。
九門:もともと外国人留学生と日本企業の間にはミスマッチがありますが、特に地方の中小企業で起こっているミスマッチは3つあります。
1つは留学生の大企業志向が強いことと、中小企業の発信不足です。数でみると、日本企業の99%以上は中小企業ですが、留学生との接点が少なく、良い企業があってもあまり知られていません。特に地方企業に多いB2B(企業向け製品・サービス取引)などの事業では、日常生活の中で目に触れることが少ないため、自社の魅力を経営者が率先して発信しないと留学生には伝わりません。
田中キャスター:地方の企業は外国人留学生に対してどんな発信やアピールしていくべきでしょうか。
九門:外国人材向けにインターンシップを実施したり、企業説明会を行うべきです。日本人の場合は、企業説明会に行ったり企業分析を行う中で、特定のある分野で世界のトップシェアを持っている中小企業があることなどを知り、関心も持つこともあります。そうしたプロセスが留学生には抜けていることが多いです。
田中キャスター:地方の中小企業の外国人採用でのミスマッチ、2つ目は何でしょうか。
九門:2つ目は、企業の外国人材に対する認識不足です。いまだに、外国人材と言えば、工場で安く働いてくれるワーカーのことと考える人も多いです。実際そうした労働者が必要な業務もありますが、地方の大学や大学院を卒業した優秀な留学生は全く違う発想で採用する必要があります。これについては、特に経営層の理解を深める必要がありますし、経営層が理解していても現場にまでうまくその必要性をコミュニケーションできていないケースも多くみられます。
(次回に続く)
※本ブログでの、NHKラジオ 「マイあさ!」の「マイ!Biz キャリア&ライフスタイル」コーナー出演番組でお話した内容については、同番組の許可を得て掲載しています。