外国人留学生の意義(1)NHKラジオ(2022年5月12日放送)
みなさん、こんにちは。今回はNHKラジオのレギュラー出演番組 「マイあさ!」の「マイ!Biz キャリア&ライフスタイル」コーナーで田中孝宜キャスターとお話した内容を、こぼれ話を含めてお伝えしたいと思います。
今回のテーマは「外国人留学生の意義」です。
田中キャスター:九門さん、おはようございます。九門さんは普段大学で、海外から日本にやってくる外国人留学生に向けて講義を行っていらっしゃいますが、留学生が戻ってきている実感はありますか。
九門:入国制限緩和の影響で、かなり入国できている学生が増えた印象です。しかし、飛行機が混み合っていてチケットを取るのが大変などまだ混乱は続いている様子です。また、中国は上海がロックダウンしているなど母国の政策の影響で出国できない者もいます。大学生の場合、まず日本語学校学校に1年~2年程度在籍して大学に入学というケースが多いので、今年度か来年度から大学への留学生数が減少する影響が一層出てくると思われます。
コロナ禍の留学生への影響は多岐に渡る
田中キャスター:実際にコロナ禍で、来日ができない時期、留学生はどのような状況だったのでしょうか。
九門:留学生の中には、この2年間、母国からオンライン授業を受けている者が多くいました。それにより時差による科目選択や活動の制限もありました。アメリカやドイツなど欧米出身の留学生の場合は、日本の早朝の時間帯にとりたい科目があっても、時差の関係で難しく科目の選択肢が制限されてしまいます。実際今も、アメリカから受講している学生は夜中の3時に授業を受けています。また、論文の指導教官を選ぶ際にも会ったことがない先生を選ぶのに苦労していました。
田中キャスター:外国にいながらのオンライン授業は苦労も大きいでしょうね。こうした留学生への入国制限は、日本の社会や経済にとっても影響がありますか。
九門:大きな影響があります。一番の大きな問題は就職の問題です。就職の面では、1)企業のコロナ下での採用減少、2)留学生の就職活動が困難になった、の2つの側面があります。企業側も、最終的に入国できるかわからない留学生や海外人材に内定を出すことは少ない状況です。また就職活動については、実際に日本国内への入国が難しい状況だったため、オンラインで情報収集や活動を行わなければならなくなりました。しかし、アジアの留学生からは、「日本での就職活動のプロセスがよくわかりません。その上、日本で行われている就職に関するセミナーやイベントの情報を得るのがとても難しいです」という話がありました。また、中には「日本で就職を考えていましたが、入国が難しいので母国にある日系企業でインターンシップをしたいと思います」という中国人留学生もいました。
田中キャスター:実際に日本企業の外国人留学生の採用は減少しているのでしょうか。
九門:人材会社ディスコの「外国人留学生/高度外国人材の採用に関する企業調査」によると、高度外国人材雇用企業のうち、2021年度に外国人留学生を採用した企業は、全体の22.6%となりました。過去5カ年を振り返ると、採用実績のある企業の割合は、2020年度までは35%前後が続いていましたが、2021年度で10 ポイント以上減少しました。しかし、スタートアップ企業などでは社内の外国人社員の紹介で優秀な留学生や外国人社員が入社するという好循環を生み出している企業もあり、今回のコロナ禍の状況は企業にとって優秀な外国人材採用の機会でもあるという認識を持つことも必要です。
次回は、コロナ下での留学生の声や今後の日本への影響などについてお話しています。