地方中小企業の外国人採用(2) (NHKラジオ2022年10月27日放送)
みなさん、こんにちは。今回も、NHKラジオのレギュラー出演番組 「マイあさ!」の「マイ!Biz キャリア&ライフスタイル」コーナーで田中孝宜キャスターとお話した内容を、こぼれ話を含めてお伝えしたいと思います。
今回のテーマは前回に続き「地方中小企業の外国人採用」です。
田中キャスター:前回からお話頂いている地方の中小企業の外国人採用でのミスマッチ、3つ目は何でしょうか。
九門:3つ目は、企業は終身雇用の感覚でできるだけ長く働いてもらいたいのが実情ですが、留学生は3年~5年を1つのファーストキャリアと考えている人が多いことです。地方で中小企業の経営者や人事担当の方と話をしていると、「採用しても3~5年で辞めてしまうのが悩みです」という話をよく聞きます。その理由について、ある企業で入社後の様子を聞いてみると、工場の生産現場で働くエンジニアは、「半年程度は研修見習いで、一人前になるには10年程度かかる」という話でした。さすがにそれは長すぎると感じて辞めてしまう人が多いようです。
加えて最初の半年、1年はその企業に合わせた技術を学ぶことも多く、もし転職した場合でも他社でその技術を使うことが難しいです。
田中キャスター:働き方や、人材育成について根本から変わっていかなければグローバルな人材を採用することは難しいということですね。
九門:最初は経営者や経営層がその人のキャリアに対して関わり、この先社内で成長できるビジョンを語ったり、本人の意向と会社が期待する役割のすり合わせやフィードバックを丁寧に行うことです。将来的に仕組化していくのが望ましいですが、まずはトップや役員がこうした姿勢をトップダウンで示すことで外国人材のモチベーションも高まります。また、そもそも終身雇用という発想ではなく、会社で働く何年間かをお互いどう意義あるものにするかを話し合っていくことが大事です。
田中キャスター:実際に地方企業で外国人の採用がうまくいっている事例はありますか。
九門:ある自動車工場の関連企業では全社員の14%が高度外国人材です。もともと海外に事業所もありましたが、リーマンショックをきっかけに、外国人、シニア、女性などダイバーシティ経営に取り組みはじめました。グローバル展開という目標を定めることで日本人社員の意識も変わりました。教育事業では女性の活躍支援として日本人や外国人の子どもを受け入れる企業主導型保育園を開園しています。
また、別のある企業では、社長が元留学生の外国人材を入社3年で管理職に登用したこともあります。社長直属の新規開発の中心メンバーにすえて、その上で積極的に新規事業に携わってもらったのです。そうした優秀な人材の抜擢や外国人材をイノベーションにつなげるような取り組みは、最初はやはり経営者だからこそできることです。よく外国人材には「ガラスの天井」があってなかなか昇進できないという話も聞きますが、トップダウンでそうした慣行を変えていっている点は非常に評価できます。採用の際にも、具体的に期待している業務について話し合いをして、入社後のキャリアのモデルを見せていくことが大事です。
田中キャスター:こうした成功例から地方の中小企業が学べることは何でしょうか。
九門:まず、外国人の採用目的の明確化と共有が必要です。日本人の代替としてなのか、外国人としての資質や能力を発揮してほしいためなのかが曖昧になっているケースが多くみられます。そして、経営者が「これからは海外展開に向けて外国人材を採用しなければ」と言って採用しても、現場はどうして外国人材が入社したのかわからないというケースも多いため、社内で採用目的や入社後の業務について情報共有する必要があります。そして今は、キャリア自律と言われるように、自分である程度キャリアを創っていけるようにサポートすることが大事です。配属や異動を人事部が完全に決めるのではなく、継続的に本人の意向と会社の期待のすり合わせをする場を設定し、社内公募のように本人の希望に応じた配属や本人と合意の上での異動を行うことが大事です。
田中キャスター:円安が進む中で、それでも日本で働いてみたい、という人材が増えていくといいですね。九門さんありがとうございました。