❨293❩1972.6.20 火 曇 16カ国目 ブラジル入国/パラグアイ開拓地とイグアスの滝(Paraguay→Foz Do Iguasu:Brazil)
今朝も霧が深く寒かった。
卵焼き・紅茶・パンで朝食。出がけに事務所に挨拶に寄ったが、奥の方で3~4人ストーブにあたったまま、俺の言葉を聞いていた。
「どっちへ行くの」こんな言葉が返って来た。
情けないと思った。自分がではなく、この人達が。
もし俺がこの事務所に居る人間なら、寒い朝 だけにお茶の一杯ぐらいは、とすすめただろう。
そして玄関までくらいは出て来て、さようならを言っただろう。
こんな事を考える俺が悪いのかも知れないが、今まで会ってきた、この中・南米の貧しい人達は、俺の貧しそうな生活を見て、自分達のパンを分け与えてくれた。それだけの心のゆとりが、あの人達にはあった。
それがどうして、ここの日本人にはないのだ。
物も何も要らない、俺は、少しでも気持ちが欲しかった。
ガソリンスタンドで、長崎から来ているというおばさんとしばらく話した。
成程、開拓という仕事は容易な事ではないと分かった。
手斧で、あの大木を一本一本切り倒して行くのだ。そして自分の土地を切り開き、農業を始める。
ここへ来る途中にも、伐採して、焼いたばかりの土地を見た。人間と自然との戦いの後のような気がした。
兎に角、ここの人達の生活が、どんなものであるか想像出来たが、やはりペダルは重かった。
やけに斧で木を打つ音が、耳に響いた。
一時半頃、国境の大きな橋を渡った。
ブラジルへ入った。荷物チェックもフリー。
5~6kmの地点に、Foz Do Iguasuの町。
非常に賑やか、様々な髪の色、皮フの色の人間が歩いている。
言葉がまた分からなくなった。
そこから25kmの所に滝があるというので、急いだ。
あと10kmという所で National Parqueの為、自転車は入れないという事で、車に乗せてもらって行く。
見た。俺は見たゾ!すごいすごい滝。
あれが、世界最大の滝。成程、成程。
豪快な音、水の流れ、水は茶色だが、落ちる時白いしぶきとなり、混って遠くから見ると、その色がまたスバラシイ。
二段になっており、二段目には中央まで橋がかかっていた。
夕暮れで、誰もいなかったが、ビショ濡れになってまで、先端まで行ってみた。