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❨575❩1973.3.28.水.晴/バカブンドの旅/カラカス:ベネズエラ(Caracas:Venezuela)
センターへ出る。30ドル、替える。
バスの時間を聞くと、今夜9時、マラカイボ行きのがあった。
駅まで藤本さんに送ってもらう。
ずい分長い事、世話になってしまった。
最後の食事を一緒にし、断わるにもかかわらず、マラカイボまでの切符(30BS)まで買ってもらってしまった。親切がひとしお身にしみる。
別れの時、人というものの価値が痛い程によく分かる。全く俺は、ラッキーな男だ。
カラカスの山の灯が、淋しく見えた。
何の取り柄もない所だったけれど、一ヶ月もいるとやっぱり名残は惜しく感じられる。
夜9:30発。寂しくカラカスの灯を見ながら、バスは町を出た。
気持ちの良い夜風を受け、バスは快適に走った。 乗客は少なし。
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首都 カラカス
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もう一ペソ…もう一ペソ負けろ、セニョール!
こんな言葉がしみついた。五ペソ(75円)のメシにしようか、六ペソ(90円)こんな小さな迷いが、日常になってしまった。
これが、もうたまらなく楽しいのだ。
金と一つの言葉をフルに活用して、自分の生活を創ってゆく。貧しさとか、金持ちとかいう言葉など必要ない。
バカブンドの旅の味が、この中がこの中にある。
食いたいものを食う事も、立派なホテルに泊まることも、やろうと思えばやれるサ。
しかし俺は、軒先を、野原を選ぶパンとスープで我慢する。
美れいなベッドより、ウマイ料理よりもっとスバラシイものが、我慢の中より得られる事を知っているから・・・・・
それが苦しくないとは云わない。
でも苦しいとも云いたくない。
これから先、いつまでもこんな気持ちを、バカブンドの心を覚えていたい。
バカブンドにはなれないけれど・・・・・