❨421❩1972.10.26.木.晴/フォルタレザの強盗/フォルタレザ:ブラジル(Mossoro→Fortaleza:Brazil)
フォルタレザ·イン。
日の出と共に、夜の涼しさは吹っ飛んでしまう。じっとしているだけで体力が消耗していく様だ。
一刻も早く、この赤道に近い土地から立ち去りたい。
午前10時、オニ·ブス(バス)に乗る。
フォルタレザまで240km、11コントで座席指定。誠に楽な旅となった。
1時、フォルタレザに着いた。街は割といい感じだ。海辺へ行く。
海岸に沿って、汚ないバラックが並ぶ。
潮の匂いと、その軒先からの人々の生活の匂いが混じって、異様な感じがした。
薄暗い家の影にあちこち、一目で売春婦と知れる女が、疲れ切ったという様子でトロンとした目をしてうずくまっていた。
街を自転車を引いてゆっくり歩く。
その中を歩いて通ると、視線が集まり、子供や大人から時々声がかかる。
彼女や彼等以上に汚れた身なりの自分だから、素直にその雰囲気に溶け込み、親しみさえわいてくる。
ヤバイ所だと思う時は、ある程度覚悟する。
海は、少しにごっていた。ぬるいというより熱いくらいだった。四人の子どもが泳いでいた。
空手の練習と体操を少しする。
ホテルは汚い割に高く、止めにして、公園に寝ることにした。
飲み屋で知り合った酔っぱらいのオッサンの世話で、自転車をAuto(工場)に預ける。
礼に、ピンガとタバコをおごらされた。
公園内の人通りの減るまで、「007」の映画を観て待つ。11:30まで暇がつぶせた。
12時頃、寝袋に入り眠りかけた頃、5、6人のチンピラにいきなり襲われた。
危ないな、と気付いて半身起こした時はもう遅く、座ったまま左右から首にナイフを突き付けられた。
思わず払いかけたが、止めた。
他に人気もなく、どうすることも出来なく、おとなしくした。
どうなるかと思ったら、ボス格の奴が俺の顔をよく見て 「おまえジャポネか?」と来た。
「シィー」 と答えると、急に態度が変わり、ナイフも引いた。
それに「デスクーパ」(スマン)と謝りだしたのには驚いた。
そいつは、夕方、自転車を預けた時、酒とタバコをおごってやったオッサンの息子か何からしかった。
結局、クツは盗られたが、他には何も盗られず、助かった。
後で奴に2クルセイロ(100円)のペンソンへ連れて行かれ、 同室のハンモックで寝る。
公園を出るとき、奴が云うことがいい。
「ここは夜、ムイト、ペリグロソ(大変危ない)。」と・・・・。
どうにも憎めない連中で、ブラジルらしいと、スンナリ仲直りした。
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