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コムデディレクターと「4歳の壁」へのコミュニケーション反省会
この記事は PLAID Design Advent Calendar 2024 21日目の記事です。
はじめに
みなさま、はじめまして。プレイドでコミュニケーションデザインのディレクターをしている ふじいたかし です。
元々「年間300件超の依頼をさばくコムデディレクターの頭の中」と題して考えていたのですが、このテーマだと自分が読みたくはならないかもな…と感じてしまいました。そこで、私自身が最も関心を持っている子育ての経験、特に「4歳の壁」と、仕事における気づきを結びつけてお伝えしたいと思います。
わたしは
私はWeb制作会社でフロントエンドエンジニアを数年経験したのち、ディレクター職へ転身しました。前職のLINE Growth Technology株式会社(現LINEヤフー株式会社)では、テクニカルWebディレクターとして企画の開発面をサポートする業務に5年間従事。2024年1月からプレイドに参画しています。
プライベートでは犬1匹と2人の子どもの父親として過ごす中、現在「4歳の壁」に直面しています。
コムデとは
主題に入る前に、プレイドのコミュニケーションデザイン(以下、コムデ)についてご説明します。コムデでは、プロダクト以外のステークホルダーの接点に関わる制作物を担当しています。
具体的には以下のような制作物を手がけています:
コーポレートサイトやサービスサイトなどのWebサイト制作
ホワイトペーパーなどの資料作成
資料やオウンドメディアなどで使用する画像や概念図、アーキテクチャ図の制作
展示会用のチラシやノベルティの制作
イベントの体験設計から会場の造作まで
このように、幅広い制作物を取り扱っています。
コムデのディレクターとは
その中でコムデのディレクターは何をしているのか、と言いますとデザイン業務以外のすべてを拾うことを生業にしています。具体的な業務内容は以下の通りです:
依頼の一次受けから案件内容のヒアリング
要点整理と要件定義
人員のアサイン
プロジェクトを進める上でのコミュニケーション
サイト改修で簡単なコードを書く
採用業務
他にも組織マネジメント業務っぽいことに参画したり業務プロセスの整備なども行っています。ここからは、このような業務を行う中で気づいた「4歳の壁」との共通点についてお話ししたいと思います。
「4歳の壁」とは
「4歳の壁」そう呼ばれるものがあることを初めに妻から聞きました。具体的な科学的定義は確立されていないものの、育児関連の様々な記事や書籍で言及されている現象です。
私なりにまとめると、できることが増えてきたが故に、できることとできないことのアンビバレンツな状態にストレスを感じ、そのストレスを表現する術も少ないので泣いたり怒ったり甘えたりとしてしまう現象だそう。そして、親側は彼らに対してどうすればいいか分からなくなりこちらもストレスフルな状態になってしまう……という時期を示した言葉です。
このような4歳児とのコミュニケーションと、ディレクターとして意識しているコミュニケーションには、興味深い共通点があると気づきました。以下では、意思疎通を円滑にするために私が実践している3つの手法についてご紹介します。
「4歳の壁」を一緒に登ろう
テキストではない方法で伝える
我が家の4歳児はこれまでよりもずっと上手に会話ができるようになりました。しかし、抽象的な概念が理解できないため、こちらの意図が正確に伝わることはほとんどありません。大人同士のコミュニケーションがいかに抽象的な概念の共有に依存しているかを、日々痛感しています。
例えば時間や日付の概念ですら難しく、「昨日」を「昔」という意味で使い、逆に「昔」を「昨日」の意味で使うことがあります。このような場合、カレンダーを使って「今日がここで、昨日は一つ前だよ。寝たら一つ次に進むんだよ」と、物理的な空間を用いて説明する必要があります。テキストや口頭での説明では伝わった気になっているケースの存在を反省しました。
この経験から、仕事でiPadのフリーボードアプリを活用するようになりました。テキストだけでは不十分な案件に対して、意図やレイアウトをビジュアルで表現することで、より正確な伝達が可能になります。子どもとのコミュニケーションでこの方法の有効性に気づき、業務にも取り入れることにしました。
テキストでプロットを作ったあとに、以下のようなレイアウトを描いています。
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この手法を同僚に話したところ、幼稚園や保育園でも同様の方法が実践されているそうです。掲示物にテキストと絵を組み合わせることで、情報を相互に補完し合う効果があるとのことでした。この話を聞いて、テキストとビジュアルの両面を提示することで齟齬のない情報伝達が生まれる実感が改めて腑に落ちました。
完成形から逆算する
我が家の4歳児の我が子は不安がります。将来への漠然とした不安だけでなく、初めての経験に対しても「できない」と泣き出してしまいます。そんな彼も折り紙については説明書を見ながら上手に折ることができます。それは完成形が目に見える形で示されており、各工程の意味が理解しやすいからです。料理のお手伝いでも、最終的な料理の姿を見せてから具体的な作業をお願いすることで、より積極的に参加するようになりました。
この経験は、コムデのディレクター業務にも通じています。年間300件を超える依頼を効率的に処理するには、最終成果物のイメージを明確にすることが重要です。限られた人数で多くの案件を処理するため、完成形が見えた段階でテキストによる整理を行い、必要に応じて先述のようなビジュアル化も行います。想定した完成形が途中で変更になっても、テキストや手描きスケッチであれば素早く修正が可能です。また、完成形についての共通認識があることで、プロジェクト全体の安心感も大きく異なってきます。
特に複雑な案件や規模の大きな制作物については、この完成形のイメージ共有と前工程の充実に力を入れることで、依頼者との信頼関係を築きながらディレクションを進めています。
パートナーと密に相談しよう
我が家ではこの「4歳の壁」への対処として、イライラを感じた際には必ず状況をパートナーと共有し、話をするようにしています。子どもの行動をコントロールできなかったり、意思疎通がうまくいかなかったりすると、親も強いもどかしさとストレスを感じます。そのような感情を一人で抱え込まずに、パートナーや同じ境遇の同僚に相談することで、心理的な負担を軽減できています。
この経験は、仕事の進め方にも影響を与えています。ディレクターは単独で業務を完結できる職種ではありません。デザイナーにタスクを依頼した後は、進行状況が見えづらくなったり、進捗の確認がしにくくなったりすることがあります。その結果、不安やストレスを感じることも少なくありません。
このような状況を改善するため、日頃からパートナーであるデザイナーと密なコミュニケーションを心がけています。お互いが相談しやすい関係を築き、協力しながら業務を進めることで、よりスムーズなプロジェクト運営が可能になると考えています。
おわりに
私の仕事は、デザイナーと比べてアウトプットが見えにくく、間接業務も多い特徴があります。そんな中で、仕事とプライベートでの気づきを結びつけながら、この記事を作成しました。
すでに「4歳の壁」を経験された方々にとっては、共感できる部分があったのではないでしょうか。また、これからこの時期を迎える方々にとって、この記事が少しでもお役に立てば幸いです。
次の PLAID Design Advent Calendar 2024 22日目は、Kiccyさんによる、「育休復帰したデザイナーが考えたファミリーデイのデザイン」です。私たちもファミリーデイに参加しましたが、子どもはとても楽しんでいました!
P.S.
最後に今年聞いたSpotifyのプレイリストを置いておきます。本当は2024年に聞いていた曲の感想を20個でも書こうかと思ったのですが、流石にやめておきました。