退職エントリ(上司が) - 上司から学んだ最高なチームの作り方
昨年末、退職した。
会社の上司、ムロヤ氏(@rmuroya)がである。
良い機会なので、約2年半で彼から学んだことをまとめてみようと思う。
その前に一緒に働くことになった経緯についてちょっとだけ触れる。
引きこもり中に誘われた
大学4年の冬、大好きなインターン先にWebマーケ担当者として内定を頂いたのだが、紆余曲折あり働く自信を失い、引きこもりのような生活を送っていた。
社会人生活直前の2月になっても見通しは立たない。
さすがにヤバみを感じるさなか、以前NPOマーケティングの勉強会で知り合ったムロヤ氏が頭に浮かんだ。
Webマーケについての知識の深さと広さに圧倒されたことと、なによりオタクのように楽しそうに話していたことが超絶印象に残っていた。
Webマーケターとして働いてるこの人に相談すれば何か踏み出す一歩になるのでは?
と思いキャリアについて相談することにしてみた。
新宿のカフェで会い、引きこもってる状況を伝えてみると
「うちの会社来ちゃいなよ」
引きこもりで経験もない学生を拾うというのだから、不思議だった。
会社を見学させてもらうことになり、
経営陣、社員の優秀さと人柄の良さに魅力を感じ、働かせてもらうことが決定。
時は既に入社直前の3月。
そんな感じで彼の部下としての社会人生活が始まった。
なにを学んだか
入社すぐに立ち上げたばかりの職種特化型人材紹介サービスのWebマーケティング担当を任せてもらうことになった。
求職者のリード獲得数を最大化することがミッションだ。
主な業務は
・広告担当、CRM担当、ライター、デザイナー、エンジニアと連携してサービス全体をグロースさせるディレクション業務
・WebサービスのUI/UX改善
・データベース型サイトのテクニカルSEO
・オウンドメディアのコンテンツSEO
である。
こういった仕事を上司と一緒に進めていくなかで、特にチーム作りやマネジメントについて彼のやり方から多くのことを学んだ。
その一部を紹介する。
メンバーの心理的安全性を確保する
成果物や提案をチームメンバーから受け取ったとき、「はっ、こいつアホ過ぎ」と思っても決して否定をしてはいけない。
まずは相手がやってくれたこと自体を受け止め、感謝を伝えてから、「更に改善するには」というスタンスでフィードバックをする。
一度肯定されることで、相手はポジティブな気持ちで受け止めることができるのでフィードバックする人の感情(怒っているのではないかみたいな)を過度に気にせず、フィードバックの内容自体に集中できる。
また、心理的安全性が確保された状態になるとメンバーが意見を戸惑わずに発言するようになり、アイディアの源泉が湧きまくる。
例えばムロヤ氏企画で、マーケのメンバーが各自の成功事例をドヤ顔で共有する会を月イチ程度で開催していた。
この会では、批判や反論をすべて禁止(※マウンティングドヤはおk)しているので皆思う存分ドヤ顔をしながら自由に発言ができる環境になっていた。
この会から得た成功の法則とアイディアの種は数知れない。
メンバーに仕事の目的と全体の中での立ち位置を構造的に理解してもらう
担当者レベルだと目の前の実務的なところだけに目がいってしまったり、目的を見失いただの作業屋になってしまうことがよくある。
各担当者に自分の仕事の意義と立ち位置を繰り返し伝えることが必要だ。
・会社の存在意義は何か
・事業のミッションは何か
・事業の中で自部署はどういう役割を持っているのか
・部署の中で自分の担当している業務がどういう意味合いを持っているのか
例えば保育士さん向け人材紹介事業のSEO担当者だとしたら以下のように立ち位置を明確にしてあげる。
・保育士さんの仕事探しと、保育園の採用を支援することで日本の待機児童問題を解決する
・仕事探しをしている保育士さんを集めることがマーケティング部のミッション
・リードの母数を増やすためには許容CPAを上げる必要がある。そのためには無料かつ積み重ねで流入を増やせるSEO施策が重要。
といった具合。
各メンバーが大きな視点から構造的に目的と役割を捉えることで、業務へのモチベーションと他部署との連携が促進される。
得意なことを見出してガンガン任せる
部下やチームメンバーの得意なことを見つけたら、それが長所だということを認識させてあげて、関連する仕事をガンガン任せていくといい。
些細なことであっても、人は周りから自分が先駆者だと認識されていることに気づくと、責任感を持ち、リーダーシップを発揮するようになる。
例えば僕の場合、ケアレスミスが多かったりコミュ力が低いので、単純作業や対人の仕事はあまり向いていない。語彙力もないので文章を書くのも苦手だ。
自分に長所などないとずっと思っていたが、ある日ムロヤ氏が「朝山さんは新しいことに興味を持ってトライしてみるところが良いですね。」と言ってくれた。
それ以降、今までの自分とは比べ物にならないほど能動的に学習し、社内に知見が溜まっていない分野を開拓するようになった。
具体的には
・GAS、Googleデータポータル、Slackなどを使ったデータの可視化、ダッシュボードの自動化
・広告運用とLP・フォームを一気通貫して最適化
・Pythonによる分析、スクレイピング
などなど。
能動的・意欲的に先陣を切って学んだことは、受け身の学習とは比較にならないほど効率的だった。
あと、ドラクエの職業制に例えて、各メンバーが得意技をスプレッドシートに登録するムロヤ氏考案の「大臣制」という制度がある。
登録した分野の情報を他メンバーにシェアしたり、溜まったノウハウを共有する勉強会を開いたりする担当大臣になるのだ。
こういった取組により、各自が得意分野において更に成長し、チーム全体のスキル底上げにも繋がっていった。
インパクトのある言葉を使ってチームに浸透させる
チームにとって大事な考え方をメンバーに意識付け・浸透させることが大事だ。
そのためには社内で使う言葉を工夫するといい。
かっこいい言葉である必要はなく、一度聞いたら記憶に残る、短く簡単なインパクトのある言葉が最適。
例えばマーケターであれば誰もが知ってる元USJの森岡さんは「リアプライ」という考えを推奨している。ゼロからアイディアを考えるのではなく、既出のものを調査して、それを元に仮説を生み出していく手法だ。
リアプライという言い方はかっこいいがあえてうちのチームでは「TTP」と呼んでいる。「徹底的にパクる」の略だ。
この単語はすぐにメンバーに浸透し、「まずは競合を徹底的に調査しよう」という意識付けとして多いに役立っている。
また、先程も紹介した成功事例をドヤ顔で自慢しあう会議は、通称「ドヤ会」と呼ばれる。
皆ドヤ会を楽しみに成功事例を積み重ね、成功のエッセンスを抽出しノウハウ化する習慣がついた。
最後に
紹介したことは彼から学んだことのほんの一部に過ぎない。
自分に自信がなくてくすぶっていた僕だが、一人ひとりの可能性を信じ、認め任せる環境で働けたことで、のびのびと能力を発揮できるようになった。
会社で最も売上に貢献した社員としてMVPに二度表彰してもらうこともできた。
恩人であり、上司であり、同じ目標を追う仲間であったムロヤ氏がいなくなることは寂しいが、学んだマインドを周りの一人ひとりに還元していけるような人間になりたいと思っている。