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2025年、toB向け生成AIプレイヤーはどうなるのか
私は株式会社Bocekという生成AIスタートアップの代表をしています、沖村 昂志(おきむら たかし)と申します。
現在、国内市場には多くの生成AIプレイヤーが存在しています。私もその中の1人です。今回は、そんな生成AIプレイヤーとして最前線を走ってきた私が、
"生成AI" が何故ここまで話題になっているのか
2025年、toB向け生成AIプレイヤーの動向はどうなっていくのか
について、少し俯瞰した目線で業界全体の今後の動向について説明していきたいと思います。
今回は、「生成AI技術がどう進化するのか」という技術的な説明ではなく、「国内toB向け生成AIプレイヤーがどうなっていくのか」について解説しています。
これから生成AIで起業しようとしている方
生成AI市場に着目している投資家の方
生成AIスタートアップで働きたい方
などの方に参考になるかと思います。他記事では解説されていないような目線での解説なので、是非最後まで見ていただけますと幸いです。
何故生成AIはここまで早く広がったのか
ChatGPTは初めて生成AI技術が"民主化"された技術である
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生成AIが最初に話題になったのは、2023年3月8日。OpenAIによるGPT-3.5 Turboがリリースされた時でした。そして、2023年3月14日にGPT-4が公開され、わずかリリース2ヶ月でユーザー数1億人に達しました。
なぜここまでこれらのリリースがここまで大きな話題を呼んだのでしょうか。それはやはり、生成AI技術が初めて民主化した瞬間だったからといえるでしょう。
実は、LLM(大規模言語モデル)技術の研究開発は2023従来より前も行われていましたが、そのほとんどは、論文ベースでの公開にとどまることが多く、エンドユーザーにとっては実際に触れる機会が少ないものでした。
しかし、ChatGPTとして「チャット形式」で無料公開されたこと、そのものが、LLMを専門知識がなくても誰でも直感的に使えるようになったこと自体が、爆発的なユーザー数の拡大を引き起こした原因の1つだと考えています。
従来できないことができる="SNSでの話題性"
そして、ChatGPTのすごいところは、やはりその「SNSでの拡散力」です。生成AI技術は過去技術を振り返っても、連想されて先行事例となる技術がありませんでした。
2017年のAIに対するイメージ調査を見てみると「AI=ペッパー」「AI=Siri」と考えられていたように、当時考えられていたAIと比較すると、ChatGPT自体がAIに対する印象を塗り替えたと言うことができます。
また、AI認知者958名にAIという言葉から連想するキーワードについて自由回答を求めたところ、最も多かったのが「ロボット」288件(30%)。「産業ロボット」から、ルンバのような「お掃除ロボット」、「介護用ロボット」、「災害救助ロボット」など幅広い連想が得られた。
具体的な商品名では、「Pepper(ペッパー)」が最多の99件(10%)、ihone搭載の音声対話型AI「Siri(シリ)」も77件(8%)挙げられている。また、「自動運転」も104件(11%)あり、AI搭載で自動操縦してくれる自動車を連想する人も多いことがうかがえる。
ChatGPTのような汎用性の高いAIが、個人利用でも手軽に使える形で登場した前例がほとんどなかったため、SNSやニュースメディアを通じて「こんなことまでできる」「これから仕事のやり方が変わる」といった話題が瞬く間に拡散しました。
“AIが仕事を奪う”論や倫理的・法的問題の顕在化
生成AIが登場したことで、「クリエイティブ職やホワイトカラーの一部業務が自動化されるのでは」という懸念が急速に広まり、労働市場や教育現場への影響も大きく議論されるようになりました。
また、著作権やプライバシー、AI利用規約などの問題がクローズアップされることにより、社会的な議論や政策対応にまで発展することになりました。こうした報道・議論自体がさらに話題を呼び、ユーザーの関心を集める要因となったと言えます。
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これらの影響もあり、「クリエイティブ職やホワイトカラーの一部業務が自動化されてしまい、働く人は要らなくなってしまうのでは」という、所謂「AIが仕事を奪う論」が広まり、労働市場や教育現場への影響も大きく議論されるようになりました。
生成AIに対する "危機感" や "恐怖訴求" の広がり
個人・企業問わず「このAIの波に乗り遅れると競争力を失うのではないか」という危機感が生まれ、“乗り遅れたくない” という心理が、ユーザー数の拡大に拍車をかけたと考えています。
実際に、今でもなおSNS上でも「リサーチ作業はもう要らない」や「コールセンターは無くなる」と言った "〇〇不要論" を唱えるポストが、多くのフォロワーを持っている人によって拡散されているのを散見されます。
特にITリテラシーの高い人だけでなく、ビジネスパーソンや教育者、学生層など様々な分野の人々が取り入れたことで、ユーザー層が爆発的に広がる結果となったと私は考えます。
2025年、toB生成AI市場はどうなっていくのか
ここまで、国内において何故生成AIがここまで話題になっているのかについて解説してきました。次に、生成AI市場は2025年どうなっていくのかについて私なりの考えを書いていきたいと思います。
以下のような形で、プレイヤーは分化していくと見ています。もちろん、グラデーションは存在するので、一概にMECEに分けれるような分け方ではありません。
業界特化(Vertical)型
DX総合支援型
最新技術・情報格差解消型
①業界特化(Vertical)型プレイヤー
業界特化(Vertical)型は、特定の業界(金融、医療、製造、小売、物流、建設など)に深く入り込み、その業界特有の課題を生成AIのソリューションで解決するプレイヤーです。その業界特有のドメイン知識を持つコンサルタントやエンジニアを揃え、業界の課題を深く一気通貫で解決します。
たとえば、製造業向けに画像解析+生成AIで品質検査や作業マニュアル自動生成を行う、医療分野で電子カルテ分析・生成レポーティングを行うなど、GeneralなAIベンダーに比べ、業界のペインを深く理解している点が強みとなります。
これは、ツールを提供するプレイヤー、コンサルティングや受託開発などを展開するプレイヤーでも共通の事象になるかと思います。
②DX総合支援型プレイヤー
DX総合支援型プレイヤーは、生成AI導入からさらに業務フローや組織体制の改革などの幅広いDX全体の課題を支援するプレイヤーです。
結局、生成AIも元を辿れば「DXツールの1つ」であることには変わりないため、今は技術ドリブンでの「生成AIを入れたい」というニーズがありますが、将来的には課題ドリブンでの意思決定にシフトチェンジしていきます。
課題ドリブンの意思決定になると、生成AI以外の技術が解決手段になる、ということが当たり前になります。もちろんそうなった場合には、生成AI技術だけではなく幅広いDXに関する知見が必要になっていきます。
弊社でも、生成AIコンサルティングを強みとしてコンサルティング事業を展開していますが、弊社に寄せられる問い合わせの体感4〜5割は、実は生成AIじゃなくて別の技術に関する問い合わせでした。(OCR技術を使った開発依頼や、CRM導入コンサルの依頼などが多かったです)
生成AIが当たり前になった世界では、生成AIコンサルという言葉自体がシュリンクし、業務改善コンサルやDXコンサル、というカテゴリに吸収される形になります。
③最新技術・情報格差解消型プレイヤー
最新技術・情報格差解消型プレイヤーは、最先端のツールや技術をいち早くキャッチアップし、クライアントへ提供することで、導入支援や開発面で差別化を図るプレイヤーのことを指します。
生成AI領域は、いまだに情報の更新が早く、各社より常に新しいAPIやフレームワークがリリースされています。最新技術をいち早く取り入れ、情報格差や技術格差を埋めることそのものにニーズが生まれ続けます。
最新技術については、「自社で最新技術を開拓するプレイヤー」と「他社の最新技術を提供するプレイヤー」にさらに分かれていくでしょう。
2025年はワークフローとエージェントが台頭する1年になると考えています。弊社では、このワークフロー領域にチャレンジしています。
ワークフローとエージェントの違いや、将来的な可能性については、弊社の執行役員の中原が別記事で分かりやすく説明してくれています。
また、私自身もワークフローとエージェントについては別記事で詳細に取り上げたいと思っていますので、興味がある方は是非私のアカウントをフォローいただけますと幸いです。
他社の最新技術を提供するプレイヤーについては、数多くの生成AIツール・フレームワークの中から「どれが最適か」を提案する、所謂「キュレーター」としての地位を確立していくでしょう。
まとめ
ここまで、toB向けの生成AIプレイヤーの動向について、自分なりの意見を踏まえて解説してきました。総じて言えることとしては、生成AI技術はまだまだ可能性のある市場だと考えています。
先日OpenAIの発表では、ChatGPT o1 Proが発表され、AIエージェントの可能性が示されました。(この記事もChatGPT o1 Proをフル活用して執筆しています)
ChatGPT o1 Proは曖昧なざっくりとした曖昧な回答でも人間が持たない新たなインサイトを生み出してくれます。以下のツイートは、私がo1 Proに対して「人類の祖先がミミズであることを証明して」と命令した際の回答です。
ChatGPT o1 pro mode
— 沖村 昂志 | Bocek CEO (@TakashiOkimura) December 6, 2024
実際に試したが本気で世界がAGIに向かっていることを感じた。 pic.twitter.com/9PZXRQnR0C
中国では先日DeepSeekが発表され、コスト面における生成AI開発の可能性についても着目されました。
生成AI導入という点では、「試験的な生成AI導入」から、「本格的な生成AI活用・浸透」のフェーズに変わりつつあります。今後も生成AI技術の進化によって、生成AIスタートアップの姿は変わり続けるでしょう。
今後、生成AIスタートアップの代表として、自分が普段考えていることを発信していこうと思いますので、是非Xやnoteのフォローをよろしくお願いいたします。
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