フリーランスが弁護士に相談する前に用意するもの ―契約書?見積書?チャット記録?
フリーランス・トラブルが増えているようです。ある調査では、「フリーランス」は、462万人くらいいるといわれています*。業務委託を受けて仕事を行うフリーランスの実に37.7%が、取引先とのトラブルを経験したことがあるらしいです**。
*内閣官房による2020年2月10日~3月6日の調査による。内閣官房日本経済再生総合事務局「フリーランス実態調査結果」25頁(令和2年5月)
**前掲「フリーランス実態調査結果」17頁
しかし、フリーランスは、労働者なのか個人事業主なのかがあいまいであることが多いので、労働者又は事業主を対象とするこれまでの相談窓口では十分な対応ができないことがありました。
「フリーランス・トラブル110番」は、こうした課題に応える事業です。弁護士がフリーランス・トラブルの相談を受けるだけでなく、「和解あっせん」という紛争解決手続をも提供することで、フリーランス・トラブルの相談から解決までワンストップでサポートする事業です。全部無料です。宇賀神も所属する第二東京弁護士会が、厚生労働省の委託を受け、関係省庁(内閣官房、公正取引委員会、厚生労働省、中小企業庁)と連携して行っている事業です。
「フリーランス・トラブル110番」以外にも、場合によっては、他の弁護士に相談したり、既存の相談窓口に相談することが可能であり適切である場合もあるでしょう。
いずれにしても、フリーランスの方々が相談される際には、例えば以下の書類があれば、全てお手元に用意されるととてもスムーズに相談が進むと思います。もちろん、こうした書類がなくても相談はできますから、書類がないからといって相談をためらう必要はありません。
① 契約書
② 発注書、発注請書
③ 見積書
④ 請求書
⑤ 発注者とのメールやチャット(LineやMessangerなど)のやり取り
⑤については、たとえば、報酬不払の場合には、発注者が「後で払う」「もう少し待ってほしい」というような債務の存在を前提とする言動をしている場合には、報酬の発生自体の認識が発注者にもあるわけですから、こちらに有利な事情です。また、ハラスメントが問題となる場合には、ハラスメントにあたる言動があるかどうかを示す直接的な証拠になることがあります。
Lineのようなチャットは時間がたつと消えてしまうので、スクリーンショットをするなどして必ず保管してください。
ハラスメントの話になりましたので付け加えますと、ハラスメント(セクハラ、パワハラ、マタハラなど)が問題になる場合、上記のような証拠が残っていない場合が多いと思います。また、ある1つの行為だけでなく、それなりの期間の間にいろんな出来事があることが多いと思います。そのため、ハラスメントのご相談をする場合には、可能な限り、以下のものも作成した上で相談されることがとても有益です。
⑥ 時系列表
時系列表というのは、出来事が起きた順(古いものから新しいものへ)に出来事を記載した書類です。例えば以下のようなフォーマットを用いることが考えられるので、参考になさってください。
「日時」の欄には、可能な限り細かく特定してください。年、月、日を記載することが望ましいですが、難しい場合は、年、月のみ、それも難しければ、ある年のこの季節(春夏秋冬)とか、何年何月「頃」といった記載でも構いません。
「出来事」の欄には、「誰が」「誰に対して」「何を」「どのように」したのかに注意して記載するようにしましょう。
一番右の「証拠」の列は、例えばメールやチャット、録音などの証拠がある場合に、その証拠が何かを記載するために用いる欄です。なければ空欄で構いません。
様々なご事情で、時系列表を書くことが難しい場合もあると思います。時系列表がなければ相談できないわけではありませんので、準備できなければ無理せず、まずはご相談いただければと思います。
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