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7月8日(月)~7月12日(金)の見通し

■まず初めに流し読み

●フランス総選挙の第一回目が6/30に行われ、欧州議会選挙にて極右政党が台頭したそのままの光景が再現された。マクロン大統領が支持する「与党連合」は大きく得票率を下げ、逆に極右の「国民連合」が大躍進する展開になりつつある。7日(日)に行われる第二回目の投票にて国民連合が多数政党となれば、フランス政治はよりねじれ的な議会となり法案可決などが滞りやすくなるだろう。ただしすでに株式には織り込まれており、まずは第二回目を静観する必要がありそうだ。

●英国総選挙は14年ぶりの政権交代となり、リシ・スナク氏が率いる保守党はライバルの労働党に敗北した。これを受け同氏は首相を辞任、後任を労働党のリーダーであるスターマー氏に譲った。今回の英国選挙は事前予想通りでありポンドなどにも反応は薄く、良くも悪くも株価などには「今まで通り」となりそうだ。

●バイデン大統領の高齢問題が深刻であり後任候補が誰になり得るか?が一部で話題だが、最も候補となり得るカマラ・ハリス氏も支持率が低位で安定してしまっている。加えて敵対候補のトランプ氏は当初懸念されていた刑事訴訟や量刑言い渡しが延期されており、これが本人への選挙活動に追い風を吹かせている。直近は8月の民主党大会がややリスク要因となり得るため注意が必要。

●経済指標はおおむね弱さが目立った。特に雇用統計の失業率4%超えは一つの節目でもあり、FRBが考える年末時点の失業率予測を既に上回ったことで9月のFOMCではそれら見通しを一新する可能性あり。また初回の利下げも9月に行われる公算が引き続き高い。


●今週はCPIやPPI、パウエル議長の半期定例議会証言が予定されている。全体的に控えめな週だがCPIで株価もある程度反応すると思われる。米株は上昇だが大きな買いは入れづらく、10年債利回りは緩やかな下落、ドル円は中立に近い。香港株指数は下落後に反発を見れば買いもあり、日経は41100を上限とした横ばい相場と見る。


■先週の振り返り

●波乱のフランス選挙、安定の英国総選挙

6月30日、欧州議会選挙の結果を受け解散となったフランス国民議会選挙の第一回目が行われました。

その出口調査によれば極右とされる国民連合 (RN) が33%、左派である新人民戦線 (NFP) が28%強となり、マクロン大統領の支持する中道左派の与党連合 (ENS) が21%弱となったことで現在の議会における形成が大きく逆転し、6月前半に行われた欧州議会選挙にて右派が台頭した現象がそのままフランス国内でも再現される形となりました。

6/30に行われた選挙での各政党・会派の得票率
極右政党の国民連合が33.25%、左派会派の新人民戦線は28.63%
与党連合に至っては20.94%と大きく落ち込んだ
2024年仏国民議会選挙の主要政党・会派
マクロン大統領が所属する与党連合と国民連合は敵対している
しかし左派・新人民戦線内の「不服従のフランス」とは普段から馬が合わないなど
左派の他政党と合流して対抗しようにも一枚岩では無い
それでも7/7の第二回投票にて極右の国民連合が単独過半数を取らないように
与党連合は各政党と候補者の一本化などで対策をしている
なお結果は7/1の速報時点のもの

そもそもフランス国民議会選挙は「小選挙区二回投票制」であり、海外含むフランス全土の577議席が国民による直接投票で決定されますが、各々の選挙区にて一回目の投票で過半数票を獲得する候補者が現れる場合は確定、そうでない場合は12.5%以上の票を得た候補者が第二回目の投票 (7月7日予定) に進む形となります。

今回577の選挙区にて第一回目の投票で77人が勝利をものにしましたが、実際に獲得した議席数は国民連合にて39議席、新人民戦線が31議席、与党連合に至っては2議席とマクロン大統領にとって居心地の良くない結果となりました。

第二回投票では全議席577 - 第一回で確定した77 = 500の議席を争う形となりますが、1つの選挙区に2名で決選投票 (一騎打ち = runoff) する一般的なケースと異なり、今回は3名以上の候補 (すなわち新人民戦線、与党連合及び国民連合の三つ巴) が96の選挙区で争う異例の選挙戦となっています。

仏国民議会選挙で決選投票が3名以上となったケース
3名以上の選挙区が増えれば国民の意見が分散していることが分かる
1997年、シラク大統領が議会解散を命じた時と
今回は酷似しており、与党連合には逆風となる

時を遡り1997年、当時のジャック・シラク元大統領が議会を解散した際に行われた選挙でも同数程度の「三つ巴選挙区」が発生しました。
これはユーロ圏内において1999年1月よりそれまでの自国通貨フランから共通通貨のユーロへと統合するにあたり国内でも賛否が分かれていたという背景があり、この議論が大きくなる前に消化し議会の任期を延命させる狙いで大統領が議会を解散させたことがありました。

しかし結果としてはシラク元大統領が所属する「共和国連合」が敗北、左翼連合である「社会党」が勝利してしまい、シラク元大統領はかえって自らの首を絞めてしまいました。

今回も「国民の意見が分裂したために3名以上の選挙区が多い」及び「大統領が問題を感じ議会を解散させた」という点において共通しており、7日の第二回投票では与党連合が大幅に議席を減少させることが予測されています。

また今回の選挙はそれまで右肩下がりだった投票率が一気に上昇したことも特徴的でした。

特に前回の選挙では40%台後半の投票率であったのが今回は60%台後半まで上昇しており、欧州議会選挙にて国民の不満がにじみ出たことで関心が集まり、各選挙区にて票が分散してしまったことも3名以上の選挙区が多く発生したことの一因でしょう。

仏国民議会選挙の投票率
2022年までは下落が止まらなかったが
6月の欧州議会選挙を見た多くの国民が選挙に出向いた
このため票の分散が発生し、マクロン大統領率いる
与党連合も苦戦している
出典: 第一生命経済研究所

これにより、与党連合は政権を維持するどころかライバルである極右の国民連合に議会の過半数を取られるのではないか?との心配がにわかに発生しました。
現代のフランス政治制度において、有史以来初の極右政権が誕生する可能性だけは何としても阻止したかった与党連合はライバルの国民連合からなるべく票を奪うため「第二回投票では得票率の低い候補は撤退するように」と促し、当初は300以上あった「三つ巴選挙区」を何とか100以下に減らすことに成功したため現在は国民連合の過半数を取る確率がグッと減っています

ただしこのような「極右政権の誕生を阻止する」手段を講じても、国民連合が議会の多数党になることはほぼ避けられないと思われます。

フランス国民議会選挙の世論調査を行うハリス・インタラクティブによれば、国民連合が220議席以内と過半数には遠く及ばないものの、新人民戦線も183議席以内、マクロン大統領が所属する与党連合に至っては135議席以内の獲得といずれにしても与党連合が大きく弱体化する構図に変わりは無いとされています。

フランス国内の各選挙区における、第一回投票の結果
紺色は国民連合を表すが、国内でもこれだけ多くの地区で
極右候補が得票していることは中々見られない
移民反対・国民保護・反環境を掲げる国民連合へ
期待をかける国民が多いことが良く分かる

マクロン大統領は自らの与党連合が敗北する未来を予測した上で議会を解散させたのか、その真偽のほどは不明です。

しかし第一党が極右の国民連合となれば (通常は) その政党から首相を任命する形となり、大統領と首相の勢力が異なることで法案可決などがスムーズに運ばなくなる事象 (コアビタシオン) が発生する可能性が高まっています。

このコアビタシオンの例として先ほど上で述べたシラク元大統領と社会党のリオネル・ジョスパン元首相の組み合わせが挙げられますが、原則として政策運営において首相の方が強いとされる中でマクロン大統領の動きも制限されると考えられます。

また各政党・会派が議会にて過半数を取れないことにより法案が可決しにくいなど議会機能の停滞 (ハングパーラメント) が発生することにも注意を払う必要がありそうです。

これら複雑な関係でもマクロン大統領は「辞任はしない」と宣言していますが、7日の選挙結果によっては辞任を選択、もしくは低確率ですが1年後に再び国民議会を解散させる選択肢を取る可能性も考えられるでしょう。

翻ってフランスの株価や金利に目を移すと、選挙結果についてはほとんど織り込まれている印象を受けます。
6月前半の欧州議会選挙の結果、及び議会の解散発表にて多少株価がダメージを受けていますが、その後は比較的安定的に推移しています。

フランスの株式・金利・CDS
欧州議会選挙にて極右が台頭した直後に
株価は下落、金利とCDSは跳ね上がった
ただしそれ以降は落ち着いている

今後はマクロン大統領が意外な行動を取ること、すなわち「多数党から首相を選ばない」「辞任をする」「1年後に再び議会を解散させる」などの選択肢を選ぶごとにフランスの株価や金利も随時反応すると考えられます。

仏国民議会選挙の「今後」の例
国民連合が第一党、次点に新人民戦線が来ることはほぼ確実
これを前提とした上でマクロン大統領がどう行動するかがカギとなりそうだ
なお大統領は必ずしも第一党から首相を選ぶ必要は無い

他方、4日には英国にて下院総選挙が行われました。

5月30日にリシ・スナク元首相が議会を解散してからおよそ1か月、与党である保守党 (中道右派) は支持率が20%前半と低位を保ちながらも最大野党である労働党 (中道左派) が40%以上をキープしたまま、勢力図がほぼ変わらずに選挙戦へ突入しました。

英国の下院総選挙はフランスと少し異なり「単純小選挙区制」ですが、今回の選挙では同国の下院650議席を争う形となり過半数の326議席を獲得した政党の党首が新たな「首相」として任命されるものでした。

結果は事前の予想通り労働党が大きくリード、過半数を超える412議席を獲得した一方で保守党は121議席にとどまり実に14年ぶりの政権交代となりました。
このため保守党のリーダーであったスナク氏は首相及び党首を退任することを決定、労働党の党首であるキア・スターマー氏が5日より首相に任命されています。

英国総選挙の結果
上段: 2019年、下段: 2024年 (今回)
2019年は保守党 (青丸) が過半数を取った
今回は労働党 (赤丸) が政権を執る予定だが事前予想通りとなった
保守党は史上最悪の議席数となった

14年間にわたって政権交代が起こらなかった理由の一つとしてブレグジットの議論が盛んにされていた時 (2019年)、労働党がブレグジットの方向性をいまいち示すことが出来なかったために保守党が政権を握り続けていたことが挙げられますが、コロナ禍での首相官邸パーティーや経済停滞、2022年からの強烈なインフレや1か月半で辞任したトラス元首相など問題点が目立っていました。

特に2022年から労働党と支持率が逆転した関係で「次回選挙では保守党から労働党へ政権交代する」という空気が醸成されており、ある意味予定調和的な選挙結果だったと言えそうです。

余談ですが今選挙で政権を勝ち取った労働党は「変化」をマニフェストとしています。

経済の安定はもちろん、不法移民に関しても保守党の強硬的な手段に対し国境警備を増やすことで事前に防ぐことで解決に導こうとしていますが、何よりクリーンエネルギーに消極的な保守党に対し労働党はEUと経済的に仲良くすること、2030年までに電源の脱炭素化を行うなどクリーンエネルギーへの移行をより早めるなど異なる動きを取っており、ここにも英国の独自性を見出すことが出来そうです。

英国・労働党の掲げるマニフェスト
クリーンエナジーの推進はEUと異なる動きであり
ここにも英国の独自性が見られる
出典: ニッセイ基礎研究所
英国が直面する課題
NHSは端的に言えば医療費がタダとなる制度であるが
これが仇となりサービスの供給が滞っている
満足する医療サービスを受けられないと国民にも不評
出典: ニッセイ基礎研究所

やや注意しなければならない点として、今選挙では労働党に期待が集まることよりも保守党に目が余るミスが散見されたことで国民が失望、その代わりとして票が流れた部分もあるところでしょう。

これより前に労働党が政権を奪還した1997年、当時のトニー・ブレア元首相は「ニューレイバー」を標榜しながら国営企業の民営化や市場経済を重視する指針を発表、それまで支持しなかった層も取り入れることで人気を集めていました。
今選挙ではそのような熱狂は無く、英国新聞の「デイリーメール」にて行われた各党首のイメージ調査では「スターマー氏はつまらない (dull) 」が一番多い回答であったエピソードもありました。

いずれにせよ今回の結果は市場の予想通りであり、英国の代表的な株価指数であるFTSE 100や為替のポンドドル、英国10年金利も含めて特段目立つ動きは見られませんでした。
これらから、英国市場は良くも悪くも「今まで通り」の動きが継続する可能性が高いと考えられます。

英国の株式・金利・CDS
英国は今年初めにスナク首相から「今年後半に選挙を行う」と予告があったためか
全てにおいて落ち着いている
また予定調和的な結果であったため株式やポンドドルにも大きな波は無し

●バイデン大統領の代わりは誰に務まるか?

米国では以前のバイデン大統領 対 トランプ氏のテレビ討論会以降、バイデン大統領の衰えを心配する市場や民主党内の一部から「バイデン大統領退任説」がささやかれています。

すでに「テレビ討論会の勝者は誰か?」というアンケートに対してトランプ大統領と答えた有権者の割合が多かったことは知られていますが、その後も数々のアンケートや人気投票にてトランプ氏がやや優勢な状態が続いています。

好調を維持するトランプ氏に水を差すと懸念された刑事裁判もスケジュール未定や延期が続いており、今月11日に「不倫口止め料裁判」の量刑を言い渡される予定はすでに9月へと延期され、同氏の議会乱入事件の刑事責任も「在任中の公務は免責される」と11月以降に判決が下される予定となっています。
このような懸念点が大統領選挙戦の終了まで延期されることでトランプ氏の選挙活動はより一層弾みがつくと考えられ、バイデン大統領の陣営にとって本人の高齢問題も含め悩みの種となっているのが現状です。

7月3日時点の、米大統領選挙における候補者の支持率
トランプ氏が再びバイデン大統領を上回り始めた
このままいけばほころびが出ない限りトランプ氏が勝利する可能性が高い
またバイデン大統領は退任や後任の指名をするかどうかが注目される

高齢問題の渦中にある当のバイデン大統領本人は現時点で継続して立候補する意向を決めており、本人が「退任する」と認めるまでは民主党から正式に出馬するとされています。

この「正式に出馬」を決める民主党大会が8月19日に開催されますが、もしこの近くで退任すると決定した場合、通常は儀式的な意味合いしかもたない党大会が候補者をその場で選ぶ「党内の選挙戦」となる可能性も0ではなく、退任前から後任を示唆しない限り民主党内でもまとまりのない状況に陥る可能性がありそうです。

米国大統領選挙のスケジュール
現在はすでに民主党よりバイデン大統領、共和党よりトランプ氏が確定
しかしバイデン大統領が退陣すれば、本来は形式的なはずの
民主党大会が立候補者たちの争いの場となる

仮にバイデン大統領が選挙戦から降りた場合、現状で最も可能性のある後任候補はやはり副大統領のカマラ・ハリス氏となりそうです。
バイデン大統領のそばで仕事をした経験もさることながら知名度がありますが、残念ながら国民からの支持は比較的低い状態が続いており、トランプ氏とまともに張り合えるかは疑問が残りそうです。

2024年6月30日時点の、民主党内の人気度
8月に行われる民主党大会における候補者がずらりと並ぶ
最有力はハリス氏だが、今よりもますます結果が読みにくくなる
またいわゆる「無党派」に票が流れることにより
トランプ氏にやや有利に働く可能性がある

そのほか現カリフォルニア州知事のギャビン・ニューサム氏が次点の候補として取り上げられます。
現在はバイデン大統領の代理人として活躍していますが、銃規制や人工妊娠中絶の権利保護などそのスタンスもバイデン大統領と似通っている点が多いと言われています。

更に米国運輸長官のピート・ブティジェッジ氏、バーモント州選出の上院議員であるバーニー・サンダース氏など数名が並びますが、人気投票の偏りからハリス氏又はニューサム氏のいずれかがバイデン大統領の後任候補になる可能性が高いと言えそうです。

このため8月の民主党大会は一種の「リスクイベント」となる可能性があり、特にバイデン大統領が退任を発表した際、7月まで好調を維持した株式市場に予期せぬ変動要因を残すことで「株価調整のきっかけ」として波乱を起こすかもしれないことには留意したいところです。

また少々逸れますが例年、8月に行われる「ジャクソンホール会議」でのFRB・パウエル議長による発言が話題となりますが、当日のトークが悪い方向に解釈されるケースも考えながら立ち回ると良いかもしれません。


●経済の定点観測

先週も様々な経済指標がありました。

まず週前半にISM製造業景況指数、及びISM非製造業 (サービス業) 景況指数が発表されましたが、製造業は予想49.2を下回る48.5、サービス業に至っては予想52.5を大きく下回る48.8でした。

米国 ISM製造業・非製造業景況指数 (6月分)
特に非製造業 (サービス業) は予想よりも大幅に弱く10年金利を下げた
利下げを意識させる内容でS&P 500は最高値を更新

製造業指数の内訳を見ると「新規受注」の項目が45.4から49.3と改善しており、製造業から見れば先行きの景気は底堅いと見られます。

ここでサービス業指数も同じく内訳をみると「新規受注」が54.1から47.3と7ポイント近くも低下しており、更に「事業活動」の項目では11ポイント以上も下がったことで先行きの景気の弱さが意識される結果となりました。
またこの結果を受けて「FRBの利下げを誘発する」とした市場により金利は下落、株価にはプラスとなりました。

ただし以前、製造業指数が弱かった頃にサービス業指数が強かった時のように「先に製造業が景気に反応しサービス業が遅れてくる」と考えれば、製造業の底堅い動きと新規受注の増加は後々サービス業にも反映されてくる、とする見方もできるでしょう。

ISM非製造業景況指数 (6月分) の中身
上から「事業活動」「新規受注」「雇用」「入荷遅延」
事業活動が-11.6ポイントと大幅に鈍化

また先週末の雇用統計も米国金利を低下させる要因の一つでした。

非農業部門雇用者数は市場予想19万人に対し結果は20.6万人、平均時給は前年比で+3.9%、前月比で+0.3%と予想と一致する値でしたが、失業率が4.1%となったことが驚きで迎え入れられました。

米国 失業率 (6月分)

先々月までは4%未満で2年間ほど推移した失業率でしたが先月ついに4%、そして今月には4.1%と着実に失業率が上昇しています。
着実に失業率が上昇することで利下げがより意識され、それが株価にもポジティブな影響を与えていますが、先月のFOMCにて経済見通し (SEP) を発表した際に「年末の失業率は4.0%、2025年末は4.2%」としたこととの相違が拡大しつつあります。

今後のFOMCにてこの経済見通しの修正、及び利下げの具体的な日取りを示唆する可能性が高まってきていますが、利下げのペース次第ではインフレが再燃するという懸念もあり、パウエル議長の手腕が再び試されていく局面が近いうち来ると考えられます。

(参考) 6月FOMCの経済見通し
失業率はすでに4.1%だが、ここから4.0%へ回復させるように利下げをするか
又はこの失業率の見込み自体が「間違い」だとして修正するか
次回経済見通し発表の9月FOMCは重要な会合となる

■今週の見通し

今週は米国の消費者物価指数 (CPI) や生産者物価指数 (PPI) が注目される週になりそうですが、火曜及び水曜日にはFRB・パウエル議長による半期に一度の議会証言が予定されており、銀行の資本規制に対する大幅な見直し、及び何といっても今年における利下げのタイミングなどについて質問がされることになりそうです。

7/8~7/12の主要各国経済指標

週末にはミシガン大学消費者態度指数が発表され、多少株価や金利を変動させる要因となり得るため注意が必要です。

また米国主要企業の決算には木曜に飲料メーカーのペプシコや航空会社のデルタエアラインズ、金曜にJPモルガンなどの金融株が予定されており、夏の決算シーズンが静かに始まる予定です。

米国株式は堅調に推移していますがすでに半導体指数は落ち着いており、現在は出遅れたテクノロジー株や一般消費財株が上値を追い始めています。
この流れは引き続き8月まで続くと見られますが、以前と同様8月後半になるにつれ株価上昇の勢いが鈍る流れが自然だと見ています。


◆ナスダック100 (NDQ)

ナスダック100は再び最高値を更新し、上昇圧力も感じる展開となっています。

ナスダック100

週足のMACDがプラス域へと転換し強気になってから3週間経ちましたが、この強気が年末まで続くと考えるのはやや楽観的な見方と考えています。

(以前からそうですが) むしろ、8月になるにつれ上昇幅は急速に緩やかとなり横ばい相場へ移行、9月~10月にある程度の調整を経てから再び上を目指す形と仮定しておくのが現状最もらしい流れだと思われます。

またこのため、今の上昇は大きく買いを入れるタイミングというよりは「既存のポジションを決済するための上昇」と捉えると良さそうです。

なお長期投資でNISAとして入れている場合、株式指数ETFなどを売却する必要は全くないと見ています。

想定レンジ: 18900~20000


◆S&P 500 (SPX)

こちらも同様、株価は堅調に推移しています。

S&P 500

この上値がどこまで追えるか?に明確な答えは出せませんが、夏前に予測した5600を超えてくる可能性もやや出てきています。

ただし秋口に突入するにつれ値動きが激しく上下し始め今回のサマーラリーの開始地点ほどまでには調整すると見込まれるため、ここから急いで買いを入れる必要は無いと考えています。

また今週から決算シーズンが始まる関係でザラ場での変動に加え、午前5時以降のアフターマーケットで大きく変動することもあるため念のため注意が必要だと思われます。

想定レンジ: 5320~5520


◆米国10年債利回り (US10Y)

米国10年債金利は引き続き、緩やかな下落を見込んでいます。

米国10年債利回り

上値を抑える「下落トレンドライン」から計算すれば、今週の上値は上昇しても4.50%が限度だと考えられます。

加えて、現在はFRBによる「高金利維持政策」が物価と雇用の両方に効いており、特に先週の雇用統計で失業率が4.1%へと上昇したことから10年金利がでたらめに上昇する局面はしばらく来ないと見られます。

ただし金利が下落し続けるとまでは言いづらく、ある一定の水準に達すれば小さく上へ反発する展開を見ています。

また先週の雇用統計にて不況の入りを予測する「サーム・ルール」に触れかけており、今後不況の懸念が市場に広がり10年債金利がスピーディに急落するような場合には株価にもマイナスとなりやすいため注意が必要です。

(金利と株価の関係はこちらもぜひご参照ください)

想定レンジ: 4.03%~4.50%


◆香港ハンセン指数 (HSI)

香港ハンセン指数は引き続き弱さを見せながらも、17200の水準では底堅い展開を見せると考えられます。

香港ハンセン指数

値動き自体は地味ですが、中国経済が不動産不況にあえぎながらも製造業にて底堅い動きをすること、昨年までで十分に調整したことを考えれば、本格上昇かは様子を見る必要がありますが「現在の水準からいえば」買いで上へ追いかける方が良さそうです。

ただし17200の水準まで下落した際、必ず反発することを確認してから買いに向かうことには注意が必要でしょう。

また7月15日より中国共産党による重要会議の一つ「三中全会」が開かれる関係で、景気を上向かせる政策が発表されれば香港ハンセン指数にもポジティブになると考えられます。

想定レンジ: 17200~19000


◆米ドル円 (USDJPY)

米ドル円は先週の米国経済指標、及びそれらに付随する金利の下落から上昇幅が鈍り始めています。

米ドル円

ベースは「上昇圧力が働き続ける」としながらも日本及び米国の長期金利差 (すなわち『米国10年国債利回り - 日本10年国債利回り』) は引き続きドル円を動かし続ける力となるため、今週の米国CPIの弱さから来る米金利低下、それに伴う「円安圧力の打ち消し」には多少注意したいところです。

なお円安ペースとしては緩やかなスピードで進行している関係で為替介入は遠のいたと言え、165円の節目での介入も以前より期待度が下がっていると考えられます。
そのため日米金利差が縮まるたびに円安が止まり、落ち着けば円安が再開する、といったイメージが現状しっくり来ると考えられます。

想定レンジ: 160.0~166.8


◆日経225 (NI225)

日経は前回の最高値である41100をタッチしほんのり押し戻されたところで引けています。

日経225

先週に引き続き、図中点線の三角持ち合いを上に抜けたこと、半導体銘柄が多く半導体サイクル上でも強気が継続していることから日経にはポジティブな姿勢を保ちたいところです。

しかし日経225のクセとして「急速上昇、横ばい休憩、再び上昇…」というパターンが見られること、またサマーラリーも後半になると秋を意識して市場が調整に入りやすいことから、現在は36730~41100の横ばい相場に移行することをメインシナリオとして考えています。

ところで今月1日、日銀短観が発表されました。

これは日銀が全国の企業動向を調べるために行う調査ですが、業況感を掴む業況判断DIでは大企業製造業にて+13と予想及び前回を上回り、自動車メーカーの不正問題があった割には好調をキープしていました。

また大企業非製造業では+33と前月に続き高い水準を保っており、企業による生成AI関連投資などが要因と見られますが、先行きに関しては実質賃金のマイナスが続くこと、それに伴う個人の消費支出が低迷していることなどから非製造業においてやや慎重な見通しが発表されています

事実、1日に発表されたGDP統計の改定値において実質GDPは年率-2.9%へ下方修正され、これに伴う実質個人消費は前期比-0.7%と4四半期連続でのマイナスとなりました。
また5日に発表された家計調査では消費支出の項目において実質ベース (物価変動を除いた値) で前年比-1.8%となり、国内の需要は下り坂を辿る傾向にあるようです。

以上から日本経済及び企業の動向自体は悪くありませんが、ここから円安に頼らず大幅に日本株が成長していくには「日本企業が国外で稼ぐ」ことに引けを取らないほど「国内で需要を高め成長率を上げる」ことが重要であり、現状の経済指標から判断すると連日最高値を更新する、という楽観的な見方は時期尚早かもしれません。

想定レンジ: 39000~41100


◆原油 (CL1!)

原油は引き続きテクニカル分析における中立の形である「三角持ち合い」の中で推移すると考えられます。

ただし三角持ち合いは後半になるに連れ上下どちらかに飛び出しやすく、8月以降何かしらの要因で原油価格が急変する可能性にも留意しなくてはならないでしょう。
原因を今から明確に予測することはできませんが、中東における地政学的な変動などには引き続き注視していく必要がありそうです。

想定レンジ: 70.0~85.0


※当記事はファンダメンタルズにおいて事実の正確さを満たすために尽力していますが、万一事実と異なる点等ございましたらお気軽にご教示ください。
また本稿では分かりやすさを優先するため、金融用語を厳密に使い分けないこともございます。

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