9月4日(月)~9月8日(金)の見通し
※特段断らない限り、すべてのイベントに関する日時は日本時間基準でお話しています。
また、チャートでは単純移動平均線 (Simple Moving Average、以下MA) を用いており、25MA (緑線)、91MA (赤線)、200MA (黄土色線)としています。
チャート内のオシレーターであるRSIの期間は14であり、MACDは短期12と長期26、シグナルは9としています (オシレーターはほとんどのチャートソフトでの初期値を用いています)
主要指数はすべて現物取引のチャートを用いています。
ティッカーシンボルは個別銘柄とETF以外、TradingView内のものを使用しています。
※時間の都合上、9月いっぱいまでは「先週の振り返り」をスキップさせていただきます。
そのため今週も簡易版とさせていただきます。
■今週の見通し
先週の雇用統計を無事に切り抜け、今週は月曜の祝日 (レイバーデー) から始まります。
例年、レイバーデー後は需給が崩れやすく、主に株価がぐずぐずしやすい環境が本格的に始まる時期でもあります。
今週の経済指標は米国にて6日(水)に発表されるサービス業PMI及びISM非製造業指数、7日(木)未明のベージュブックには注意を払いたいところです。
諸外国ではオーストラリアが政策金利の発表、欧州や英国でのサービス業PMIがあります。
オーストラリアでは中国発のデフレから起こり得る将来的な資源価格の下落を見越した利上げストップがあるかどうか、また欧州地域でのサービス業PMIは高金利下でインフレが減速しているかの間接的な指標となり得るため気に掛けておくと良いと思われます。
ここからは2020年のように、仮に上昇をしてもすぐに押し戻されるような相場が待ち構えている可能性が高いです。
しかし時が経てば (10月中旬以降とみています)、再度年末に向けたプチラリーが始まる可能性が現時点では高く、一部で言われている「インフレ再燃」も (FRBが政策金利を高止まりさせ中国が来たるデフレに苦しむ現在の環境では) 一過性で収まると考えられます。
目先の懸念材料は碧桂園 (へきけいえん、Country Garden) のドル建て社債2本、計2250万ドルの利払いを今週5日または6日に出来なければドル建て社債におけるデフォルトが確定することであり、9月のグズグズするスタートのトリガーとなる可能性があります。
同社は様々な負債を抱えていますが、人民元建ての社債償還はギリギリのところで2026年までの延長が決定しており、またすでにドル建て社債の利払いは30日間の猶予を与えられている関係で、これだけの温情措置があってもなお利払いできないのであれば投資家の目は更に厳しくなると思われます。
チャート上でも、特に中国市場 (深セン、上海、香港) は既に下落トレンドの最中であり、その動きを加速させるか注目が集まります。
◆ナスダック100 (NDQ)
レイバーデーを前にし、ナスダック100は一度上昇方向に切り返しています。
しかしここから強気になれるかは疑問であり、さらに来週は消費者物価指数の発表も控えている関係で買いのポジションを抑えながら現金待機、または有利な価格でショートを仕掛ける手法が適していると考えられます。
図中、右肩上がりの白実線は9月11日(月)に最高値 (15940) 付近に到達するため、ここからは14550~15940の横ばい相場と見ています。
15940付近ではショートを仕掛けながら、念のため14600付近で決済するなどすると良いトレードになりそうです (横ばい相場の上限から下限まで移動するプロセスは2~3週間ほどかかると見ています)。
ところで先週、14200付近が今秋の緩やかな下落相場での下限と述べましたが、2022年8月高値である「13750付近」を今秋の緩やかな下落相場の下限と下方修正いたします。
13750付近はこの1か月強ほどは強い買い水準として機能しやすく、また週足は強い上昇トレンドの中にあるため、念のため防御を厚めにしながら下がったところを掬っていく戦略が良いと思われます。
今週の想定レンジ: 14700~15940
◆S&P 500 (SPX)
こちらも同じくグズグズした展開を見ています。
現時点では以前の上昇トレンドライン上に値動きが乗っており再び上昇トレンドに復帰しているかのような動きをしていますが、この動きを過信しすぎるのは危険となりそうです。
また日足の25MA (緑線) が若干下向きとなっており、通常これは下落圧力となりますが、日が経てばこの下向きは解消されるため (今回は) 平均線をあまり気にする必要はなさそうです。
今週の想定レンジ: 4370~4610
◆米国10年債利回り (US10Y)
米国10年債利回りは先週の雇用統計後に上に戻っています。
雇用統計では特に失業率に注目が集まりました。
同指数は2022年3月以来、初めて3.7%以下のレンジを抜けて動き出したこととなり、FRBが昨年以降一貫して「雇用市場が強い」と懸念を示していた部分が初めて解消される兆しが見えたと言えるでしょう。
しかし同時に発表された非農業部門雇用者数が未だ強いこと、同日に発表されたISM製造業景況指数も予想より強いことから金利が再び上昇しています。
週足で見るとプライスアクション (ローソク足の形状から見える相場の強弱) は下ヒゲが出ている状態で強い状態であり、4.35%をウロチョロするようであれば一段高が見えてくると考えられます。
しかし夏枯れ相場が終了し、レイバーデー明けから相場が活況付く今週における値動きが本番とも言えるため、ここは冷静に「4.35%付近を抜ければ一段高、しかし2022年のような2~3%上がる相場はほぼ無く、FRBが政策金利を高止まりさせている間は上値を抑える圧力がじわじわ働く」と考えています。
今週の想定レンジ: 3.87%~4.35%
◆香港ハンセン指数 (HSI)
香港ハンセン指数は先週に引き続き下目線と見ています。
同指数はもちろん中国市場の指数であり、以前より囁かれている通り不動産バブルに端を発する不況が同国に対する投資インセンティブを削いでいます。
上で少し触れた碧桂園ですが、決算は2022年上期・2022年下期・2023年上期の順に6億1200万元の黒字・67億元の赤字・489億元の赤字と指数関数的に損失が膨らんでおり、8月末に格付け機関大手であるムーディーズによってデフォルトまであと1ランクの「Ca」まで格付けを落とされています。
すでに恒大集団 (エバー・グランデ) が米国にて破産申請をしている関係で国外でのインパクトは薄まりそうですが、中国国内ではダメージになると思われます。
また中国では若年層の失業率が高いことが問題となっており、16歳~24歳の失業率は21.3% (6月) と発表されています。(現在は若年失業率の公表が停止されています)
大学等卒業後に地元へ帰る割合は5割弱であり、多くの若者が仕事を見つけられず、またその親も不動産に何らかの形で財産を預けており、同時進行で経済にダメージを与えています。
値動きに視点を移すと、18800・19200・最大19700付近までの「3段階の戻り」を警戒しながら下落を期待するショートが良いと考えられます。
ただし同指数はボラティリティが非常に高いため、ポジション量には注意が必要です。
長期的には15000付近までの下落を見ています。
今週の想定レンジ: 17000~19700
◆米ドル円 (USDJPY)
ドル円は雇用統計後に強烈な下ヒゲを付けて上昇しています。
現在の価格帯 (145.00~147.30) はしばらく横ばいのエネルギーが溜まっており、また先週の重要な雇用統計後に下ヒゲを付けて上昇したこと、日足及び週足の平均線からも上昇を示唆していることから、ここは素直に上昇トレンドの中と見るべきだと考えられます。
上値で一度止まると考えられる水準は149.00付近、及び152.00付近であり、このあたりはドル買い (ロング) ポジションを持っていればある程度決済しても良いと思われます。
その場合、憶測ですが米国10年債利回りもわずかに4.35%を上回り、再び反落する展開になるのではないかと見ています。
今週に限り下値は142.50付近と見ていますが、4円も円高になる程のインパクトを持つニュースが必要でありその水準までの下落確率は高くないと見ています。
なお、低確率であることを断ったうえで152.00をしっかり超える場合、153.60付近、そして160.00付近までの円安を長期的に見る必要が出てくるかもしれません。
今週の想定レンジ: 142.50~149.00
◆日経225 (NI225)
日経は横ばい相場の中にいると考えられます。
しかし週足の上昇トレンドより、現状では買い目線での固定で良いと考えています。
テクニカル的な観点から見て、ポジティブ要因として週足が上昇トレンド・日足が再び上昇トレンドになりかけていることが挙げられます。
日足の25MAよりも値動きが上で止まっており、またその25MA自体も上に向きかけています。
図中の白線は意識されやすい線ですが、今週に限り33100付近で一度止まった後、更なる高みを目指すかどうかがカギとなりそうです。
下値は31800付近と見ており、落ちれば31300での攻防が待っているでしょう。
日本経済と中国経済の関係性ですが、中国経済が1%成長すると他の国々が0.3%成長をするというIMFの調査(記事最後の部分) があり、言い換えれば1%成長率が落ちると他の国々が0.3%分マイナス成長をする (単純的ですが) という関係が存在しています。
加えて2013年に日銀が発表した「世界経済の潮流」において、中国GDPが1%変化すると日本含む主要5か国 (米国、フランス、ドイツ、英国、日本) のGDPがおよそ0.4%変化するという試算が出ています。
おおよそですが中国はこの10年で世界経済に占める (GDPでの) 経済規模が1.6倍~1.7倍となっており、これを換算すれば現在は中国GDPが1%変化すると0.65% (実質換算) 日本の成長率が変化するとも言えます。
現在、日本は徐々に脱中国を進めていると言われていますが、未だ日本経済における中国のプレゼンスは大きく、2023年の実質成長率が+1.3%と政府が発表している中でたった数%でも中国経済が減速すれば痛手は避けられません。
日本株における上昇相場は「欧州や米国の高金利低成長に起因する、一時的な資金の逃避先」の局面も一部ありますが、中国経済と軌を一にする面も多いことには注意が必要と思われます。
今週の想定レンジ: 31800~33500
◆原油 (CL1!)・ゴールド (GOLD)・天然ガス (NG1!)
【原油】は雇用統計後に今までの横ばい相場を抜け、現在は上昇トレンドになりかけています。
計算上では103ドル付近まで行きやすいですが、今週のアクションを見て上昇トレンドが本物かどうかを確認する必要がありそうです。
今週の想定レンジ: 80.00~90.00
【ゴールド】は先週に目標の1950ドル付近に到達、現在はもう一度下値に向かいやすいです。
売り目線でありながら、もし上昇した場合は1985ドルで止まり反落を確認すると良いでしょう。
先週に引き続き、下落した際の当面の目標は1800ドルと見ています。
今週の想定レンジ: 1880~1985
【天然ガス】は横ばい相場 (1.95~3.00) が続いています。
先週に2.86ドルを付け、再び方向感が無いままですが、原油が上方向に動意付けば多少天然ガスにも追い風となりやすいです。
先の中国のデフレ問題は巡り巡って資源国 (オーストラリア等) にダメージを与えやすく、また天然ガス含むコモディティにダメージを与えやすいですが、今年に限りそのような下落圧力は「ショック」として来るよりもじわじわ来ると予想されます。
故に現時点では上にも下にも均衡がとれており、引き続きレンジ相場と考えられます。
今週の想定レンジ: 2.52~3.00