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映画の興行収入上位の作品にはどのような特徴があるのか統計的に分析してみた
この記事は、偏愛とマーケティング研究所のマガジン「偏愛研究レポート」に収録されています。毎週月曜に偏愛とマーケティング研究所メンバーの頭の中が更新されていくので、ぜひご覧ください。
偏愛研究レポートもなんと10回目を超えてきました。
趣味でしかないこのnoteも最近いろんな方に見ていただけているようで「面白かった!」と言っていただける機会もちょっぴり増えました。
引き続き、個人的興味のあるところをアウトプットしていくので楽しみにお待ちください。
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まずはじめに
映画を1本作るのにいくらかかるのかご存知ですか?
実は、平均で約3.5億と言われています。
(CGなどを駆使した大作となると、10億円を超えるものもあり)
映画を作るのには莫大なお金がかかりますが、その分リターンが大きいのも事実。今回は、映画の興行収入上位の作品にはどのような特徴があるのかを2023年の邦画ランキングを使用して統計的に分析していきます。
どのように分析するのか
一般社団法人 日本映画製作者連盟が発表している『2023年(令和5年)全国映画概況』の「2023年(令和5年)興行収入10億円以上番組(邦画)」という資料に記載してあるランキングを使用します。このランキングに記載してある映画の興行収入とさまざまな変数との相関関係を見ていきます。
興行収入と相関関係があるのは何なのか
当たり前のことですが、爆発的に売れる映画もあればそうでない映画もあります。これには一体何が影響しているのでしょうか?
配給会社の資金力?タイトルの付け方?映画のジャンル?
まだまだ色々考えられますが、今回は
主人公が男なのか女なのか
→主人公が男性ものの映画が多い中で実は女性が主人公のものが上位にランキングしやすいなどあるのかも…?タイトル文字数
→タイトルが長ければ長いほど興行収入も上がりやすい等あるのでは?映画ジャンル
→アクション系が上がりやすい!などあるのでは?配給会社の資本金
→配給会社の資金力がある映画が興行収入も大きくなりやすいのでは?
(今回映画の制作費を調べることができなかったのでこちらで代用)配給会社が上場しているかどうか
→上記と同じ理由配給会社の設立年数
→昔からある配給会社の方が経験の差で興行収入も大きくなるのでは?
を見ていきたいと思います。
※映画によっては配給会社が複数ある場合がありますが、こちらの扱いに関しては、ランキングサイトに記載してある配給会社の名前順のうち1番最初に出てくる配給会社を採用しています。
興行収入に対する分析結果
今回は
①各変数間の相関係数を一気に求めて、
②相関の強さによって色の濃さを変えた表にして、
③p<0.05で有意なのか検定まで済ませました。
上記の③の意味が理解できない人は「毎回同じような結果になるのではなく、今回だけたまたま出たやつには×がつく」と考えていただければ理解しやすいかと思います。
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今回の分析の結果としては、興行収入の行に着目すると「ランキング」と「興行収入」以外は全て×がついているか相関係数が小さいのかのどちらかです。つまり、僕が今回仮説として出したものは関係がないor今回参考にした34の映画では分からない(おそらく後者の影響が大きいと思います)ようです。
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今回のランキングがそもそも興行収入ランキングなので、ランキングの値が増えれば増えるほと(1位から順に10位、20位と数値が増えれば増えるほど)興行収入は減っていきます。また、興行収入と興行収入の相関係数が1なのは当たり前です。
まとめておくと、
興行収入に対して、主人公の性別(男なのか女なのか)は関係ない
ただし、興行収入が10億円以下の映画も含めることで関係性が出てくる可能性も十分考えられる。興行収入に対して、タイトルの長さは関係ない
ただし、興行収入が10億円以下の映画も含めることで関係性が出てくる可能性も十分考えられる。興行収入を上げるためには、映画のジャンルは関係ない
ただし、興行収入が10億円以下の映画も含めることで関係性が出てくる可能性も十分考えられる。
また、相関係数0.36を十分に相関関係があるとみなす場合は、映画ジャンルが「アニメ」や「ファミリー」のものが興行収入が上位にいく傾向がある。興行収入に対して、配給会社の資本金は関係ない
ただし、今回のデータ上での最低資本金は2億7000万円であり、興行収入10億円以下の映画に関しては見ていないため、興行収入10億円以下の場合は資本金額が関係することも十分考えられる。興行収入に対して、配給会社が上場しているかどうかは関係ない
ただし、今回ランキングに掲載された配給会社8社のなかで上場企業は3社ある。(東映、東宝、松竹)
また、上場しているのかどうかと資本金は相関があることが予想されるので、こちらの変数はあまり重要ではなかった可能性あり。興行収入に対して、配給会社の設立年数は関係ない
ただし、今回のデータは1895年〜1998年なので1998年以降に設立した会社に関しては設立年数が関係することも十分考えられる。
※今回は2023年の興行収入10億円以上に絞ったことで分析対象となる作品数が34作品でした。そのため上記の図も×が多めであることと、結果が統計的に本当に正しいのかは疑問が残る部分があります。需要があればデータを増やしてもう一度同様の分析を行なってみます。
※あくまで今回調べたのは相関関係であり、因果関係ではないことに注意してください。
興行収入以外の部分を見てみた
今回、興行収入以外でも分析を通して発見があったので以下に残しておきます。(相関係数>=|0.45|のもの)
映画のジャンルが「ファンタジー」のものと主人公が「女性」であることには正の相関がある
確かに考えてみると映画のジャンルがファンタジーのものと主人公が女性であることには正の相関がありそうです。「タイトルの文字数が多い」ことと映画のジャンルが「舞台・音楽」であることには正の相関がある
因果関係としては、「タイトルの文字数が多い⇒舞台・音楽」というより「舞台・音楽⇒タイトルの文字数が多い」になりそうです。映画のジャンルが「舞台・音楽」であることと主な配給会社が上場しているかには負の相関がある
「舞台・音楽」のジャンルで映画を配給する会社は最大手というより、「上場はしていないけどある程度大手」のような会社っぽいですよね。
僕もこれは何となく理解できます。映画のジャンルが「時代劇」であることと、映画のジャンルが「歴史」であることには正の相関がある
そりゃそうだとしか言いようがないです。
最後に
今回は変数に入れませんでしたが、
制作会社の資金力(配給会社ではなく)
制作会社がこれまでに出してきた興行収入10億円以上の作品数
制作費(こちらは今回調べることができなかったので断念したもの)
なんかも入ってきそうですね。
また、今回の分析をもっと拡張していくとなると、
興行収入10億円以上のものだけではなく、10億円以下のものも含める
邦画だけでなく洋画のものも含める
のようなことをやっても面白そうです。
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著者: 納富 崇 / NOTOMI Takashi (X: @takashi_notomi)
偏愛とマーケティング研究所 代表 / データサイエンティスト