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藤巻亮太の歌は、直球ド真ん中の剛速球

2003年6月4日、
ART-SCHOOLのライブを見るために、
私は広島CLUB QUATTROに行った。

JAPAN CIRCUITというイベントで、
出演アーティストは、
ART-SCHOOL、Syrup16g、レミオロメン。
そして広島公演では何故か、
MO'SOME TONEBENDERも参戦。
何と贅沢なライブであろうか!
しかもクアトロというちょうど良い規模の箱で。

まずは、この日の記憶として最も印象に薄いのが、Syrup16gなのだが、
この11年後の2014年、
Syrup16gが再結成し発表したアルバム「Hurt」を聴いて、
私は、Syrup16gにどっぷりハマることとなる。
タイミングとは、ときに残酷である。

さて、
ライブ1番手は、ART-SCHOOL。
ART-SCHOOLのライブ体験は、この日が2度目であった。
1度目は、この年の1月26日、約半年前、
メジャーファーストアルバム「Requiem for innocence」のツアー、
広島CABE-BE。
この1度目の日に買ったTシャツ(胸の位置にART-SCHOOL DIVAと書いてある!)は、約20年後の今も、大切にしている。キーホルダーも買ったな。今も大切にしている。ART-SCHOOLを初期から知っている私の、これは単なる自慢だ。
話を戻して、
クアトロライブ1番手のART-SCHOOL、
「車輪の下」から始まったライブは、最高だった。
実はCABE-BEでのライブが、メンバー間のギスギスが演奏に表れていて、『タイミングの悪いライブを見ちゃったな』と思っていたから、なおさらだったのだが、
メンバー間の相乗効果バリバリの、4人ともエネルギー全開の、何もかも吹っ切れて、「良いライブをする」ということに皆が集中し、一体感のある最高に盛り上がったライブだった。

そもそもこの日は、
ART-SCHOOLを見に来ていたので、
それでもう十分満足だったのだが、
この日の物語は、
ここで終わりではなかった。

この日、
トリを務めたレミオロメンが、
私の心に大きな衝撃を残すことになる。



「レミオロメン」という名前だけは、
雑誌で目にしていたから私は知っていた。
このとき、
レミオロメンは、
まだインディーズで、
シングル「雨上がり」とミニアルバム「フェスタ」だけが世に出ていた状態。
『レミオロメンといえば粉雪!』という現実なんて、まだ微塵も気配がない頃。
そんな状態だったから、
きっとこの日、
トリを務めるということに対し、凄く気合いが入っていたのだろうな、という推測もできる。

ライブが始まって、驚いた。


『何だ!このストレートで純粋な力強さは!』


藤巻亮太の歌が、凄かった。
歌が、声が、歌詞が、
聴き手の心に、バンバン届いてくる。

マイクを通して左右のデッカいスピーカーから、こっちの(聴き手の)耳に入ってきて、そして心に届いているんだけど、
そんな現実は飛び越えて、
藤巻亮太の口から出た言葉が、瞬時に、ダイレクトに、こっちの心に届いている、
そんな感じ…。

ストレート直球ド真ん中の剛速球!

しかも、
クリアにハッキリと聴き取れる。
それだけ明確に藤巻亮太は言葉を発している。
そう思わずにはいられなかった。
ライブ中、
私はずっと、
『うわっ!ブチ飛んでくる!歌がブチ飛んでくる!』
と心で呟いていた。

忘れられない。
圧巻のライブ。


『歌が飛んでくる』感覚でいうと、the pillowsの山中さわおの歌に近い感じかもしれない。
違うのは、山中さわおは、オブラートがなく、より生々しい。
それに対し、藤巻亮太の歌は、輪郭が優しい。配慮した輪郭というか。
いや、山中さわおの歌にだって優しさはある。というか、山中さわおの場合、心意気の内側に優しさがあって、歌うとそれがにじみ出てくるというか…。
まぁそこら辺は今は置いておいて…。


レミオロメンは、
神宮司治のドラムの音にしろ、前田啓介のベースの音にしろ、
やはり、輪郭が優しい。
だけど、
藤巻亮太の歌は、
輪郭の優しさとともに、その中心には、狂気と表裏一体という程の力強さがある。

ライブで感じたあの感じ、言葉にしようとしても、やっぱり完全には言葉にしきれないな。

かくして、
レミオロメンを好きになった私は、
次の日、早速、
「雨上がり」と「フェスタ」のCDを買うために、
軽快なステップで、
タワーレコードに向かったのである。



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