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アシナガバチと暮らす①

アシナガバチからいろいろ教わったひと月だった。

6月の初めころ、庭に出る縁側の庇の下に、蜂が巣を作っていることに奥さんが気づいた。キアシナガバチのようだった。

洗濯物を干したり、毎日その巣の下を行き来する場所だったが、前の家でも同じような場所のコアシナガバチの巣とうまく共存できたので、そのまま様子を見守ることにした。

「女王蜂」と呼ばれる母バチ。冬眠から目覚めたあと、一人で巣を作り卵を産み餌を運び子どもを育てる。最初のほうの子どもが成虫になるまで、ひと月ほどはワンオペ。その間に過労死することもあると、今回初めて知った。全身全霊の子育て。


ネットで「アシナガバチ」と検索すると、まず大量の「駆除するには」という記事がヒットする。見出しに並ぶのは一様に「危険」「被害」「攻撃的」という表現。ちなみに、それらの記事をアップしているのは大部分が駆除業者。


そうした情報のずっと下、埋もれるように、学芸員など研究関係の人たちの書いた情報がポツポツ出てくる。
今度は一様に、「巣に危険を及ぼさない限り攻撃してくることはない」と書いてある。はてさて。

一応、僕の実感になじむのは後者。


もちろん刺されればアナフィラキシーショックが起きる可能性はあり、命に障る場合もあり得る。
意図的ではなくても、気づかずに巣に近づいてしまい、刺されてしまうこともある。

その上で一点、確かなことがある。
蜂が刺してくる意図は、

「来るな!」
「やめろ!」

この二つだけだということだ。
アシナガバチであろうとも、みんなが恐れおののくスズメバチであろうとも。

決して「それブスッとお前を刺してやろうか」でもなく、「どーれ痛めつけてみようかな」でもない。

そんなことを考えかねないヤバい生物は、人間以外にはちょっと思い浮かばない。

アシナガバチであれ、スズメバチであれ、攻撃の意図は「家族を守る。」この一点しかない。
どう対処するにしろ、そのことだけは人は認識しておくべきだと僕は思う。


今年、わが家の庇に巣を作ったキアシナガバチ。図らずも、その後この巣の幼虫たちを僕と奥さんで養うことになった。
初めての経験。分からないことだらけで、大いに苦戦した。そして多くのことを気づかせてもらった。

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