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『夏のアロマティカ』❷ 不確かな告白、確かな感情

中学時代、私はいつも人目を避けるような、控えめで内向的な少女だった。自分の世界に閉じこもりがちで、周囲とのつながりを深く持てずにいた。孤独感が常に心を覆っていたが、高校で彼と出会ったことで、私の世界は一変した。

彼は私の孤独な心に光をもたらしてくれた。彼の存在が、私に新たな感情の扉を開いたのだ。彼が自分の障害について話す時、その強さと前向きさに私は心から共感し、深い感情を抱くようになった。彼は私の内向的な性格を理解し、受け入れてくれた最初の人だった。

「できることなら、あなたの代わりになりたい」と私が言った時、それは彼への深い愛情と共感の表れだった。彼の苦しみを少しでも軽減できたらという思いが、私の心を支配していた。彼へのこの感情は、ただの友情を超えたものだった。

彼との毎日は、私に自信と勇気を与えてくれた。彼の障害に対する強い姿勢は、私にも影響を与え、自分を受け入れ、前向きに生きる力をくれた。彼は私にとって、ただの先輩以上の存在へと変わっていった。

私たちの関係は、次第に深まり、特別なものとなっていった。彼は私の孤独を癒やし、新たな自己を見つける手助けをしてくれた。私の心の中で、彼はかけがえのない人物になっていた。

それが、私が彼を好きになった理由だ。彼は私の世界を変え、私自身を成長させてくれた、大切な人なのだ。

高校時代、私はタロットカードの神秘に魅了されていた。放課後の時間、先輩が他の後輩たちに占いをしているのをよく見ていた。タロットカードを使う理由は、単に興味本位ではなかった。彼は人の心を理解しようとする深い洞察力を持っており、タロットカードは彼にとって人間心理を探るツールだった。彼の占いは、ただの遊びではなく、相談者の心に寄り添う方法として用いられていた。
ある日、私も彼のタロット占いに目を奪われた。彼が占ったのは私ではなかったけれど、カードは思いがけず私の秘めた感情を映し出していた。

占いの結果は、対象者の恋愛ではなく、偶然にも私の抱える恋心を示唆しているようだった。彼は、その意味を理解している私に向けて、「君、誰かを好きなんじゃない?」と問いかけた。その瞬間、部屋は静寂に包まれ、私たち女の子たちは一様に戸惑いを隠せなかった。

私は言葉を失い、しばらくの間、沈黙していた。私の目には驚きと混乱が浮かんでいた。深呼吸をして、ようやく言葉を紡いだ。「…そうかもしれないね。」

私の答えはあいまいだったが、彼には私の心の内が見えたようだった。その答えが彼にどう響いたのか、彼の表情からは読み取れなかった。

その日以降、部活の雰囲気は微妙に変わった。私たちは普段通りに行動していたが、彼との間には以前とは違う何かが漂っていた。

放課後、部室で再び彼と2人きりになった時、私は彼をそっと見つめた。緊張で心が震えていたけれど、何かを伝えなければという思いが勝った。「ねえ、実は…私、少し…君のことを考えるようになっていたんだ」と、私は静かに、しかし確かに告げた。

彼は少し驚いたように見えたが、何も言わずに私の手を優しく握り返した。その小さな動作が、彼の心の中を伝えているようだった。彼の手の温もりを感じながら、私たちの関係が新たな段階へと進んでいくことを感じた。言葉よりも強い、心と心の繋がりがそこにあった。
彼の反応は、私の心を一層高鳴らせた。それは、私たち2人の間に新しい関係が芽生えた瞬間だった。

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