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007 中西りえ『アイツなんて feat.ユッコ・ミラー』(2022年)

作詩:北爪葵 作曲:樋口義高 編曲:ユッコ・ミラー

このジャケを見た時に衝撃を受けた。
なぜ、ユッコ・ミラーが・・・。

ジャズ・ファンやセッション系の現場、もっと言えば、女子ミュージシャン・ファンにとって、ユッコ・ミラーという存在は説明不要だろう。
ピンク色の髪でバカテクで凄まじいアドリブを吹きまくるサックス・プレイヤー。
ビジュアル面でも、テクニカルな面でも、女性ミュージシャンへの偏見をなくし、新しい在り方を提示したその先駆けの一人でもある超実力派だ。そんなユッコの名前が演歌コーナーにあったCDに刻まれているのだから、それは驚くだろう。

この曲の主人公、中西りえは三重県出身の歌手。
現在は都内をベースにしているようだが、今でも中京圏の仕事が多いようだ。
そんな中西とユッコは、高校時代の親友だというから、かなり旧い付き合いだ。
この曲がリリースされた2022年は中西のデビュー10周年で、地元の伊勢市で行われた記念コンサートでも共演を果たしている。

この「アイツなんて」は、メロディラインは80年代後半っぽいベタな歌謡曲風なのだが、ユッコのアレンジは、ちょっとファンキーなロック風。
8ビートにハイハットの裏打ちというイマっぽさを加味しつつも、ベースはルート弾きで落ち着かせ、クール感を演出している。
ピアノにはジャズ風のブルージーなコードを弾かせ、時折、ハードロック風のギターの速弾きフレーズが聴こえる。

途中、ユッコのサックスソロがあったり、ユッコも出演したMVでは、中西がジャケットと同様に白いレスポールを抱え、イントロのフレーズを弾いてみせている。
そのフォームや指使いを見ても、ちゃんと弾ける人のようだ。
もしかして、高校時代、一緒にバンドをやっていたとか?

こういうコラボからの化学反応で、いつもと違うタイプの曲ができあがるのだから面白い。
MVではバックのミュージシャンは若い男のバンドマンが務めているが、どうせならユッコの仲間内のバカテク女性ミュージシャンたちがバックを担当したら面白いのに。

演歌や歌謡曲であっても、決まった枠の中に閉じ込めておくのでは面白くない。
ジャンルを超えた化学反応は大歓迎だ。

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