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47枚目 LAUGHIN' NOSE「MEAT MARKET」(1988年)/謹慎を経て、バンドの音を一変させた問題作にして最高傑作

#jrock #80s #ラフィンノーズ #laughinnose

バンドブームの前にはそれと繋がる形で<インディーズブーム>なるものがありました。メジャーのレコード会社がロックをまだまだ軽く見ていた80年代前半、アンダーグラウンドなシーンでは、確実に(アンチメジャーという形で)ロックは成長していました。それも歪な形で。その勢いはNHKなどでドキュメンタリーが製作されるほどでした。中でもインディーズ御三家と呼ばれたバンドたちの人気は凄まじく、その1つがラフィンノーズでした。彼らの活動は、オーディエンスの在り方も含めて、シーン全体に波紋を投げ掛けていきます。

ラフィンノーズはヴォーカルのチャーミーこと小山祐を中心に81年に結成。ノイズ的なハードコアパンクから出発しつつも、楽曲はどんどんキャッチーさを増し、84年にはインディーズでリリースした1stアルバム「Pussy For Sale」がロングセラーを記録します。また、バンドが自らのレーベルを立ち上げるというのも画期的でした。翌85年には新宿アルタ前のソノシートバラマキ事件など、良くも悪くも多くの話題を提供しました。メジャーデビューに際しては、音楽性がよりポップ化したり、「戦争反対」という曲の歌詞を変えて「1999」としたことなど、"セルアウトした"という批判もありました。しかし、順調な活動を続けていた87年、日比谷野外音楽堂でのライヴの途中で、将棋倒しになったファンが3人死亡するという事故が起きました。これによってバンドは責任を取る形で謹慎。この不幸な事故は、発展期にあった日本のロックコンサートに於ける大きな教訓となりました。チャーミーはその後長きに亘って、事故で亡くなったファンの命日には欠かさずに墓参りに訪れていたといいます。

そんな紆余曲折を経て活動を再開した彼らは、レコード会社を移籍。その時リリースしてアルバムがこの「MEAT MARKET」でした。
生々しくリアリティのあるジャケット写真。妙にシリアスなメンバーの表情。サウンドはダークな色調を帯び、ヘヴィーでメタリックなサウンドからは、これまでの外向きな連帯感を拒否するように内省的で攻撃的なムードを発していました。バンドの中で何かが変わったのは明白でした。ファンの反応も様々で、初期のハードコアに戻ったと好意的な反応もありましたが、メタル化した、ポップじゃなくなったと、批判の方が圧倒的に多かった印象があります。メジャー初期のロンドンパンクなサウンドが好きだったファンの多くが離れていったことは想像に難くありません。しかし、演奏はこれまでにないほどタイトで楽曲の質も高く、音楽的な面から見れば、これが最高傑作であることは紛れもない事実でしょう。しかし、それは今だからこそ客観視できるのかもしれません。

例えば、「Tokio Cambodia」というタイトルが揶揄するもの、「B-29の贈り物」というストレートな歌、「She's The Machine」でのセックス描写など、歌詞のメンタリティは確かに「Hell Home」などのハードコアの時代を思わせるところがありますし、また、英語詞で歌われる「Ballad」は、血液の中を巡るドラッグを人に見立てたような歌で、その発想自体がかなりヤバい領域に達しています。「How To Kill How To Love」はインディーズ時代のリメイク曲ですが、歌詞が書き換えられ、当時のチャーミーの心境だと思われる追い詰められたような言葉が多く見受けられます。もちろん、シングルになった「警告 -WARNING-」や「GYPSY」「TomとJerry」のように純粋にカッコいい曲もありますが、チャーミーのヴォーカルは病的なまでに切羽詰まった感じだったと思えば、急に妙な落ち着きを見せたりして、今考えるとモロに躁鬱な感じで、精神的にかなり追い詰められていたんじゃないかという気がします。

それにしても、東芝EMIはこんなアルバムをよく出したもんです。当時の日本のレコード会社は今に比べればまだまだオープンだったと思いますが、それでもこのアルバムが出た88年には、あのRCサクセションの「カバーズ」事件(「素晴らしすぎて発売できません」ってやつです。しかも、同じ東芝EMI)が起きています。まぁ、歌詞がストレートじゃなかった分、大丈夫だったのかもしれませんが。ただ、このアルバムにまつわる様々な出来事が原因で、後にNAOKIとPONがバンドを離れてしまうことになるのは皮肉です。

【収録曲】

Side A
1. 警告 -WARNING-
2. GYPSY
3. She′s The Machine
4. Tokio Cambodia
5. TomとJerry

Side B
1. How To Kill How To Love
2. B-29の贈り物
3. Psycho Maniac
4. Ballad
5. Silent Day(Its Primal Form)


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