サルでもわかるNISA講座 その8「自分がオールカントリーを買わない理由」
「オールカントリー」ってのは全世界の株式に分散投資する投資信託。響きがいいよね。これを買ったら「世界は俺のもの」みたいな全能感がみなぎる的なw でも自分だったら買わないかなあ。以下がその理由。但し、「買うべきではない」とまで強く主張するつもりはなく、どう考えているかをご自身の投資の参考にしてもらえばいいな。
まず株を買う理由は、人類は発展する動物であることを信じているから。人は誰しもよりよい明日を目指していて、それが世のため人のためなのか自分自身のためなのかベクトルの方向はいろいろだけど、「今日よりも明日がよくありますように」という願望を持って生きている人が大多数だと想像する。それを原動力として社会は発展してきたというのが人類の歴史。それに伴って経済活動も規模を拡大してきて、それを企業価値という形で表象しているのが株式市場。だから、人類の健全な成長を妨げることがなければ、この先も株式市場の長期的なトレンドは右肩上がりなんだろうと思ってる。
長期的な投資において避けたいのが不可逆的な変化。特に地政学的リスク。一例を挙げればロシア。2001年にゴールドマンサックスがBRICsという造語でブラジル、ロシア、インド、中国にフォーカスした新興国推しをしたことはセンセーショナルだった。自分もその4国を中心とした新興国に投資して、ロシアは産油国として原油高が見込まれる時には強気に投資をしていた。しかし、ウクライナ侵攻が始まったのを機に全て売却。そして案の定というべきか、ロシア株ETFは上場廃止になって資本主義市場から完全にパージされたわけ。そうしたリスクは避けたいんだな。
自分が今後の世界に懐疑的なことの一つは、中国の共産党独裁がこれから中国という大国をどのように導いていくかってことにいいイメージが持てないこと。自分が北京を初めて訪れたのは、息子がまだ3歳くらいだったから1997年辺りだったように思う。日本で言えば銀座の王府井の目抜き通りがその当時はまだ舗装すらされてなくて、市内の移動は全て輪タク。万里の長城を訪れるバスツアーで途中寄ったトイレが自分の人生で見た一番汚いトイレだった。それから5-6年経って仕事で訪れた北京の変化は衝撃的だった。北京の中心部であれほどあふれかえっていた自転車はどこにもなく、舗装された道路を自動車が埋め尽くしていた。グランドハイアットのレッドムーン・バーで、「この国のポテンシャルは疑いようもなく、投資先としては間違いなく『買い』だ」と思ったことを記憶している。そして「世界の工場」として驚異的な成長を遂げた中国。しかし、これからはどうだろうか。ごく最近知ったことが、中国で共産党員は1割に満たないという事実。人口14億人の国で約1億人というのが共産党員の数。恥ずかしながら、中国の国民はほとんどが共産党員だと思っていた。共産党独裁がこれからも経済を発展させていくことができるのだろうか。香港統治を見てもかなり無理があるように感じる。
地政学的リスクで言えば、予測不可能なのが北朝鮮。自分は国際政治の専門家でもなんでもないので何ら確証はないのだが、台湾有事を構えるほど中国は愚かではないと信じている。対して北朝鮮の動向は自分の想像を越えている。そして何かあった場合に一番影響を受けるのが韓国であることは間違いない。
新興国に投資する投資信託で、一番エクスポージャーが多いのがどの投資信託でも中国。大体30%内外を中国に投資している。そして韓国への投資は約10%というのが多くの新興国投資信託の投資配分。長期的な投資対象としては、この2国はどうなんだろうと思っている。
そして、ユーロ圏の成長にも疑問を感じている。経済に低迷する国が通貨の価値を切り下げることは、経済を上向かせるカンフル剤。ギリシャやスペインといった経済的に弱い国とドイツやフランスのように経済的に強い国が同じ通貨を使うということにはどうしても無理があるように感じる。過去10年、アメリカのGDPは56.7%成長したが、EU圏の成長は14.1%にとどまっている。これまた国際政治経済の専門家ではないので、あくまでイメージなんだけど、歴史は繰り返すからね。
オールカントリーでポピュラーな銘柄の一つeMAXIS Slim全世界株式の国別資産構成を見てみると60%以上がアメリカとあってヨーロッパ(フランス2.9%、ほかの国は不明)、中国(2.7%、ケイマン諸島に籍を置いているのは中国企業)、韓国(1.4%)のエクスポージャーはそれほど高くない。なので「やめといた方がいい」と積極的に勧めるというほどではなく、自分だったら選ばないかなあという程度。全世界征服ってのは、仮面ライダーのショッカーや007のスペクターの野望だからね。その気分は味わえるかも(味わえないかww)。
(Face Book 1/20/24の投稿を転載)
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