ウマ娘的世界でライスシャワーの宝塚記念の続きをどう描くべきか?
ウマ娘というコンテンツは、競馬ファンが作り上げた『競走馬の物語』を美少女学園化することで「夢の続き」を描くことができる世界である。
例えば、サイレンススズカ。
競走馬としてのサイレンススズカは、1998年天皇賞秋での競走中に故障し、予後不良として安楽死処分がとられた。
しかし、ウマ娘の世界では、後輩スペシャルウィークの機転により致命傷をまぬがれ、陣営の夢であった米国遠征を実現させている。
競走馬の安楽死処分について眉をひそめる人は、ハマノパレードとテンポイントについて調べると良い。
・ハマノパレード - Wikipedia
・テンポイント - Wikipedia
ハマノパレードは宝塚記念を勝利した実績馬だが、高松宮杯での故障により、予後不良と診断された。
現在であれば安楽死処分がとられるが、ハマノパレードはどうやら屠殺され、その馬肉が市場に出回ったらしい。
メディアの報道で明らかになったその実態は大きな反響を呼び、すみやかな安楽死処分がとられるようになった。
テンポイントは、ハイセイコーとともに第一次競馬ブームの火付け役になった競走馬である。
海外遠征の前に、ファンに最後の姿を見せたいと出走した壮行レースでテンポイントは重傷。
予後不良と診断されたが、ファンからの数千件といわれる電話による助命嘆願が寄せられ、馬主サイドの意向もあり、獣医師33名によるチームが組まれ手術が行われた。
しかし、43日間の治療の末に死亡。
最期は馬主が「大きな犬」と思うぐらいやせ衰えた姿であった。
こうして、競走馬は予後不良の診断がくだされると安楽死処分されるようになった。
というのが、競馬の常識である。
だが、その生々しさは美少女学園化したウマ娘にはそぐわない。
だからこそ、ウマ娘では世代を超えた「競馬ファン夢のレース」を描けるのだから。
ただし、ウマ娘のエピソードの数々はモデルとなった競走馬に忠実なものだ。
そして、安易に「夢のレース」を表現したりはしない。
サイレンススズカとスペシャルウィークは、史実では一度も対戦していないが、ウマ娘的世界では実現する。
ただし、両者対決の結果は描かない。
それがウマ娘の美学である。
こうして、ラブライブのような美少女学園が好きだった人も、競走馬の物語が好きだった人も、ウマ娘は楽しめるコンテンツになっている。
と、ここで、僕は考えてしまうのだ。
ライスシャワーの1995年宝塚記念の続きをウマ娘的世界で描くとなればどうなるだろうと。
・第36回宝塚記念 - Wikipedia
二年ぶりに天皇賞春を勝利したライスシャワーは、1995年の宝塚記念にて人気投票1位に選ばれて出走。
ライスシャワーの状態は良くなく、騎手の的場均は「今日は勝つどころじゃない、慎重にまわってこよう」と判断し、後方待機策をとった。
しかし、第三コーナーでライスシャワーは自らスピードを上げ、直後に転倒。
脱臼および粉砕骨折という重傷で、ライスシャワーはその場で安楽死処分がとられた。
これが史実である。
ウマ娘は運命からは逃れられない。
アニメ一期では天皇賞秋でサイレンススズカは骨折するし、アニメ二期でもメジロマックイーンは天皇賞秋直前で引退をする。
なぜなら、ウマ娘が表現するのは良質な「競走馬の物語」の美少女化であり、その物語に付随する運命から逃れてはいけないのだから。
サイレンススズカが天皇賞秋を走り続けていたらどうなるか、という夢は、騎手の武豊ですら未だに追い求めている幻想である。
あくまでも競馬ファン目線で作られたウマ娘的世界では、安易に答えを出すことができない代物だ。
ライスシャワーは宝塚記念で転倒する運命にある。
しかし、そこで終わってしまえば、ウマ娘的世界で描く必要がない。
何かしらの救いがなければならない……ならないのだが、競走馬の物語を愛する人にも、美少女学園の物語を愛する人にも納得できる結末とはどういうものか。
そういうことを考えながら、今日もウマ娘の育成に励んでいる僕であった。
↑2021/04/25/15:00の僕の戦力
ライスシャワー育成は難しいですね。