シン・リスクチェーンモデルを用いたケース検討シリーズです。
最初のケースは「デジタルMATSUMOTOによる考察記事の配信」を対象として、デジタルMATSUMOTOと一緒にAIサービスに関わるパーパスの検討を進めていきます(ちょっとややこしいですね・・・)。
シン・リスクチェーンモデルのアプローチはこちらの記事をご覧ください。
Step1.ケース情報の整理
まずはケースに関わる情報を簡単に整理します(これは人間の作業)。
Step2. AIサービスに関わるステークホルダーの識別
ここからデジタルMATSUMOTOの登場です。
以下のプロンプトテンプレートで関係するステークホルダーを識別します。(ChatGPTやClaudeでも同じようにできますので、良ければ試してみてください)。
以下のようにステークホルダーを識別してくれます。
ここで適宜ステークホルダーの追加・修正を行ってください。
入力プロンプトのところで「水平思考/アナロジー思考/逆説的思考/クリティカルシンキング/・・・を用いて」等のように思考方法を加えていくと良い結果が出てきたりします。
こちらのnoteを参考に色々と試行錯誤してみました。ステークホルダーの識別では「水平思考を用いて」と加えてあげると良い傾向が出るように感じています。
ちなみに今回のケースで「逆説的思考を用いて」と加えてみると「教育機関」「競合他社」「社会全般」「環境」をステークホルダーとして識別していました。
※今回のケースでは当てはまらないので除いています。
Step3. 各ステークホルダーがAIサービスに対して抱くパーパスの定義
ステークホルダーを識別したので、今度は各ステークホルダーがAIサービスに対して期待するパーパスを定義してみましょう。
ここで前回の記事でも紹介しましたパーパスモデルが登場します。
以下のプロンプトテンプレートでステークホルダー毎の「獲得したいパーパス」と「保護したいパーパス」を識別します。
※会話履歴を反映してくれないこともあるので、ステークホルダーもAIサービスの概要も再度記載していただいた方が回答が確実になります。
ちなみにクリティカルシンキングを用いて「本質的な課題」を踏まえてもらうと明確なパーパスを検討してくれると感じています。
以下のような出力結果が得られました。
オリジナルのパーパスモデルを少し変形していまして、パーパスを以下の2種類に分けて検討しています。
・獲得したいパーパス:AIサービスを使って新たに手に入れたい
・保護したいパーパス:現在持っており、失いたくない
正しくないと思われる箇所はリアル松本の方で修正しています。
このケースでは、たまたま専門家本人/AIサービス開発者/サービス提供者/データプロバイダーがいずれもリアル松本になっていますが、
実サービスとして他人のデジタルツインAIを開発する場合には、委託開発や外部データの提供等も考えられるので、問題なく整理できているように感じています。
パーパスモデルで可視化
ここまでの整理をパーパスモデルツールキットで可視化してみます。
以下のようなモデルになりました。
本来内側から「目的」「役割」「ステークホルダー」で整理していくのが共創プロジェクトにおけるパーパスモデルの正しい使い方なのですが、
このシン・リスクチェーンモデルでは「獲得したいパーパス」「保護したいパーパス」「ステークホルダー名」としています。
この時点でも、ステークホルダーによってAIサービスに対する期待や目的が異なるということがある程度認識できるかもしれませんが、デジタルMATSUMOTOにパーパス間の「協調(Harmony)」関係と「対立(Conflict)」関係を分析してもらいます。
パーパス間の「協調(Harmony)」関係
以下のような結果が出ました。
このケースでは「獲得したいパーパス」同士が協調関係を築いていますが、ケースによっては「保護したいパーパス」同士もしくは「獲得したいパーパス」と「保護したいパーパス」の協調関係が識別されることもあります。
パーパス間の「対立(Conflict)」関係
以下のような結果が出ました。
エンドユーザーが、入力に伴うプライバシーやデータの安全性、及び出力される情報の正確性を気にするため、開発者・データプロバイダの目的と対立する可能性があるとのことです。
またリアル松本同士なのですが、「サービスを宣伝したいという欲求」と「自身の信頼を維持したいという願い」が自己の中で対立するという点も面白い分析かなと思います。
パーパスの整理
ステークホルダー毎に識別したパーパスは重複している部分もありますので、以下のようにAIサービスに関わるパーパスを整理しています(2024/3/27追記)。
ステークホルダー毎に検討した「獲得したいパーパス」と「保護したいパーパス」を元に整理しております。
次のフェーズはリスクアセスメントなのですが、パーパスアセスメントで認識されたステークホルダー/パーパス/協調関係/対立関係を踏まえて検討を進めていきます。