シン・リスクチェーンモデルを用いたケース検討シリーズです。
今回のケースは、AI事業者ガイドラインでもケース検討事例として用いられている「人材採用AI」を対象として、デジタルMATSUMOTOと一緒にパーパスアセスメントを行います。
シン・リスクチェーンモデルのアプローチはこちらの記事をご覧ください。
ちなみにこのケースは東大未来ビジョン研究センターでも従来のリスクチェーンモデルで検討を行っていました。
以下の「Case01.採用AI」になりますが、こちらも参考にしながら検討を進めてみようと思います。
AI事業者ガイドラインでは「別添8」が該当しています。https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/ai_shakai_jisso/20240419_report.html
Step1.ケース情報の整理
前回と同じくケースに関わる情報を簡単に整理します。
Step2. AIサービスに関わるステークホルダーの識別
以下のプロンプトテンプレートで、デジタルMATSUMOTOに「重要なステークホルダー」を識別してもらいます。(ChatGPTやClaudeでも同じようにできますので、良ければ試してみてください)。
今回は以下のステークホルダーが識別されました。
(✅リアル松本から追加を指示)に記載されたステークホルダーは会話セッションの中で追加してもらいました。
思考方法プロンプトは以下を参考にしています(このnoteではおなじみになってきましたが、多くの方が有用なプロンプト例を発信してくれていますね)。
Step3. 各ステークホルダーがAIサービスに対して抱くパーパスの定義
ステークホルダーを識別したので、今度は各ステークホルダーがAIサービスに対して期待するパーパスを定義します。
こちらもおなじみになりましたパーパスモデルを用います。
以下のプロンプトテンプレートでステークホルダー毎の「獲得したいパーパス」と「保護したいパーパス」を識別します。
ちなみにクリティカルシンキングを用いて「本質的な課題」を踏まえてもらうと明確なパーパスを検討してくれると感じています。
※ちなみに【ステークホルダー】は、明記してあげた方が確実です(数が多いと勝手に省略されてしまうことも多くなります・・・)。
以下のような出力結果が得られました。
オリジナルのパーパスモデルを少し変形していまして、パーパスを以下の2種類に分けて検討しています。
・獲得したいパーパス:AIサービスを使って新たに手に入れたい
・保護したいパーパス:現在持っており、失いたくない
今回リアル松本からの修正はありませんでした。
一覧にすると、以下のようになります。
パーパスモデルで可視化
ここまでの整理をパーパスモデルツールキットで可視化してみます。
以下のようなモデルになりました。
本来内側から「目的」「役割」「ステークホルダー」で整理していくのが共創プロジェクトにおけるパーパスモデルの正しい使い方なのですが、
このシン・リスクチェーンモデルでは「獲得したいパーパス」「保護したいパーパス」「ステークホルダー名」としています。
この時点でも、ステークホルダーによってAIサービスに対する期待や目的が異なるということがある程度認識できるかもしれませんが、デジタルMATSUMOTOにパーパス間の「協調(Harmony)」関係と「対立(Conflict)」関係を分析してもらいます。
パーパス間の「協調(Harmony)」関係
以下のような結果が出ました。
このケースでは「獲得したいパーパス」同士が協調関係を築いていますが、ケースによっては「保護したいパーパス」同士もしくは「獲得したいパーパス」と「保護したいパーパス」の協調関係が識別されることもあります。
パーパス間の「対立(Conflict)」関係
以下のような結果が出ました。
エンドユーザーが、入力に伴うプライバシーやデータの安全性、及び出力される情報の正確性を気にするため、開発者・データプロバイダの目的と対立する可能性があるとのことです。
またリアル松本同士なのですが、「サービスを宣伝したいという欲求」と「自身の信頼を維持したいという願い」が自己の中で対立するという点も面白い分析かなと思います。
パーパスの整理
ステークホルダー毎に識別したパーパスは重複している部分もありますので、以下のようにAIサービスに関わるパーパスを整理しています。
以下のような結果が出ました。
最終的に整理したパーパスは以下になります。
ちなみに従来のリスクチェーンモデルの検討(人間での検討)では、以下の4つがパーパス(旧:実現すべき価値・目的)として識別されていました。https://ifi.u-tokyo.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2022/10/RCModel_Case01_Recruitment-AI_JP.pdf
今まではパーパスモデルを活用していなかったので、P004やP005は認識すべきステークホルダーを広げることで、広範なパーパスが検討できているようです。
①②③はP001に集約された感じ。ビジネスリスク以外の部分が強く出ているのかもしれないですね。
次のフェーズはリスクアセスメントになります。