2020年5月22日開催 「学びを止めないTeams活用 東京学芸大学附属小金井小学校ICT部会オンライン教育セミナー」
標記のセミナーが開催されました。責任者の鈴木先生が、セミナーの様子を Youtube で公開してくださいました。
キーワードは、「“Face to Face”の教育から、学びの“Side by Side”へ」です。
vol.1 挨拶&趣旨説明:佐藤牧子
“Face to Face”の教育から、学びの“Side by Side”へ:鈴木秀樹
【佐藤牧子】さん
全国の皆様こんばんは。今回新型コロナウイルスの影響を受けている皆様に心よりお見舞い申し上げます。さて、本日はお忙しいなか東京学芸大学附属小金井小学校ICT部会のオンライン教育セミナーにご参加いただきまして誠に有難うございます。
私は司会を務めさせていただきます、ICT部会の佐藤牧子と申します。どうぞよろしくお願い致します。
まず、本日のアジェンタを御説明させていただきます。はじめに本セミナーの趣旨についてご説明いたします。次に本校教員4名より実践などの報告をいたしまして、最後に質疑応答の時間を取ります。
本セミナーは2部構成となっております。前半40分後半45分、その間は5分間の休憩があります。終了予定時刻は19時30分となっておりますが、若干ズレることもあるかもしれません。この点はご容赦いただけますようお願いいたします。約1時間半のセミナーとなりますがどうぞお付き合いください。
つぎに本セミナーの趣旨について説明いたします。本日のテーマは「学びを止めないTeams活用」です。新型ウイルス・コロナの流行で世界的にオンライン教育が盛んになっています。「子どもたちがいる家庭と学校をICTでつないで学びを継続させる」というのは、考え方としては至極真っ当なものですが、その方法はどうでしょうか。このセミナーでは、本校が4月から行ってきた、マイクロソフトTeamsの活用を軸としたオンライン教育の実際について紹介します。
オンライン教育の考え方と4月から始めた実践を通して、ポスト・コロナやGIGAスクール構想を見据えて、オンラインでしかできないことを、オンラインだからこそできることを、模索しながら取り組んでいます。本日は、国語、算数、理科の各教科の教育研究のスペシャリストが、どのようにTeamsを活用しているのかをご紹介させていただきます。
では、プログラムに入ります。初めに、本校のオンライン教育のベースになる考え方を、鈴木秀樹教諭から説明いたします。鈴木教諭は本校の情報部長として、office365のアカウント作成から日々の管理まで、本校のTeams活用の全般を担当しています。
ここだけでは語れない大変さがあると思いますが是非今日参加された皆様に役立つお話をお願いいたします。それでは鈴木さんお願いいたします。
【鈴木秀樹 教諭】
こんばんは、東京学芸大学附属小金井小学校、鈴木秀樹です。それでは、私の方からお話を始めさせていただきます。画面を共有致しますので、ちょっとお待ちください。
私からは「Face to Face の教育から、学びの Side by Side へ」ということで、本校のICT活用、休校中のICT活用について、またTeams活用について基本的な考え方をお話しさせていただきたいと思います。
まず休校前の本校のICT活用の状況ですけれども、お世辞にも進んでいたとは言い難いです。ここに表示されているような環境で、あまり進んでいないというのが実態でした。ところが、私としては、教員は非常に実力派が揃っていて、かつ教科教育研究も盛んで、一人一人がICTのスキルもあるので、この先生たちに、いい環境を与えれば、すごく良いことができるのに、ということをずっと思っておりました。
コロナ・ウイルスことのがあって、難しい状況に入っていくわけですけれども、2月の状況は、おそらく全国の学校と変わらなかったと思います。3月の時に、本校としては特に課題を出したりはせず、なにもせず終わったんですが、その間に、「これは4月も続くだろう。その時にはこのままではいけないよね」ということでいろいろな方面と相談をして、なんとかアカウント発行してTeamsでやっていこうということを模索しておりました。
4月に入って、大学の方に発行してもらうのは、時間的にちょっと間に合わないということが明らかになって、独自で、office365 の A1 アカウントを取得いたしました。それで、全児童、全教職員のアカウントを出しまして、それが4月2日です。4月3日に職員会議で提案して、6日にそのマニュアルを配り、教員研修もするというドタバタのスケジュールだったんですけれども、何とか Teams 活用にこぎつけることができました。
で、よくオンライン教育といいますと、同期型の授業を思い浮かべる方が多いと思うんですね。画面の中に子供たちがずらっと並んでいて、先生が授業をする。画面に向かって授業している、みたいなのを思い浮かべる方が多いんじゃないかなと思います。けれども、本校では、基本的にそういった授業は行っておりません。やるとしても、もっと少人数でやるような感じで、全員一斉に集めるようなことはやっていないです。「オンライン朝の会」とかありますが 、そういうこともやっていません。
それは、一体何故かっていうことなんですけれども、いくつか理由があるんですが、まず家庭の状況がさまざまです。他のアンケートをとって聞いてみましたけれども、保護者の負担非常に大きいですし、兄弟3人タブレット1台みたいなこともあるわけで、8時半に全員そろって朝の会をやりましょう、みたいなことはちょっと言えないだろうというのがありました。
次に授業の方から言うと、「本当に同時に全員で行う必要がありますか」ということがあります。後でいろんな発表がありますけれども、実は、非同期で、全員一緒でなくてやることのほうが効果的なこともすごく多くて、全員揃わなければいけない事って、ものすごく稀なんじゃないのかなっていうのがあります。
そしてですね、「一体、画面の中に全員を集めることを楽しみにしているのは、子供ですか、先生ですか」っていうことも、ちょっと問いかけたいなと思います。先生は、嬉しいです。子どもと離ればなれになってしまって、画面の中でも子供と会えれば嬉しいわけですけれども、子どもたちは、実は自分達のペースで学びをすすめような生活がずっと続いていて、そこに果たして、毎朝、あるいは1日に何時間か、全員集まらなくちゃいけない時間があることが、本当に全員にとって良いことがどうかは、一考の余地があるだろうなと思っています。
まとめて言いますと、オンラインで学校の再現を目指しても、それは無理というものです。オンラインだったら、オンラインならではのこと、オンラインでしかできないことを模索したほうがいい。教室でやっていることを無理やりオンラインで実現しようと思うのは、ちょっと難しいのではないかな、というのがあります。
さて、そうしたことを考えたわけですけれども、「そもそも、学校とはどういったものなのか」ということをちょっと考えてみたいと思います。普段学校では、先生が居て教室の中に子供たちがいて、フェイス・トゥ・フェイスで教えているわけですね。で、先生が子どもたちにさまざまなことを働き掛けて、何かの目的を達成するために子供たちを誘(いざな)っていくという
ことを行っているわけです。これは、私も普段を行っています。
しかし、今、子供たちは、教室にはいません。どこにいるかっていうと、家庭にいるわけです。散らばってしまったわけですね。それを無理やり画面の中に呼び戻して、何とか学校と同じことをしよう、というのが同期型の取り組みかと思いますけれども、まあ画面にズラっと子供が並んでいるようでも、実際には子どもたちはおうちにいるわけですね。バラバラなわけです。
でそうなってくると、相対的に教師の存在っていうのは小さいです。子どもたち一人ひとりの持つ裁量っていうのはものすごく大きくなっていて、教師の存在というのは実は小さくなっています。
例えば、私も、今、いろんな授業をやっていますけれども、国語の授業で物語文を読んでいますが、ある子はその時間に読むことをやっているかもしれない。あるいは別の子は、読んで考えているところかもしれない。あるいは、考えたことを書いてるっていう子もいるかもしれない。なかには何人かでつながって、意見を交換するっていう子もいるかもしれませんし、今は何もしていませんっていう子もいるかもしれません。いろんな子がいるっていう状況になるわけですね。
そうなると、教師はどうするかというと、例えば、意見を交換している子どもたちの中に入ってファシリテーターのようなことをしたり、あるいは考えているんだけれども、ちょっとなかなかいいアイデアが思いつかないという子にヒントを与えたり、何もしていない子に、「大丈夫? 学習は進んでる?」というふうに声をかけたり、いろんな働きかけをするわけです。
今、言ったようなことを普段の学校生活の中で行おうとすると、とてもやりきれません。なぜなら時間限られてますし、教師は一人で子供は大勢いるので、そんな一人一人に関わる時間がないわけですね。ところが、今、Teams で、非同期に繋がっているわけです。そうすると時間をずらして、いろんな子に教師は関わっていくことができるわけです。
今までの学校、および画面の中に全員を呼び出して行う同期型のようなオンライン教育の場合には、どういうことになっていたかっていうと、結局、フェイス・トゥ・フェイスでやっていたわけですね。教師と子どもが向かい合っててやる。教師が子どもに向かって話しかける、働きかける 、ということでやってきたわけですけれども、これがオンラインになると、実は「サイド・バイ・サイド」になっているのではないかなと。むしろ、 サイド・バイ・サイドになって子どもたちの学びを支えるっていう方向に、考えを変えたほうがいいだろうな、っていうふうに考えております。
このような考え方で、オンライン教育を進めてきたわけですが、今度、学校が、もうすぐ再開されようとしているかと思います。もうすでに再開して、分散登校等が始まっている県もあるわけですが、そうなるとですね、「フェィス・トウ・フェイスで行う教室での教育」と、「オンラインで行うサイド・バイ・サイドの教育」との、いわばハイブリッドで進めるようなことが行われるようになるわけです。
そうなったら、一体どうすればいいんでしょう。もう、学校が再開して、教室で会えるようになったんだから、サイド・バイ・サイドだとか何だとか難しいことは言わないで、今まで通りの、昔通りのことをやればそれでいいのでしょうか。私は、そうは思いません。「学校が始まったら、もうひとりひとりの学びには寄り添わないよ」というわけにはいかないんです。なぜなら子供たちは、「先生が一人一人の学びに寄り添ってくれる」っていう事を知ってしまったんです。
教師の方も、「Teams を使って、非同期に関わっていけば、子ども一人ひとりに丁寧に関わっていくことが、今まで以上にできるんだな」ということを知ってしまったんだです。
ですから、サイド・バイ・サイドの学びから、完全にフェイス・トゥ・フェイスの教育に戻るっていうふうなことにはいかないと、私は踏んでいます。「with コロナ」、「ポストコロナ」の時代にあっては、フェイス・トゥ・フェイスの教育から、学びのサイド・バイ・サイドへという風に移ったこの流れを捨てるわけにはいかないと思います。むしろ、子どもたちが「自分たちが学びの主体だ」ということに気づいてしまった。教師は、非同期の Teams でのつながりを使えば、子どもたち一人ひとりの学びに今までよりも、もっと寄り添うことができるということに気づいてしまった。そういう時代にあっては、学びのサイド・バイ・サイドへ寄り添うんだということが、ものすごく価値を持っていくんじゃないかなと。
逆に、そこに気がついて、学びのサイド・バイ・サイドへの支えをやっていくんだということをやる学校と、それをやらずに昔通りのフェイス・トゥ・フェイスの教育に戻ってしまう学校、その2つの間の格差っていうのは、ものすごく大きくなってくるだろうなと思います。
今は、オンライン教育を行っている学校と、行っていない学校の格差が大きいということが問題になっていますけれども、実はオンライン教育を行っていた学校でも、流行が終わって学校が始まった後に、フェイス・トゥ・フェイスの教育に戻ってしまうのか、それとも学びのサイド・バイ・サイドっていうことを忘れずにやっていくのかというところで、学校の間の格差っていうのはものすごく広がっていくんじゃないのかなというふうに思います。
逆に言うと、今までオンライン教育を行っていなかった学校も、学校が始まった後で構いませんから、「学びの、サイド・バイ・サイドへ、寄り添おう」ということを考えて、GIGAスクール構想で入ってくるタブレットを使えば、十分に今までの遅れを取り戻すことは可能なんじゃないのかな、というふうに考えています。
さて、最初にお話ししたとおり、流行前の本校の状況は、非常に「お寒いICT活用」だったんですが、5月に Teams を使った結果、一気に飛躍しました。非常にICT活用が進みました。オンライン教育も、いろんな知見が集まっています。今日は、その中でも、本校の中で算数、国語、理科について、それぞれのスペシャリスト、いろんなオンライン教育の実践を進めてきたスペシャリストを3名、呼んでおります。この3名の話を聞いていただくと、「そうかオンライン教育で、それぞれの教科で、こんなことができるのか」っていう風なヒントを、少し掴んでいけいただけるんじゃないかなと思います。もし、オンライン教育が休校期間に間に合わないとしても、その後のICT活用にもつながるようなものを発見していただけるのではないかなと思っております。ぜひ楽しみに聴いていただければと、思っております。
以上で私からのお話は終わらせていただきたいと思います。ちょっと色々と、今まであまり聞かなかったような話もあったかも知れませんので、ぜひ、何かありましたら、質疑応答の際に、お答えできるかなというふうに思っております。ではお返ししたいと思います。佐藤さん、お願いします。
【佐藤さん】
はい、鈴木さんありがとうございました。学校再開後のICT活用や、GIGAスクール構想に向け、学習スタイルにも触れるお話がありました。是非 、最後の質疑で、ご意見いただきたいと思います。
vol.2 オンライン学習指導の実際(1)算数:加固希支男教諭
https://note.com/takase_hiroyuki/n/n9fdcb897c358
vol.3 オンライン学習指導の実際(2)国語:大村幸子教諭
https://note.com/takase_hiroyuki/n/nfb1da17b46f6
vol.4 オンライン学習指導の実際(3)理科:三井寿哉教諭
vol.5 質疑応答
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