「伝え方が9割」から考える商品のキャッチコピー(その2)
2回目の今回は、『商品の価値を伝える方法』についてお届けします。
なぜこれが、商品のキャッチコピーを考える上で重要なのかということですが、理由は簡単で、価値を伝えなければ商品は売れないからです。
例えば、あなたの目の前に『お箸』があったとしましょう。
お箸は、手を汚さずに食べ物を口に運ぶことができたり、豆のような小さいものも掴めるたりするもので、食事の際にはとても便利です。
もし、あなたがこのお箸の便利さを全く知らなかったとしたらどうでしょう。
目の前にあるお箸は、何に使うかも分からない、便利かどうかも分からない、ただの2本の棒です。
そんな棒を見て、あなたは価値を感じたり、欲しいと思ったりするでしょうか。
何に使うか、便利なのかも分からない2本の棒を買う人はいません。
商品の価値を伝えるということは、それだけ大切なことなんです。
ただ、ここで一つ疑問がでてきます。
それは、商品のどの価値を伝えるのかということです。
先程から説明しているとおり、あなたがお箸を売りたいと思うなら『お箸の価値』を伝える必要があります。
でも、商品の価値は見方を変えれば見方を変えた分だけあります。
お箸一つとっても、『使われている材料』、『装飾されたデザイン』、『重量感』、『長さ』、『手触り』、『フィット感』など少し考えただけでもこれだけの数が挙がります。
では、このお箸の価値をすべて詰め込んで、その良さをお客様にPRしたとしましょう。
さて、お箸は売れるでしょうか。
商品の価値を伝えると売れない
答えは、売れません。
あなたの売ろうとしている商品が、どんなに素晴らしい価値があったとしても、その価値を徹底的に伝えようとしているうちは商品は売れません。
さっき「価値を伝えることが大切とか言ってたじゃないか!」と思った方もいるかもしれませんが、これは事実です。
なぜ売れないのか、今度は携帯電話の例で考えてみましょう。
あなたが生まれて初めて携帯電話を買いに携帯ショップに行ったとします。
この時、あなたには携帯電話の知識はほとんどありません。
知っていることと言えば、テレビのCMで流れている携帯電話の最新機種の情報、You TubeでUPされていた『最新機種を買ってみた動画』の情報、友人が携帯電話のLINEやアプリで楽しそうに携帯電話をいじっている姿だけ。
そして、あなたが携帯電話がでやりたことは、友人と同じように携帯電話で写真を撮ったり、友人とLINEで繋がることだけです。
そんなあなたが携帯ショップに行った時、店員さんが、最新型の携帯電話を持ってきて、「この携帯はメモリーが最高。」だとか、「ショートカットキーがあって他の携帯電話より便利」だとか、そんな話をしてきたとしたら、あなたはどんな気持ちになるでしょうか?
おそらく、「そんなこと言われても分からない」「この店員さん面倒くさい」そんな気持ちになるのではないでしょうか。
そして、この説明を延々とされたあなたは「もうイイや。携帯は別のところで買おう」という気持ちになってしまうかもしれません。
さて、この携帯電話の購入エピソードの中で、店員さんが話していたことは一体何でしょうか。
『最新型携帯電話の価値』ではなかったでしょうか。
「携帯電話のメモリーが最高」というのは、処理速度が早くなったということです。例えば、従来の携帯電話が、複数のアプリケーションを立ち上げると画面がフリーズしてしやすかったとすれば、メモリー性能の向上によりそれが解消されることになります。これは価値のあることです。
また、「ショートカットキー」の話は、例えば、今までいくつかの手順を踏まなければ実行できなかったものが、ワンタッチ操作でできるようになったということです。これも価値のあることです。
携帯ショップの店員さんは、最新型の携帯電話の価値をあなたに伝えています。
それなのに、あなたは「その携帯電話が欲しい」と思っていません。
なぜ、こんなことが起こってしまうのでしょうか。
その理由は、あなたが『メモリー』や『ショートカットキー』に全く価値を感じていないからです。
あなたが欲しいのは『メモリー』や『ショートカットキー』の情報ではなく、友人と写真を撮れたり、LINEで繋がれる環境です。
つまり、あなたは『写真が撮れること』と『LINEで繋がれること』に携帯電話の価値を感じており、それ以外の情報には興味がない状況にあります。
ところが、店員さんの口からは、写真やLINEの話ではなく、『メモリー』や『ショートカットキー』のことばかり。
話を聞いているあなたからすれば、まるで興味のない話に付き合わされているという状況です。
興味のない話を聞くのは、苦痛でしかありません。
そして、苦痛を感じているあなたからは「この店員さんから携帯電話を買いたい」などという気持ちが沸いてくることはありません。
これが商品の価値を伝えても売れない理由です。
ここまで読んでくださった方は、「商品の価値を伝えなければ売れないし、商品の価値を伝えたら売れない。じゃあ、一体どうしたらいいんだ!」と思われたと思います。
実は、それの答えが今回の結論、商品の価値を伝える方法になります。
相手が興味事に対して商品を勧める
携帯ショップの例で、もう一度考えてみましょう。
今回、携帯ショップの店員さんは、商品の価値を全て伝えようとして失敗しています。
そして、その失敗の理由は、あなたが求めていた「写真を撮りたい、友人とLINEで繋がれる環境が欲しい」という気持ちを無視して、あなたが興味をもたない商品の価値を説明したことにありました。
では、逆を考えてみましょう。
つまり、店員さんが『あなたが興味をもっている写真やLINEの話』をできていたとしたら、どうだったかという事です。
例えば、こんな具合です。
店員さん「携帯電話をお求めなんですね。携帯電話を持つのは今回が初めてですか。」
あなた「そうですね。でも、どれが良いのか全然わかりません。」
店員さん「お客様が携帯電話をもったら、どんなことがしたいですか」
あなた「友人と写真を撮ったり、LINE交換とかしたいです」
店員さん「携帯電話があれば、写真を撮ったり、LINE交換できたりしますもんね。」
そして、この後、店員さんが『実際に携帯電話でプロ級の写真が撮れるものがある』とか『LINEはアプリなので、どの携帯電話でも使える』とか、『写真とLINEが目的なら料金プランは、これが一番お得』とか、そんな話をします。
いかがでしょうか。
あなたは、この店員さんのお勧めで、携帯電話を購入するのではないでしょうか。
このように、あなたが興味をもっている事について話をすると、商品が売れやすくなります。
つまり、商品を勧めるには、相手(お客様)が何を欲しいと思っているのか、どんな問題を解決したいと思っているのかという『興味がある事』を知った上で、その願望を叶える商品を提案することができれば物は売れるということになります。
一言でまとめるなら、『この商品を買うとお客様の望むものが手に入ります』という態度で接するということです。
お客様が望むものを、あなたが売りたい商品の価値で説明すれば良いというわけです。
これが、商品の価値を伝える方法です。
この話は、前回の記事で取り上げた『言葉を創る3ステップ』にも通ずる話です。
商品が売れるキャッチコピーとは?
今回の記事を踏まえて、商品が売れるキャッチコピーを考えてみます。
ここで一番大切なことは、ターゲットを決めることです。
先程、『相手の興味事』に合わせないと商品は売れないという話をしましたが、このターゲットを決めるという行為がまさにそれに当たります。
例えば、石鹸を20歳代の女性に売りたいと思ったときに、『この石鹸は加齢臭を防ぐ効果が高いです』と伝えても商品は売れません。
写真やLINEに興味をもっているあなたに、メモリーやショートカットキーで商品を売ろうとしている携帯ショップの店員さんと同じです。
20歳女性に石鹸を売ると考えたときには、『保湿効果が高い』『シミ・そばかすを防止する』のようなキャッチコピーが考えられます。
逆に石鹸の効果で一番高いものが『加齢臭を防ぐ』なら、中年男性をターゲットにすると売れやすくなります。
この場合、石鹸を売るターゲットを中年男性に切り替えるという方法も考えられます。
そして、キャッチコピーを考えるにあたって、もう一つ大切なことはコンペティターを分析することです。
コンペティターとは、『競合他社』のことを言います。
競合となる他社は、今どんな商品が求められていて、どんな商品が売れているのかを分析して商品開発や販売をしています。
つまり、競合他社を分析することで、今の売れ筋が分かったり、今後の販売計画を立てたりしやすくなるというわけです。
ターゲットを踏まえて、競合他社の動向を見極めた上で考えられたキャッチコピーは、あなたの商品を売るために力を貸してくれるはずです。
次回は、市場のニーズを把握する方法についてお伝えします。