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末期がんでも何か治療は続けられます。

数年前まで癌治療の武器は限られていましたが、最近、新しい治療法がどんどん紹介されています。例えば、有名なオプジーボ。耳鼻科の癌に対しては、標準治療のシスプラチンを投与しても効果がなかった症例にのみ適応です。すなわち、進行がん末期がんにだけ投与できます。他にも新しい分子標的薬がどんどん出てきました。小さい病巣ならサイバーナイフ放射線も追加できます。東京の大病院まで通えれば、治験という名目で、新しい治療を受けることもできます。いづれも根治はできませんが、今の時代、希望すれば多くの新たな治療が続けられます。ところが、他の大きな病院から「もう治らないから緩和、痛み止めだけ近くの病院でもらって」と言われて、泣く泣く受診する患者さんがいます。数年前なら術後に再発したら緩和医療(痛みをとって安らかに過ごす)への流れでしたが、今は医学が進歩して時代が変わりました。2018年に「遠隔転移があってもなんらかの治療したほうが良い」と論文を書きました(下記リンク)。何も治療しないと、平均87日で亡くなり、1年後に生きていたのは6%でした。あらゆる治療を組み合わせて抗うと平均343日生き、1年後に53%が生き残っていました。死ぬまで治療を続ければ、癌が進行して皮膚を食い破る、ひどい死に方が減り、分子標的薬や抗がん剤で干からびて肺炎や老衰で見た目は綺麗に亡くなります(この一文は、論文にはふさわしくないので、査読で削除されました)。痛みを取るだけが緩和ではありません。本人が続けたいなら、健康状態を見ながら、死ぬまで治療を続ける選択肢もあると思います。中には「苦しまずに早く死にたいよ」という患者さんもいます。どちらが良いかは人それぞれですが、病院から「もう治療法がありません」と断言されると、患者さんは「見捨てられた」と思うようです。


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