台風休暇にみる台湾の価値観ー台湾留学記②
絶賛台風直撃の台湾です。台湾に台風が接近する時は、政府が公式に台風休暇(颱風假)なるものを発表し、学校や会社は全て休みになります。昨日は台南や高雄といった南の地域で、そして今日は台湾全域でこれが発令されました。
ここではわかりやすく「台風休暇」と記載していますが、正式名称は「防災假」。
台湾の法律「天然災害停止上班及上課作業辦法」(自然災害休業休校措置法)により台風、洪水、地震、土石流、その他の自然災害の影響が想定される際に国民の安全を守る為のもので、各地域ごとに会社や学校が休業休校となります。
この台風休暇ですが、多方面から台湾社会を垣間見ることができます。
政治家にとって台風休暇は諸刃の剣
例えば政治家にとって選挙が近い時期の台風は一大事。台風休暇を発令するか否かが支持率に影響するからです。ほんまかいな(笑)と思ってたら大真面目な記事がいくつも出てきて困惑。
台風休暇の発令には基準がありますが、あくまで自然現象なのでどれだけ被害が及ぶか、進路がどのようになるのか読めないのが実情です。不確実性が大きい中、結局執行権は首長に向きます。
そして、台湾全域が台風休暇を発令した場合の損失は日本円で約900億円に及びます。
まさに命を取るか、損失を避けるかの選択。台風休暇をポピュリズムと関連づけて考察する記事がいくつもありました。「颱風假政治學 地方首長必修課」(台風休暇政治学は地方自治体リーダーの必修科目である)っていう見出し記事もあって、いかに台風が彼らにプレッシャーを与えているかがわかります。
現台湾総統で民進党の頼清徳も、この台風休暇に振り回された人物。うまく台風直撃に合わせて休暇を出せた時には「頼神」と呼ばれ、午後のみ半休にし、市民が大雨の中の帰宅を余儀なくされた際には「頼半天」と呼ばれたエピソードが。
一日休めば大損失、根本的な給与問題も
先ほどサラッと経済的損失に触れましたが、輸出志向の国台湾で丸一日経済活動がストップすれば、損害額は900億円。
少し話がずれますが、最近知り合った台北の研究所で働く女性(彼女はアメリカ人)が自身の給与の低さにぼやいていたことがありました。一人当たりGDPで考えると、2022年10月には日本のそれを越していた台湾。(これまでもこれからもデータの扱いずぶずぶですが、概論として読んでください、ご容赦ください。)しかし台湾の大学新卒者の平均月給は3.3万元(約15.8万円)ほどです。日本は22万5,400円なので、物価、大卒者の割合(台湾の大学進学率は日本の約1.5倍)を鑑みても、台湾の賃金の低さがわかるかと思います。
そのため、台風休暇の損失額が発表されると、必ず上がるのが「私たちは一日にこれだけの価値を生産しているのに、適切に給与が支払われていない!」という声。GDPが急成長している台湾で、いまだ低賃金であるという問題は、受託製造を主としたハイテク産業への依存といった産業構造にも由来しています。
生活してみて分かってきましたが、台湾でそれなりの暮らしをするってお金がかかるなあと。食費は確かに安く済ませることができますが、日用品などは日本とそれほど変わらないか、レートの関係もありかなり割高に感じています。あと日本の100均は偉大!台湾にもダイソーはありますが、全然100円じゃないです。寮生活なので家賃を気にすることはないですが、調べてみたところ日本と変わらなそうでした。
そのため、「台風休暇といっても、有給ではない場合がほとんどなので、手放しに喜べないんじゃないかしら?」と思っていたら、それはまた別なのが台湾人のチャーミングなところ。というのも、「台湾より休みが少ないのは北朝鮮くらい」という(ブラック)ジョークがあるくらい、台湾はもともと祝日の少ない国なのです。台風休暇はそんな台湾にとってまさに天から降ってきたボーナス休暇のような存在なんでしょうね。
ちなみにですが台湾には「振替平日」というものが存在し、祝日を効果的に組み込んでいます。(例えば、火曜が祝日の場合、日月火と3連休にし、土曜を振替平日にするなど)これも台風休暇にあてはめれば?と思うのだけれど、そんな簡単じゃないんだろうなとも思う。
そもそも、なぜみんなが一斉に休む??
日本の場合、行政単位ではなく、学校や会社による個別的な休みになると思うんですけど、なぜ台湾は会社も学校もみんな一斉に休むんでしょうか?
これもいろんな理由がありますが、第一は学校が急に休みになった時、家に誰もいない状態を避けるため。もともと台湾も日本と同じように、会社や学校、個人による判断で出社出勤を決定していたようですが、民衆からの反発が大きく、主管機関による全権の責任に移行したそうです。
台湾の食品メーカーの中には、台風の時期に合わせたストーリーマーケティングを行い、「台風の日の家族団欒」といったイメージのプロモーションを打ち出すところも。冷凍食品やインスタントヌードルなどの販売量が台風によって大幅に増えるそうです。
小学校低学年の頃、台風で学校が休校になった時、窓の外の吹き荒れる風を横目に母とワイドショーを見ながらお昼を食べ、背徳感を味わったことを思い出しました(笑)
また、台風休暇は前日に発表されますが、いざ当日になると雲ひとつない青空なんてこともしばしば。そんな時は映画館やカラオケ、サーフィンなどを楽しむそうです。なんてお気楽な(笑)
ともかく、今日は一日休みなので、授業の課題や勉強を進めようと思います✊
天候の影響なのか、頭痛も続いています、、ゆっくり休みます。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。