2014年春、香港 アジアの国際都市で東京の近未来を先取り体験する
2012年のヨーロッパ(パリ、バルセロナ、ロンドン)、2013年のアメリカ(ロサンゼルス、ニューヨーク)に続き、2014年は近隣アジアの国際都市香港を訪れました。
香港では、アジアからの観光客が急増する都市では何か起こっているのか?いずれその波がやってくるであろう、東京始め日本の中核都市では起こりそうなことは何か?
また、当時、アジア進出を進めていた日本のファッション流通企業の当地でのグローバル企業との前哨戦を視察することでした。
最もエキサイティングな国際都市
香港は1986年、僕が学生時代、初めて訪れた外国の都市です。
高層ビルのすぐ横をすり抜けて、ジェットコースターのように飛行機が着陸した旧啓徳空港、不愉快なくらいの蒸し暑さ、街の独特のにおい、街角で警察官が犯罪者を逮捕する瞬間を何度も見せつけられたこと、などなど・・・あれらの衝撃は今でも忘れらることができません。
それ以来、仕事、プライベート、視察、数えきれないくらい、当地を訪れた90年代。
海外には30か国くらいの渡航経験のある僕ですが、今でも「(その中で)最もエキサイティングなところは何処だった?」と質問されたら、迷わず、「香港」と答える都市です。(ちなみに2番目はニューヨークです)
「インバウンド消費」都市を先行体験する
2020年の東京オリンピック開催が決まったのは2013年、その翌年の2014年から訪日外国人を対象にした「インバウンド消費」という言葉が流行語になり始めていました。
当時の訪日外国人観光客は年間1000万人、2020年には2600万人になるだろうと予測されていました。(実際には2019年に3000万人を超えたそうです)
香港は当時700万人の人口に対して、2013年には年間5400万人の観光客が訪れ、そのうち4000万人が中国本土からだったそうです。
彼らは買い物意欲旺盛で、この日もプラダやエルメスの店舗前に入店待ちの中国人観光客と思しき人々の長蛇の列が・・・。当時、香港では中国人観光客の多さ、街の中でのふるまいが社会問題になっているとのことでした。
パリやロンドンやニューヨークでも感じたように、これから東京も大阪もその他の中核都市も「インバウンド消費」、「グローバルトラベラー」をあてにしたビジネスの構築が求められます。
香港九龍サイド、Tsim Sha TsuiのCanton Road。かつてはこの通りにはワンタン麺、御粥屋さん、コンビニなど庶民的な店が並んでいて、よく利用したものでしたが、今は家賃が高騰し、そういった飲食系の店は姿を消し、ラグジュアリーブランドの路面店が軒を連ねる銀座や表参道のようなストリートになっていました。
近郊ショッピングセンターでローカルチェーン、欧米日チェーンの競合状況を視察
今回のリサーチ中にはユニクロや無印良品など日系専門店が入居するショッピングセンターをたくさん回りました。
その中でグローバル、ローカル企業が一通り見れるのが、 新界New Territories、ShaTin(沙田)のNewTownPlazaでした。
地下鉄駅直結のもの凄いトラフィック(集客)のあるSCで
トップクラスのラグジュアリーブランドは出店していませんが、日本の百貨店に出店しているような欧米ブランド、コスメティックブランドのメジャーどころは一通り網羅し、ZARA、H&M、UNIQLO、GAP、MUJIなどのグローバルSPAから人気ローカルブランドまで、おそらくこのNewTownPlazaほど香港ファッションマーケットの縮図がワンストップで見ることのできる場所でした。
ユニクロの圧倒的な人気
ユニクロは何処に行っても大人気、香港の人たちは日本に来てもジャパンクオリティを高く評価していて、コスパのバランスは日本人以上によくわかっているような気がいます。当時、海外ユニクロ事業のドル箱でした。
無印良品も人気です。当時はアパレルは欧州から、雑貨は日本から持ち込んでいるようでした。
香港から日本を訪れる観光客も多いため、ユニクロ、無印に限らず、メジャーブランドは知名度が活かせ、商売しやすい立地のようです。
但し、ネックとなるのは高い家賃。商業地が限られており、客数が見込める好立地をどれだけ採算のとれる条件で借ることができるかがカギになりそうです。
海外進出と内外価格差
ユニクロや無印良品に続く規模の日系企業は、海外パートナーの協力を得て直営店を出店しているローリーズファームやグローバルワークを展開するポイント社(現アダストリア)のようなパターンもあれば、地元の有力企業であるセレクトショップI.T.にフランチャイズチェーンを任せたり、セレクトショップ内のコーナー展開で販売してもらうようなパターンの2タイプがあるようでした。
前者の直営型は国内外の内外価格差を小さく抑え、地元の顧客に支持されやすいプライスをつけられますが、後者は内外価格差が1.5倍以上になり、割高感は否めません。 当然、前者の方がビジネスは拡大しやすいでしょう。
グローバル時代になると、世界中の顧客は内外価格差に敏感になるもの。現地の顧客に支持される価格設定ができて、なおかつ儲かるビジネスのしくみをつくることの大切さを感じました。
今回気になったローカル企業は initial
香港のローカルアパレルチェーンと言えば、ユニクロの創業に影響を与えたジョルダーノや、比較的長い社歴を持つG2000、Bossiniなどがあります。欧米企業の製造受託からスタートしたメーカーが立ち上げたSPA(アパレル製造小売業)が多いようです。
今回の香港リサーチで最も気になったローカルのブランドは比較的新興の"initial"でした。香港に21店舗(当時)。中国本土にも多数出店しているようです。
メンズ、レディース、スーツからカジュアルまで、布帛シャツ、羽織系でおおよそ日本円で1万円台から2万円台と日系セレクト並みの価格になりますが、シンプルデザインに気の利いたディテール、店舗の内装へのこだわり、家具やカフェを展開するなどライフスタイル系ブランドを意識しているようです。店舗によって雰囲気が違っていて見ごたえあります。
画像はHarbour CityとNewTownPlazaのお店です。
好立地はグローバル企業の陣取り合戦
香港リサーチ最終日、最後の場所は・・・香港島、中環CentralのZARA出店計画地でした。
ここ実はかつてH&Mの香港1号店があった場所。
ZARAは、H&Mの賃借契約更新にあたり、H&Mの倍の家賃を支払うことでH&Mからこの立地を奪い取りました。
Centralから追い出されたH&Mは、銅鑼湾Causeway Bayに旗艦店の開業準備中でした。
大手資本がこんなことを繰り返しているので、香港では、好立地は大手に金で奪い取られるのが当たり前になってしまっているようです。
今後、日本の都心部もそうはならない、と誰が言えるでしょうか?
中国人観光客の購買パワー、日本企業の海外での展開のありかた、好立地をグローバル企業が奪い合うパワーゲームなどを感じた香港リサーチでした。
香港でのグルメの楽しみは・・・
18年ぶりの香港では、飲茶、ワンタンメン、お粥、フカヒレスープなど、大好きだった懐かしシリーズを頂きましたが、香港リサーチ最後の夜のご褒美はガルーパ・オン・ザ・ライス!(ハタ科の海水魚でクエのような魚)今回これだけは食べたかったという料理に最後にありつけました。脂がのっていて美味い!です♪
次回は2014年夏、グローバルアパレルチェーンウォッチャーとして、「ユニクロ対ZARA」(2014年11月初版;日本経済新聞出版社)執筆の機会を頂き、ZARAを展開するインディテックス本社のあるスペイン、ガリシア州、ア・コルーニャに取材に出かけた時の様子に続きます。
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