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2014年夏、スペイン ア・コルーニャ ZARA本社訪問~「ユニクロ対ZARA」執筆エピソード②

ZARAの本社取材のためにスペイン、ガリシア州のア・コルーニャに訪れた時のエピソードの2回目です。
1回目はこちら>>>2014年夏、スペイン ア・コルーニャ ZARAが生まれた街

取材当日までのリサーチ&現地インタビュー

ア・コルーニャ滞在中、ZARA本社の取材当日までは、前回ご紹介したダウンタウンだけでなく、郊外にある当地最大のショッピングセンター marineda cityをリサーチしたり、スペイン・ガリシア州繊維協会の理事の方の会社を訪問し、当地の繊維業界の話を伺いました。

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ここmarineda cityは、タクシードライバーによれば、ZARAの創業者のオルテガさんが所有する不動産会社がオーナーだとのこと。
インディテックス社のZARA始め全ブランドはもちろん、スペイン最大の百貨店el corte ingles、競合のH&M、MANGO、C&A、PRIMARKも入居していました。
このショッピングセンターに来れば、ラグジュアリー以外のショッピングは一通り出来そうです。

スペイン大使館経済商務部のご紹介で当地の繊維産業のお話しを伺ったのはALBA CONDEという当地発祥レディースブランドの二代目の若社長さん。同氏によれば、繊維産業はガリシア州の重要産業のひとつで、3代続けて同じ工場(テキスタイルや縫製)に勤めるファミリーも少なくなく、現在も工場では20代含めた若い方々が従事しているため、産業に未来はあるとおっしゃっていました。
ガリシア州は繊維産業が盛んなポルトガルが近隣なことから、行き来が活発で、近隣国間での協業も進んでいるということでした。インディテックスもそんな産業基盤に支えられていいるんだな、と感じることができました。

インディテックス本社へ

朝、ホテルにインディテックス社の黒塗りの車が迎えに来てくれました。ホテルから車で20分程度。とうとうやって来ました。アパレル専門店、世界一のインディテックス社の本社であるとともに、ZARAブランドの世界のヘッドクオーターです。このビジネスに携わっていれば、死ぬまでに1度は行きたいと思っていた場所のひとつでした。ちなみにZARAとZARAHOME以外の他のブランドのヘッドクオーターはスペインの別の都市にあります。

ファッション企業というと、都心のど真ん中にオフィスがあるイメージかも知れませんが、小売業にとって、お客様に見える店舗にはお金をかける必要はありますが、本社にお金をかけすぎる必要はありません。むしろローコストな方が、お客様のために利益を還元できるものです。そんな考え方を持った会社であることも感じられます。広大な土地の中にあり、設備の拡張性はいくらでもありそうです。

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広報本部長のプレゼンテーション

お相手をして下さったのは、広報本部長のエチェバリアさん、そして、何度も電話でやりとりをさせて頂いた(前話参照)広報部のAさんも同席して下さいました。
メールベースでは僕のインタービューに取れる時間は1時間のみ、という話でしたが、エチェバリアさんは、お忙しい中、1時間半の熱のこもったプレゼンテーションの他に、更に1時間の質疑応答の時間を取って下さいました。
会社のオペレーションを説明するプレゼンツールも充実しており、話がとてもわかりやすく、尻上がりにテンションが上がるプレゼンテーションをされる方でした。ZARAの歴史から、オペレーションの強み、これからのヴィジョンをご説明頂きました。

ZARA広報との質疑応答

質疑応答で僕が今でも印象に残っているやりとりを3つご紹介しましょう。

ひとつは、同社の経営、業績に対する考え方です。僕が同社の上場(2001年)以来の10数年間の業績(売上・営業利益)を時系列に並べてみたところ、前年に比べ、減益(利益が減る)の年が2回あり、それらの減益直後には共に、3年連続で大幅増益していることに気づきました。これに対し、きっと、何らかの秘策を打ったのだろうと思い、「これらの危機の時に、御社はいったい、どんなことを考え、どんな手を打ったのですか?」という質問をしました。

同氏の答えは、我々は業績を単年度や前年比といった短期視点では見ていない、常に3年平均成長率(CAGR)という視点で見ている。従って、単年度の減益は気にしていないし、一喜一憂することはなく、常に3年平均でどうなるのか?と先を考えて、次の準備をしているのだ。そんな視点を持って、改善すべきオペレーションの課題は常に自覚しているので、それらを次々に実行に移すだけだ、ということでした。
この一言は、それまで、業績を前年対比で見比べる、短期視点で見ることが多かった僕にとっては(たぶん多くの企業もそうでしょう)、結構、目から鱗で、その後のさまざまな業績分析に新しい視点として加えさせて頂いたものでした。

ふたつめは、同社が強みとする近隣国生産についてです。
同社にとっての、近隣国とは本国スペイン、隣国ポルトガル、その北のモロッコを指します。その「近場」3か国で全体の60%近く商品を短サイクル・小ロット生産でつくり足すことで、販売期間の短い、ファッション商品固有の在庫リスクを回避している同社。
僕の質問は、今の企業規模で、今後も世界規模で事業を拡大するにあたり、スペイン、ポルトガル、モロッコの3か国の近隣国でリスク分散型生産をカバーし切れるか?というものでした。
エチェバリアさんは、心配ない、近々もう1か国、トルコが加わる、とのことでした。
スペインとトルコは、日本とベトナムくらいの距離があるので、トルコはかなり遠い国ではないですか?近隣国ですか?との質問に…
スペインとトルコ間は毎週2回定期便を飛ばしている空輸ルートが確立しているので、距離は関係ない、わが社にとっては、近隣国の一部とのことでした。
実際、その2年後、同社では、空輸を活用したトルコでの短サイクル生産が始まり、近隣国生産は全体の65%にまで増えました。

みっつめは、第9のブランド、新しい業態についてです。
同社は現在でもIRでは発表していませんが、leftiesという第9番目の低価格ブランド(ZARAの半額以下)を展開しており、スペイン、ポルトガル、ロシアで数店舗ずつ展開してることに、今回のスペイン ア・コルーニャ視察で気づいた僕は、このブランドについて質問してみました。
すると、このブランドはもともとZARAのアウトレットだったもの。低価格に需要があることがわかったので、単独ブランドとして、そのための生産、販売を始めたとのことでした。当時は、業績や市場を見て、今後どうするかは、まだどうするかはわからない、とのことでした。
当事から現在まで、ZARAブランドの業績の中に含まれているようで、2020年現在、出店国も9か国に増えているところを見ると、軌道に乗ったら、この第9番目のブランドは公表されることになると思います。

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本社内視察

取材は1時間だけ、という話だったのですが、プレゼンテーションによるオペレーションの紹介と質疑応答に2時間半を割いて頂いた後、窓口になって下さった広報部の女性Aさんの案内で社内と昼食を挟んで午後までの時間、ほぼまる1日かけて施設の中を見せていただけることになりました。

デザインルーム、モデル店舗、IT部門、EC撮影スタジオなど、いずれも、大企業らしい大きく、きれいなオフィスながら、ひとつ彼らのこだわりがありました。

それは、同じフロアーの同じセクションは、必ず大部屋状態で、役職に関係なく、個室なし、柱なし、パテーションなど、視界を遮るものなし。デスクで顔を上げて見渡せば、誰がどこにいて、何をしているかがわかる造りになっていたことです。これは同社が、普段のコミュニケーションを重視し、打ち合わせをしたいと思えば、相手がどこにいるのか直ぐに見つかる、声をかけて、すぐにミーティングというか意見交換ができるようにするため、だとのこと。同社はこの風通しの良さを社風として大切にしており(創業者のオルテガさんのモットー)、業務上の決断と行動のスムースさとスピードを重視し、一方、同社では堅苦しい、何かを決定するための儀式的な会議というものがほとんどない、ということでした。
この社風、しくみにより、セクショナリズムに陥らない、店頭で新しい商品をお待ち頂いているお客様(エンドユーザー)のために、ストレス少なく、いち早く、小さい単位で、期限通り仕事を進めることができる、同社の秘訣のひとつなんだと感じたものでした。

工場、物流施設視察

本社近くの幹部がよく利用するというレストランでAさんと昼食を終え、その後、工場と物流施設を見せて頂きました。

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工場では生地を自動裁断する様子、裁断した生地を委託縫製工場に持って行く作業場、縫製工場から縫いあがった商品を回収し、アイロン掛けするプレス場、商品に値札や各種タグをつけて出荷準備するスペースを見せて頂きました。
同社では、期限重視で業務を進行させるため、トラブルが起こりそうなところは内製化し、時間のコントロールをしているようで、どこでも縫製ができるようにするための準備は自ら行い、外注先で縫製した後も、回収してアイロンプレス以降の仕上げは自らが責任を持って行うことがわかりました。
これは以前、アパレル生産のサプライチェーンに携わっていた経験のある僕にとって、タイムマネジメントの観点からとても理にかなった話した。

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物流は自動化され、無人倉庫のようです。RFIDが付けられた商品は、世界の各店ごとに自動に仕分けされ、自動で荷出し場まで運ばれて行きます。このあと、スペインの全ブランド集中倉庫に集められ、世界の店舗に向けて空輸されるとのことです。

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本社員が世界の店舗のお客様のことを考える会社

この本社には100を超える国と地域の国籍のスタッフがいらっしゃるそうです。それは、世界のローカル店舗で働き、その国のお客様、店舗業務を熟知した上でスペイン本社勤務するという流れ=インナープロモーションというしくみが出来ているから、とのことです。

世界の店舗には、そんな本部スタッフが送り出す商品が常に並び、また、ローカルのお客様の反応を店舗経由で取得した本部デザイナーたちが新しい商品を生み出し、また送り出すという循環が出来ているそうです。

2020年現在、96か国に出店し、オンライン経由も含めると202の国と地域で販売しているZARA。取材当事から、その後も、持ち前の柔軟性を強味に、順調な成長を果たされていると思います。

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スペイン ア・コルーニャ最後の夜のグルメ

広報部のAさんに、ディナーにおススメのレストランを伺いました。それがこちら。金曜日とあってムチャ混みでしたが美味しかったです。

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原稿締め切りまであと10日間!

たくさんの情報のインプットを頂き、その後もたくさんのメールのやり取りをさせていただき、何とか期限までに原稿を書き上げることができました。
時間との闘い、綱渡りでしたが、ワクワクの3ヶ月、
ご協力頂きましたみなさま、本当にありがとうございました。

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さて、次の年、2015年はSDG'sが宣言された年、サステナビリティをテーマのひとつにロンドンそして、北欧のストックホルム、ヘルシンキ、コペンハーゲンに向かいます。

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