猫のぐるぐる
朝起きると、猫が旦那のおなかの上に、乗っていた。
旦那の大きなおなかの上で、きっちり香箱を組んで、乗っている。
おなかの上で、ぐるぐるぐるぐる、のどを鳴らしている。
なんなんだ。
そんなに旦那のおなかは乗り心地がいいのか。
…そうだなあ、ずいぶん分厚い肉クッションだし、温かいから気に入ったのかも。
そんな事を思いつつ、朝食の準備に取り掛かる。
「いやあ、昨日ハラ壊しちゃってさ!!!」
そんなことを言う旦那は、朝からご飯を二杯もおかわりしている。
「腹痛かったならもう食うな!!」
「イヤイヤ、なんか調子よくてさ‼」
三杯目はきっちり拒否して、出勤させた。
その日の夕方、旦那がひーひー言いながら帰ってきた。
「こ、腰がいてえ・・・。」
どうやら重たい荷物を持ったときに、ぎっくり腰になりかけた模様。
帰宅するなり腰をエビのように丸めて…、横になっちゃったよ。
あれ、そのままいびきかいて寝ちゃったぞ。
…まあいいや、ご飯まで寝かせておくか。
ご飯を作ってリビングに行くと、旦那の腰の上に猫が乗っている。
あーあー、ぎっくり腰だって言うのに、猫なんか乗っけちゃって…ん?
まーた香箱組んで、ぐるぐるいってる。
ホント旦那の上に乗るの好きなんだから。
「ちょっと!ごはんできたよ!!どうする!!」
旦那に声をかけると、むっくり起き上がった。
…あれ、腰痛かったんじゃないの。
「食べる食べる食べる‼」
旦那はあれだけ痛い痛い言ってたくせに、普通に痛がってたことを忘れて、いすに座ってご飯をもぐもぐ食べ始めた。
最近旦那の上に、猫が乗っているのを見ない。
暑くなってきたからかな?
そう思っていたけれど。
このところ、私のおなかの上に、よく乗ってくるんだよねえ…。
おへその下の辺りに、いつの間にか乗ってきて、ぐるぐるぐるぐる、香箱組んで、のどを鳴らしている。
毎日毎日乗っかるもんだから、乗ってないと眠れなくなっちゃうくらい、くせになってた。
そんな毎日が続いたある日。
いきなり猫が、おなかに乗らなくなった。
乗せてもすぐ降りちゃう。
…なんでや?
もうずいぶん寒くなってきたのに、おなかに乗らない猫。
香箱を組むのは、ホットカーペットの上ばかり。
寂しいなあ、嫌われたのかなあって、思ってたんだけど。
「おめでたですね。」
はい?
体調不良で病院に行った私の耳に、聞きなれない言葉が届いた。
はい???
ちょ!!!
はい????!!!!!
上の子産んで、九年が経っていた。
まさかまさかの御懐妊。
あれよあれよという間に、上の子はおねえちゃんになった。
…このところ、気付いたのは。
猫の香箱ぐるぐるには、なにやら不思議な力があるのではないかしらということ。
…思い起こせば。
旦那のおなかも。
旦那の腰も。
私のおなかも。
香箱組んだ、猫のぐるぐるで、快方に向かったのではなかろうか。
今も。
成長痛でひざが痛いと言っていた下の子のひざの上で、猫が香箱組んで…ぐるぐるいっている。
明日にはきっと、痛みはなくなっている…かも?
うちにはすごい、お医者さんが、いるみたい。
猫のぐるぐる、侮れない。