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俺、生まれ変わったら【ストッキング】になってるし!!
……俺は、ストッキング。
ヌーディーベージュカラーの、破れにくいタイプのストッキングである。
昔、俺は人間だった。
名前は忘れたが、エロい男だった。
何らかの事故で命を落としたとき、俺は願った。
「生まれ変わったら、ストッキングになりたい」
そう願ったのには、理由(わけ)がある。
俺はストッキングが好きすぎて、煩悩を抑え切れなかったのだ。
どんなプレイが好みだったのか、何一つ覚えていないのに…執着心だけは忘れていなかった。
すばらしい履き心地を経験できて幸せだった事と、いきなり破れて泣いた事だけが、いつまでも心に残っていた。
願いが叶ったのだと喜んだ瞬間は、確かにあった。
だが、しかし。
―――うわ、サイズ間違えたかも…
俺を買ったのは、おばちゃんだった。
ふとましくて、胴体に足がめり込んでいる中年だった。
俺は願った。
「一刻も早く、生まれ変わりたい」
そう願ってしまうのは、当然である。
おばちゃんは、毎日俺をはき続けたのだ。
縦方向には余り、横方向には限界まで伸ばされ、異臭を放つパンプスに毎日突っ込まれ、…地獄でしかない。
恐ろしい願いをしてしまった事と、願いが叶ってしまった事が、いつまでも心をえぐり続けた。
……願いが叶ってしまって、もう…何日、たっただろう?
―――うわ!!くっさ!!ママこれちゃんと洗ってるの?!
俺をつまみ上げたのは、おばちゃんの娘だった。
いわゆる今風の、仕事ができそうな女性だった。
俺は願った。
「娘さん、どうか俺を連れて行ってくれ」
そう願ったのには、理由があった。
娘さんは、俺と同じ色とサイズのストッキングを愛用していたのだ。
洗えば匂いも落ちる、横に伸びてるからはきやすくなってるはず。
これでも一応お高い商品、そう簡単に捨てたりしないだろう。
……せめて一度くらい、若い女性に着用されたい。
―――何これ!!股の部分が破れて…溶けてる?!余りにも毒素が出すぎて繊維が崩壊したんじゃないの?!ヤダー!!
おばちゃんが、足の部分が使えるうちははき続けると騒いでいる。
まだはけるから捨てないでといっている。
現代の消臭スプレーの底力を知らないあんたに何がわかると息巻いている。
俺の願いも…むなしく。
勢いよく突っ込まれた大根足の爪の伸びたつま先が突き刺さり…俺の体が一気に裂けていく。
おばちゃんは俺を丸めて、ホコリだらけのサッシの溝をゴリゴリ拭いたのち…ゴミ箱に突っ込んだ。
ああ、次に・・・生まれ変わったならば。
おれは・・・
・・・
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