おむかえ
……あめ、ふってきた。
あめ、いっぱい、ふってきた。
しいちゃん、かさ、もっていかなかった。
あめ、いっぱい、ふってる。
あめ、ぜんぜん、やまない。
しいちゃんに、かさ、もっていかないと。
あめ、あめ、あめ、あめ。
かさをさして、がっこうに、いこう。
あめ、あめ、あめ、あめ。
かさをさしながら、がっこうに、かさをもっていこう。
あめ、あめ、あめ、あめ。
だれもいない、しょうこうぐち。
あめ、あめ、あめ、あめ。
しいちゃんのくつばこ、みーつけた。
あめ、あめ、あめ、あめ。
しいちゃんのかさ、くつばこに、ひっかけた。
あめ、あめ、あめ、あめ。
あめ、ぜんぜん、やまないね。
ひとりでかえるの、さみしいなあ。
しいちゃん、くるまで、まっていよう。
あめ、あめ、あめ、あめ。
あめ、ぜんぜん、やまないね。
あめ、あめ、あめ、あめ。
みんながかえる、じかんだよ。
あめ、あめ、あめ、あめ。
あめ、ぜんぜん、やまないね。
しいちゃん、ぜんぜん、こないなあ。
あめ、あめ、あめ、あめ。
あめ、すこし、やんできた。
しいちゃん、ぜんぜん、こないなあ。
あめ、やんだみたい。
……ああ、あれは。
きれいな、にじが、みえる。
ああ、あめ、やんじゃった。
かさ、もう、いらないね。
かさ、もう、いらないから、もってかえらないと。
せっかく、おむかえに、きたのになあ。
……かさ、また、わたせないみたい。
……かさ、わたせなかった。
……かさ、わたしたかったなあ。
……かさ、とりに、いかないと。
……かさ、とりにいって、ひとりで、かえらないと。
「おかあさん、かさ、ありがとう。」
しいちゃんの、こえが、きこえた。
ひさしぶりに、しいちゃんのこえが、きこえた。
……ああ、やっと、しいちゃんに、あえた。
しいちゃんのてには、かわいい、かさ。
しいちゃん、おおきく、なったね。
しいちゃんのほうが、おばあちゃんになっちゃったね。
……よかった、かさ、わたせて。
……わたせなかったかさ、わたせて、よかった。
……おかあさん、これで、ようやく。
「ね、いっしょに、……かえろう？」
しいちゃんが、おむかえに、きてくれた。
しいちゃん、おむかえに、きてくれて、ありがとう。
だめな、おかあさんで、ごめんね。
ななさいまでしか、そだててあげられなくて、ごめんね。
せいちょうを、みまもってあげられなくて、ごめんね。
しいちゃんと、てをつないで、にじを、わたる。
そらに、かえるために、にじを、わたる。
ああ、にじが、きえてゆく。
ああ、しいちゃんが、きえてゆく。
かさをわたしたくて、わたせなかった、かこがきえてゆく。
かさをわたせなくて、のこってしまった、わたしが、きえてゆく。
ああ、わたし、きえてゆく。
……ようやく、わたし。
きえることが、……で き た
私は晴れてても折り畳みを持って行っていたタイプです…。
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