ぼくを食べてくれるひと、いませんか~!
ぼく、ごはんつぶ!!
ようちゃんのほっぺたについてたんだけど…アタマにきたから、たびにでることにした!
ようちゃん、ごはんを食べるのがへたっぴなんだ……。
ほっぺについたり、おちゃわんについたり、テーブルのうえにちらばったり、ゆかにおちることもあるんだよ?!
きょうだって、ずっとほっぺたにいるぼくにきがつかなくてさ!!
ぼく、ようちゃんにはうんざりしてるんだ!
だから、やさしくていねいに、おいしく食べてくれるだれかをさがしにいこうっておもったの!
ぽちゅぽちゅ、ぽっちゅぽちゅ……
食べてくれるだれかをさがして、あるいていくと……。
あ、あのリボンのついたポシェットをもってるおんなのこは…ようちゃんのおともだちの、リカちゃんだ!!
このこ、いつもすごくきれいにきゅうしょくを食べるんだよね!
ゆっくりだけど、ていねいにおさじですくって、おくちにいれてくれるんだ!
よーし、食べてもらおう!!!
「ねえねえリカちゃん、ぼくを食べてくれない? おいしくたきあがった、ピチピチのおこめだよ!」
「ヤダ~、リカ、パンがスキだもん、いらない!!」
リカちゃんは、二つにしばったかみをフサフサさせながら…こうえんのほうにいっちゃった。
あーあ、ざんねん!!
べつのひと、さがそーっと!!
ぽちゅぽちゅ、ぽっちゅぽちゅ……
食べてくれるだれかをさがして、あるいていくと……。
あ、あのはくいをきているめがねのおじさんは…ようちゃんをみてくれている、びょういんの先生だ!!
先生、いつもすごくやさしくしんさつをしてくれるんだよね!
のどもむねもおなかも、ていねいにみてくれるから…きっときちんと食べてくれるとおもうよ!
「ねえねえ先生、ぼくを食べてくれませんか! しんまいで、すごくおいしいんだよ!!」
「ごめんね、僕メタボだから…ご飯は決めた分しか食べないことにしているんだよ」
先生は、おおきなおなかをゆさゆさゆらしながら…びょういんのほうにいっちゃった。
あーあ、ざんねん!!
べつのひと、さーがそっと!!
ぽちゅぽちゅ、ぽっちゅぽちゅ……
食べてくれるだれかをさがして、あるいていくと……。
あ、あのあかいエプロンをしているのは…ようちゃんがダイスキなまーるいタコヤキを作っているおばちゃんだ!!
おばちゃん、いつもすごいスピードでタコヤキをやくんだよね!
たぶん、いそがしくてごはんを食べるヒマがないんじゃないのかな?
よーし、ぼくのこと、食べてもらおう!!!
「ねえねえおばちゃん、ぼくを食べてくれない? よーくとがれて、しんせんなおみずでたいてもらった、ホクホクのごはんつぶだよ!」
「あたしゃ売れ残りのタコ焼きを食べないといけないんだよ…また買いに来ておくれってママにいっといておくれ!」
おばちゃんは、あかいエプロンをパタパタさせながら…タコヤキやさんのほうにいっちゃった。
あーあ、ざんねん!!
べつのひと、さーがそっと!!
ぽちゅぽちゅ、ぽっちゅぽちゅ……
食べてくれるだれかをさがして、あるいていくと……。
あ、あのあおいくびわは…ようちゃんとなかよしの、すぎたさんちのムクだ!!
ムク、いつもすごいいきおいでゴハンを食べてるんだよね!
たぶん、いつもおなかがすいてるんじゃないのかな?
よーし、ぼくのこと、食べてもらおう!!!
「ねえねえムク、ぼくを食べてくれない?ようちゃんがだいすきな、とってもおいしいごはんつぶだよ!」
「ワンワン、ボクはご主人様のくれたドッグフードしか食べないよ!」
ムクは、ふさふさのしっぽをぶんぶんさせながら…すぎたさんちのほうにいっちゃった。
あーあ、ざんねん!!
べつのひと、さーがそっと!!
ぽちゅぽちゅ、ぽっちゅぽちゅ……
食べてくれるだれかをさがして、あるいていくと……。
あ、あのほそながいしっぽは…ようちゃんのうちのゆかしたにいるネズミさんだ!!
ネズミさん、いつも食べものをさがしてはしりまわっているんだよね!
たぶん、ごはんが食べたくてたまらないんじゃないのかな?
よーし、ぼくの事、食べてもらおう!
「ねえねえネズミさん、僕を食べてくれない? ようちゃんのおかあさんがたいた、おいしいごはんつぶだよ!」
「ちゅー! あの奥さんが炊いた米?! まーたネズミ退治の毒でも入っているんだろう! そんなものを食べたら命が危ない! 絶対に食わんぞ! あっち行け!!」
ネズミさんは、長い前歯をガタガタさせながら…ゴミ捨て場にいっちゃった。
あーあ、ざんねん!!
べつのひと、さーがそっと!!
ぽちゅぽちゅ、ぽっちゅぽちゅ……
食べてくれるだれかをさがして、あるいていくと……。
あ、あそこにアリさんたちがいる!
なんだかとっても、忙しそう…なにしてるんだろ?
「ねえねえ、アリさんたち、僕を食べてくれない?」
「今忙しいんだ、あっち行け!!」
「お菓子を拾うのが先だよ!」
「甘いお砂糖いーっぱい!!」
「コメぇ? いらないよ!」
アリさんたちは、じめんにおちているおかしにむちゅうだ…。
ぼく、こんなにおいしいのに…だれにも食べて、もらえない。
なんだか、とっても…かなしくなってきた。
ポロリとひとつぶなみだがこぼれた、そのとき……。
「アーンアーン!! おなか、すいたよう!」
ようちゃんの、なくこえがきこえてきた!!
ぼくは、ぜんそくりょくで、ようちゃんのところにかけつけた!!
「ようちゃん、どうしたの?」
「あのね、おやつ、ぜんぶこぼしちゃったの。だから、もうないの。でも、おなかがすいたの」
ようちゃん、おなかがすいてるんだって。
ようちゃん、ぼくのこと、食べてくれるかも?
でも……。
「ぼく、ようちゃんのほっぺたについていた、ごはんつぶだよ」
「そうなの?」
「ようちゃんが食べてくれなかったから、ぼく、たびにでてたの」
「そうなの?」
「ようちゃんがきがつかなかったから、ぼく、かなしかった…」
「そうなの?」
「ようちゃんは…ぼくのこと、食べたい?」
「うん!」
「……ほんとうに?」
「うん!」
「これからは、ごはんつぶのこと、もっと・・・ていねいに食べてくれる?」
「うん、やくそくする!」
「じゃあ、ぼくのこと、食べていいよ!!」
「わーい!! いただきまーす!!」
にっこりわらう、ようちゃんのおくちのなかに…とびこんだ!!!
ぱっくん、むしゃむしゃ、……ごっくん!!
「ごはんつぶくん、おいしいよ!! たべさせてくれて、ありがとう!!」
おくちのなかにきこえてくる、ようちゃんのこえ。
「ぼく、これからはおちゃわんのごはんつぶ、のこさないでたべるね!」
のどのおくにきこえてくる、げんきなようちゃんのこえ。
「ぼく、ごはんつぶをこぼさないように、きをつけてたべるからね!」
いぶくろのなかにきこえてくる、だいすきなようちゃんのこえ。
「ごちそうさまでしたー!!!」
どういたしましてー!!!
ぼく、ごはんつぶにうまれて、よかった!
ようちゃんによろこんでもらえて、よかった!
いまから、ようちゃんのからだになるために、がんばってくるねー!!!
やくそく、たのんだよー!!!
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