かんしゃく玉
私には、欲してやまないモノがある。
小さな豆状のやつ。
シブい色をした丸っこいやつ。
薄汚れた小さな袋入りのやつ。
地面に叩きつけてあそぶやつ。
でかい音を出してはじけるやつ。
男子がよく駄菓子屋で買ってたやつ。
……かんしゃく玉である!
あの、ハデな音が魅力的だった。
あの、独特のニオイが好きだった。
食いしん坊だった私は、50円で売られていたかんしゃく玉を買うことがほとんどなかった。
数回投げたらおしまいの儚いアイテムよりも、砂糖でジャリジャリしている裸ドーナツや毒々しいチューブ入りのジュース、プリンカップですくうせんべいにでっかいアメ玉、なかなか口の中で溶けないチョコレートの方が断然魅力的だったからだ。
たまに太っ腹な男子に恵んでもらって、1つ2つ投げた記憶だけがいつまでも……残っている。
娘と駄菓子屋に行くようになった頃、かんしゃく玉の事を思い出した。機会があれば買っても良いなと思いつつ、なかなか出会えぬまま時は流れ…販売が終了していた事を知った。
……もう手に入らない、そう思うと俄然欲しくなる。
手作りする方法があるとの情報を得て、息子と自由研究がてらチャレンジしてみるも…私の知っているモノではない感がスゴイ。
私の求めているものは、ハンマーで叩いて破裂させるものではなく…、地面に叩きつけても爆発しないでドブに転がって落っこちてガックリしたり、ポケットの中でバラバラになっててしこたま怒られたり、いつの間にかしけって全く使えなくなっていて憤慨するような…不出来で脆くて、でもわりかしスカッとする、チープなくせに魅力的なやつなのだ……。
全く売ってないわけではないらしいが、どうにもチャンスが巡って来ないというか、大量にほしいわけでもないというか、ちょっとだけ楽しめればばんばんざいというか。
ああ、なぜ私は子供の頃にもっと遊んでおかなかったのだ。なんで駄菓子ばかり食べてぶくぶく肥えてしまったのだ。くそう、悔やんでも悔やみきれない……。
とはいえ、いい大人なので過去を振り返ってグジグジ言ったりするのも見苦しい。ましてや苛立ちを撒き散らすとか…かんしゃく玉を望んで癇癪をおこすのもね、……フフフ。
いつかどこかで、古いおもちゃ屋さんとか科学者の先生、コレクターなんかと知り合う可能性も無きにしもあらずだ。
のんびりチャンスを待ち構え、今日も平凡に穏やかに…幼い日の思い出をたどる私なのだった。